編集室より

かこさとしの後半生は海の見える地で過ごしました。まだサラリーマンと絵本の仕事の両方をしていた頃には、夏になると会社の若者が海に遊びがてら来られたものでした。芋を洗うがごとく混み合った湘南の海の写真が夏の新聞紙面を飾った昭和40年代のことです。

今では、それほど混むことはないものの様々な国の方が海を満喫されています。楽しそうに過ごす様子は、『とこちゃんはどこ』(1970年福音館書店)の海の場面そのままです。この場面は、越前市にある、ふるさと絵本館に大きなパネルになって飾ってあります。

「とこちゃん」は好奇心いっぱいの男の子で、お母さんやお父さんと一緒に出かけては、いつの間にか人混みの中に消えてしまい、家族はとこちゃんを探しまわることになります。興味のある所に足が向いてしまうのは、子どもにとって自然なことなのですが、動物園、お祭り、デパート、、、。デパートの場面は、下絵とともに全国巡回展・京都会場(大丸ミュージアム)でもご覧いただけますのでお楽しみに。(2019年10月30日から11月18日、会期中無休)

絵本作家のなかやみわさんは、絵本作りを始めた頃、仕事で一緒になった、かこに『とこちゃんはどこ』の本にサインと似顔絵を描いてもらい、以来、仕事場の書棚に大事に保管されていると2019年8月12日の読売新聞の記事・たからもの「色あせない絵本の手本」にありました。「群衆を表現する時は、一人ひとりの表情や動きまで丁寧に描く」点もお手本にされたそうです。

『とこちゃんはどこ』の表紙は遊ぶ子どもたち。いくら暑いとはいえ、こんな風に外遊びをあまりしなくなってしまった子どもたちのことが気がかりです。