編集室より

2013年復刊ドットコムから発行された、かこさとしあそびの本①「かわいいみんなのあそび」は1970年に童心社より刊行された5冊シリーズの第1巻を底本に復刊されたものです。

1970年当時は、カラー印刷が高価だったため2色刷りですが、収められている数々のあそびは今でも色褪せることはありません。リオオリンピックの余韻に浸りながら、こんな室内遊びはいかがでしょうか。

このシリーズにこめた著者の思いは、あとがきに綴られています。童心社版のあとがきと復刊に際してのあとがきの両方をご紹介いたします。

1970年刊行「かわいい みんなのあそび」あとがき

(引用はじめ)
その頃、私は若く、希望にもえていました。勤務のない土曜日から日曜日にかけての日々は、子どもたちや、それに関連した時間にあてられました。

子ども会の指導や、リーダーの研修会や、紙芝居の練習や、絵ばなしの創作などーーー10年ひと昔、10年1人前といいますが、そんなことをしながら、いつのまにか20年以上の年月だけがたっていきました。もし私に、少しはましなところがあったとしたら、それはその間、子どもたちに教えられたことを記録、整理してきたことかもしれません。間違わないください。"子どもたちを教えた"のではなくて"子どもたちに教えられた"のです。子どもたちとすごす中で、子どもたちのはなす言葉、行う動作、やっている遊び、語りかけ問いかけている目や頬やおでこーーそこから得たものは、いつのまにか私のノートの丘となり、資料の山となっていきました。

私は、そうした日本の子どもたちが生みだし、考えだし、伝えてきたちえや力の結晶を、もっとよい形で、もっともっと健康に花さかせ、また子どもたちに返したいと考えつづけてきました。この本は、そういう日本の子どもが生みだし、そういう私のねがいがこめられて、できあがったものです。

もし、皆さん方がこの本をみて面白いと思うものがあったら、それは日本の子どもたちの力のおかげです。もし、つまらないところや、ぴったりこない点があったら、ぜひ皆さんの力で、もっとよいものになおし、そして、そっと私にご注意いただければ幸いです。
(引用おわり)

『かこさとし あそびの本 全5巻』復刊に際してー

(引用はじめ)

今度出していただいた『かこさとし あそびの本 全5巻』は1970〜71年(昭和45 〜46年)に、童心社から出版されたものです。
当時会社員だった私は、休日を川崎地区の子ども会で、子どもの行動を観察したり、遊びを教えてもらい、それらを比較したり、相違を考える毎に、時代と生活、社会と成長の関係と、それをのりこえようとする子どもの姿に感激していました。

そうした一部を『日本伝承のあそび読本』という小冊子に昭和42年発表したところ、各方面から思わぬ反響をいただきましたが、私の得ていたあそびの総体、特に自然や季節、地勢や状況に応じ柔軟に変化させて、身体の各機能や知恵や人間関係をのばし、蓄えてゆく成長発達の様子を、広い視野と読者である子どもの興味に則り、実りが得られるよう、当時の制約ある色別印刷の下、私の全力を注いでまとめました。

こうした経緯から、その後の私の児童問題研究と教育学部の講師を受けるに至った、忘れがたい5冊です。
2013年 かこ さとし
(引用おわり)