編集室より

筆者はこれまでに一度だけ「紙芝居」を作ったことがあります。半世紀以上も前のことですから、それ自体が昔話のようですが、このところ雑誌などで取りあげられたのでご覧いただいたかもしれません。「モエ」(白泉社)4月号「かこさとし 名作絵本がいっぱい 永遠の宝物」と題した巻頭大特集の中で、筆者の最初でおそらく最期の紙芝居の絵本版『ゆきこんこん あめこんこん』(1987年偕成社)が紹介されています。

かこさとしは30代40代の頃、ボランティアのセツルメント活動で川崎の子どもたちと毎日曜日遊ぶ際、その始まりに紙芝居をして一体感を盛り上げたようです。皆で一つの画面を見、物語を楽しみ、共通の気持ちを持つことによって遊びも大いに発展したそうです。あるいは遠足の事前指導などにも役立てたりと、紙芝居は子どもたちとの意思疎通のための優れた媒体として大活躍しました。

下は、セツルメント活動で見せていた紙芝居から生まれた絵本『おあいめ くろいめちゃいろのめ』(1972年偕成社)です。2019年3月21日から越前市にある、かこさとし ふるさと絵本館で全場面(複製画)を展示します。

絵本館はこの4月26日に開館6周年を迎えます。この施設が開館する前年、かこさとしの展示会が越前市武生公会堂で行われ、それを機に越前市の歴史や文化をテーマにした創作紙芝居を募るコンテストが始まりました。亡くなるまで加古がその最終審査をしておりました。

2019年2月28日の福井新聞に掲載、告知されたように本年は3月1日に絵本館で「第7回紙芝居コンテスト」の表彰式が行われました。加古の後を引き継ぎ長野ヒデ子さんとご一緒に 最終選考を致しましたが、小学生からご高齢の方まで応募され、個性豊かな紙芝居の数々に感心したり、考えさせられたり、甲乙つけがたい作品に嬉しくも悩みながらの選考となりました。また、亡くなったかこさとしを様々に表現してくださった作品も多く審査を忘れて感慨にふける瞬間もありました。

全国から応募していただき誠にありがとうございました。紙芝居は、誰でもが作って楽しめ、演じて直接、観衆の反応を見ることができる素晴らしい道具です。1人でも多く、来年のコンテストにご参加くださることを楽しみにお待ちしています。

下はセツルメントでも大人気だった紙芝居の絵本版『どろぼうがっこう』(1973年 偕成社)