2019

迫力ある表紙です。ドラマとあるように、お芝居仕立てのこの科学絵本は、黒子さんが幕をあける前扉の絵から始まります。幕に描かれているのは「いなずまの家紋いろいろ」(下)。これらはかこの創作ではなく、実際にある雷文の一部を描いています。いなずまは稲妻と書くことがあるように稲作をする上でも大切であったようです。

第一幕は、「さあ、雷の劇がはじまります」とものすごい稲光りの様子です。そして第二幕「夏の舞台にもくもく雲があらわれる」と続きます。ところが、冬にも雷が鳴ります。第四幕は「冬の舞台、台風の場面」。雲と電気の関係を丁寧に図解しながら説明が進みます。

火事や火山でも雷がおきること、雷の様々なことがわかりやすく描かれています。雷の観察のきまりや注意事項も大切な内容で、最新の研究成果も伝えられています。大人が読んでも、なるほどと納得できることでしょう。

ちょっとかわったエピソードのあとがきをご紹介します。

あとがき

(引用はじめ)
この雷の原稿をいそいでいる最中、アトリエのはなれに泊まった娘の友人親子が、深夜、天井の激しいもの音で寝られなかったとのこと。それからが大変で、手をつくして探索した末、ようやく突き止めたのが、下の写真の3匹のハクビシン。野生のものか、逃げたペットなのかは不明でしたが、その昔、樹上と雲間をかけめぐった雷獣の元がこのハクビシンといわれていて、六足ニ尾ではなかったけど、爪はきわめてするどいものでした。悪臭と汚染のため、はなれは取り壊し、原稿の遅れで数日徹夜となるなど、やはり「伝説の獣でも雷は恐るべし」と思い知りました。

そうした出来事や、私にとっての未知の気象、大気電気学の分野であったのに、この本を皆様に見ていただけるようになったのは、専門的な立場から、懇篤なご教示とご指導に加え、走り書きの原稿を細かに点検、校閲いただいた元埼玉大学教授・理学博士北川信一郎先生のあたたかいご配慮のたまものです。感謝をこめて皆様にご報告するとともに、改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。
(引用おわり)

下は、裏表紙。雲に乗っているのは「かみなりちゃん」とおとうさん!

長女と編集者・松居直さんの娘

2019年7月15日、小松にある「空とこども絵本館」でかこさとしを世に送りだした福音館書店の名編集長(当時)の松居直氏のご長女で児童文学者の小風さちさんと鈴木万里の対談が開催されました。

前日にNHK「日曜美術館」加古特集の再放送が放映されたこともあり、予想をはるかに超える二百人以上の方々が所狭しと座られ熱心にお話を聴いてくださいました。


デビューのきっかけなった、一枚の絵「平和のおどり」をめぐる不思議なご縁で絵本を書くようになった経緯や『かわ』や『だるまちゃんとてんぐちゃん』が出版されるまでの著者と編集者とのやりとりを資料を見ながら追い、絵本作りに生涯をかけた、かこさとしと影で支え続けた松居氏の熱意にしばし思いをはせました。

県外からの方、20年以上前にかこさとしの講演を聴いたことがある、読み語りをしているなど対談後も皆様とお話させていただきました。

会場となった「空とこども絵本館」は松居氏から寄贈された貴重な絵本や書籍を所蔵し、その一部を公開しています。加古が自ら描いた「かこさとしフェア」のポスターやこの館がオープンした際に贈った「色紙」など、ここでしか見ることができないものもあり、興味深く拝見して後ろ髪引かれる思いで小松を後にしました。

写真は、かこさとしのデビュー作『だむのおじさんたち』(1959年福音館書店)
対談の様子は、上記タイトルで記事として掲載されました。以下でご覧ください。

https://www.chunichi.co.jp/article/ishikawa/20190717/CK2019071702000071.html

七夕の表紙も涼やかな『こどもの行事 しぜんと生活 7月のまき』(2012年 小峰書店) です。
七夕を「たなばた」と読む理由は、この行事には色々な伝説や言い伝え、習わしが関係していることによります。
8月にこの行事をする地域もありますので、「7月あとがき」ご紹介しましょう。

七夕は、晴れか雨か

(引用はじめ)
七夕の行事では、雨が降らないのをいのる地方と、反対に「三つぶでも雨がふる」ようにとねがう地方があります。このちがいはなぜなのでしょうか。

それは、6~7ページにも書きましたが、七夕の行事には、次の四つのことが混じり合っているからだと考えられます。

① 棚機女(たなばたつめ)が布を神さまにささげ、わざわいをのぞくならわし
② なくなった人の霊をむかえ、なぐさめるならわし
③織女星(しゅくじょせい)と牽牛星(けんぎゅうせい)のふたつの星がであう伝説
④技芸や書の上達をねがうならわし

①と②では、水で身をきよめるので雨をまち、③と④では、星がみえるよう、晴れをねがいます。
あなたのすんでいるところどちらですか。
(引用おわり)

原文は縦書きで、漢字には全てふりがながあります。

海の日といえば、『海』(福音館書店)を思い浮かぶ方が多いかもしれません。あるいは『かわ』の最後の場面でしょうか。

2歳のときに『海』を読んでもらい、現在、海洋学者として活躍されていらっしゃる方もおられます。この絵本は大人の方でも興味を持って読んでいただだける内容で、字が読めない小さなお子さんが眺めて楽しんでくださるのも大歓迎です。

小さなお子さん向けの海の本として出版されたのが、この『うみはおおきい うみはすごい』です。文は全部ひらがなで、しかも大きな活字で書かれています。海溝の代わりに、「うみのなかの ふかいたに」と表現するなど、難しい言葉を避けながらも、深さによる海水の流れの違いや大潮、小潮が起こる訳など海のことを宇宙との関連で説明する本格的な内容です。

海水に溶けている80以上の鉱物、つまり「ちきゅうにあるものすべてが とけていることがわかってきた。」ということも伝えるあたり、小さなお子さん向けの絵本とはいっても、内容に全く妥協がないところが、加古里子らしい科学絵本です。
まえがきにあたる文(漢字には、ふりがながあり)をご紹介します。

(引用はじめ)
地球の ことを もっと よく しろう。
にんげんは 地球に すんでいる。
にんげんが いきて ゆくのに
地球の やまや うみなど
すべてが だいじな もの なのだ。
じしんや たいふうなど
地球で おこる ことがらを
よく しっておく ことが たいせつ なのだ。
だから もっと よく もっと ふかく
地球の ことを しって おこう。
(引用おわり)

あとがき

(引用はじめ)
地球でおこり自然の変化や出来事、現象を、この「自然のしくみ 地球の力」シリーズでは、ちいさい読者にわかるよう、大事なことを、やさしくのべるようにしました。この巻は「海」に関係することですが、用いた数値最新理科年表を参考にしました。
なお、かぞくは年長の方は、学校図書小学3年国語教科書にかいた「ひらけてゆく海」」の拙文を参考にしていただければ幸いです。
(引用おわり)

漢字には全てふりがながあります。

プラスチック問題で、紙が見直されています。1枚の紙がお皿になったり、遊び道具になったり。新聞紙は帽子やスリッパ、毛布の代わりにもなり、梅雨の時期は湿気を取るのに大活躍です。
紙に焦点を当てた雑誌、『ぺぱぷんたす』3号(2019年7月15日発売 ・小学館)では、かこの得意な使い古しの紙で遊べる楽しい遊びを掲載しています。

お手製、テイッシュペーパーの空き箱を使ったミニ紙芝居台もあります。紙芝居といえば、かこのふるさと越前市では紙芝居コンクールを毎年開催しています。2020年と2021年夏には、「全国紙芝居まつり」も開催の予定で様々な準備が進んでいると福井新聞(2019年7月6日)に報じられています。

デジタルの時代だからこそ、生の声に耳を傾け静止画を見る贅沢な時間を年齢問わず楽しんでいただけたらと思うこの頃です。

(写真は紙芝居から生まれた絵本、『あおいめ くろいめ ちゃいろのめ』『どろぼうがっこう』『あかいありと くろいあり』(いずれも偕成社)

福井新聞の記事は以下でどうぞ。

https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/889553

「かこさとしの世界展」開催中のかごしまメルへン館で、講演会を開催します。

かこさとし誕生からデビュー作品を描くまでの約30年間を100枚以上の画像とともにたどります。
本や雑誌などでもご紹介したことのない紙芝居などをご紹介しますのでお楽しみにご参加ください。詳しくは以下をどうぞ。

https://www.k-kb.or.jp/kinmeru/%E6%9C%AA%E5%88%86%E9%A1%9E/2572/

藤沢市南図書館がODAKYU 湘南GATE(小田急湘南ゲート)6階に移転してサービスを開始するのを機に、かこさとし絵本の複製原画を飾らせていただくことになりました。(月曜日休館)

初夏の草花を背景に物語がすすむ『だるまちゃんとてんじん』や『からすのパンやさん』『からすのおかしやさん』を展示しています。

また、市役所1階ホールでは『からたちばやしてんとうむし』のこの季節にぴったりな場面が展示されています。この題名にある「からたちばやし」は、かこが藤沢に移り住んだ50年余り前、自宅近くにあった、からたちの生垣から名付けたものです。今ではその垣根もすっかり消えてしまいましたが、その場所を通るたびに、このことを思い出します。

お近くにお出かけの際にご覧いただけたら幸いです。

新図書館に関しては、2019年7月3日読売新聞・神奈川「藤沢の商業施設に図書館 かこさとしさん作品の書棚も」と報じられました。また、2019年7月15日、東京新聞にも以下のように掲載されました。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201907/CK2019071502000137.html

父の話をしましょうか ~「かこさん」と「松居さん」~

かこさとしのデビュー作『だむのおじさんたち』(1959年福音館書店)は当時の福音館書店編集長・松居直さんによって世に出ることとなりました。松居さんとの運命的な出会いによって、かこはその後「だるまちゃん」シリーズや『かわ』などの科学絵本、そして『日本伝承の遊び読本』と言った遊びの本を刊行する機会を得、かこが亡くなるまでその深交は続きました。

かこは松居さんと同じ年の生まれでした。松居さんのご息女で絵本作家の小風さちさんと鈴木万里の対談を催します。申し込み不要・参加費無料。場所は松居さんからの寄贈本コレクションを収蔵する、小松市の空とこども絵本館です。
詳しくは以下をご覧下さい。

https://www.city.komatsu.lg.jp/kosodate_kyoiku/8724.html

2019年7月7日 中日新聞:娘語る父の背中と絵本 小松で15日 「かこさんと松居さん」

https://www.chunichi.co.jp/article/ishikawa/20190707/CK2019070702000241.html

2018年8月9日当サイト「作品によせて」コーナーであとがきをご紹介した科学絵本『たいふう』(1967年福音館書店)は半世紀以上も前の古い作品であるにもかかわらず、展示を望む声が強くよせられました。それにお応えしていよいよ2019年6月27日(木)より、越前市ふるさと絵本館で展示を致します。

表紙(上)には、ちょっとクラシックな雰囲気の子どもと日本列島の地図に気象記号と台風の進路が記され、『かわ』に似た構成です。そして裏表紙(下)には、著者に似たメガネの気象予報士と思われる人が台風の進路の解説をしている様子が描かれています。この本が出版された1969年は、39もの台風が発生した記録が残る年でもありました。

本作品に描かれている暮らしぶりは昭和の時代を感じさせるものですが、台風に備え向かう姿勢は今と何ら変わりがありません。かつて、台風一過の秋晴れを安堵で眺めた清々しさを最近感じられなくなってしまったのは、台風が秋以外の季節にもやってくるようになり、また台風が通り過ぎても暑さが残ったりという気象の変化があるように感じられます。いずれにしても、台風の通り道に住む私たちにとって、特にお子さん達が台風のことを知り、自然の猛威について考える良い機会になれば幸いです。

現在展示中の『あおいめ くろいめ ちゃいろのめ』は6月23日で終了し、展示替えのため6月24日から26日までは休館となります。
(下は、前扉の絵です)

2019年7月22日午後2時〜3時30分 「かこさとしの創作の原点」岐阜市ハートフルスクエアーGにて

2019年6月26日、岐阜新聞に掲載されたように、上記日程で、かこさとしの長女が講演をします。

定員100名で、受講料300円。
申し込みは往復はがきで(7月10日必着)、岐阜市生涯学習センターに申し込みください。
電話058ー268ー1050