編集室より

金木犀の香り漂う候となりました。季節ならでは自然の香りは良いものです。

秋の香りで連想するものといえば、松茸でしょうか。食さずともせめて香りだけでも、と思ってしまいます。「においはマツタケオール、イソマツタケオール、ケイヒ酸メチル」と説明があるのは、『世界の化学者12か月』(2016年偕成社)9月の欄です。このページでは、9月に生まれ(1887年)亡くなった(1976年)スイスの化学者ルジカ(下)を紹介しています。

ルジカは「ジャコウの中に含まれている、かおりの化合物ムスコン、とジャコウのねこのかおりの成分、シベトン化学構造をあきらかにし」たばかりでなく、「ジャスミンの花にある、ジャスモンという化学物質をつきとめ」1939年ノーベル化学賞を受賞しました。

かこさとしふるさと絵本館がある越前市の「だるまちゃん広場」など武生中央公園では、例年より早く2018年9月28日から11月4日まで菊人形が展示されています。他では見たことのないような千輪菊、7本立ての大菊、懸崖や、動物や文字の形のトピアリーなど、1-2年かけて栽培されたものが所狭しと並べられます。

キクについて、この本の10月のページ(下)には「キク:花の色はアントシアン(赤)、カロチノイド(黄)。花のにおいは、ピネン、テルペンアルコール、しょうのう。」とあります。

10月には21日に生まれたノーベルの遺言によるノーベル賞が発表されますが、この本には、宇宙誕生から2016年までの「科学年表・科学の歴史」もあり、あとがきには制作にあたり、熱い思いでご協力いただいた多くの化学者の名前が列記されています。古今東西、研究に人生を捧げた科学者たちのおかげで私たちの現在の生活があるというわけです。

ところで、かこさとし」の遺稿「だるまちゃんとうらしまちゃん」(「母の友」10月号に掲載)をお読みいただけましたか。浦島太郎をモチーフにした読み聞かせにぴったりの作品です。『世界の科学者12か月』の「化学のちいさなお話」コーナーでは次のようにあります。

(引用はじめ)
「桃太郎、金太郎、浦島太郎をおとぎ話の三太郎、アボガドロ(Avogadro )、ベルセリウス(Berzelius)、キャベンディシュ(Cavendish)を化学の先覚ABCとよんでいます。
(引用おわり)

というわけで、この本の裏表紙(下)には、この三人の化学者が紹介されています。また、日本の化学者のすばらしい三太郎、鈴木梅太郎、長岡半太郎、本多光太郎についても本文で紹介しています。ちなみに表紙の六角形の三人はギリシャのタレス、アリストテレス、デモクリトスで紀元前の人々です。

読書の秋、文学も素敵ですが身近にある科学もお楽しみ下さい。