編集室より

2020/06/18

一つ星

食べ物やさんのことではありません。かこが川崎市でセツルメント活動をしていたときにデザインした旗の図案です。コバルトグリーンに一つ星。「自ら輝く星になれ」という意味を込めたそうです。

同じ頃デザインした人形劇団プークのシンボルマーク(上・右)、Pの真ん中にある星もセツルメントの旗と同じ意味を込めたようです。ちなみに左側のキャラクター、プー吉もかこのデザインが原案です。

かこは若い頃からシンボルマークを考えるのを好んでいたようで、大学時代の演劇研究会や大学生協のマークもかこの案が採用されたそうです。

いわゆる星の形は絵本でも少し見受けられます。

『ことばのべんきょう くまちゃんの』(1970年福音館書店・上)では、まさに星という言葉を覚えるために、そして『あさですよ よるですよ』(1986年福音館書店・下)の後ろ見返しには夜中の12時をさす時計の絵とともに窓から見える星空として描いています。

科学絵本の星そのものについてはここではふれません。『だるまちゃんとかみなりちゃん』(1968年福音館書店)のこの場面の星は漫画的な表現ですが、まさに星が見える状況に違いありません。

「自ら輝く星」になる物語があります。紙芝居「きゅうりばあちゃんのコンサート」(1989年 全国心身障害者福祉財団)で、その表紙(下)には一つ星が輝いています。

主人公は町から離れた丘の一軒家に住む目を悪くしたきゅうりばあちゃん。ピアノを弾きながら歌います。

(引用はじめ)
〽︎
きょうもひとりの ひがくれる
こどももないし みよりなく
おととししんだ おじいさん
ほしに おいのり したいけど
ちいさいひかり よくみえぬ
(引用おわり)

この丘に猛獣公園を建てるために、おばあちゃんの家を立ち退かせようと「ピカピカの自動車に乗った人」がやってきます。ところが聞こえてきたおばあちゃんのピアノと歌声の素晴らしさに方針転換。このおばあちゃんのコンサートをすることになり、結果は大成功。次々開かれる演奏会はいずれも拍手喝さい、アンコールの声につつまれます。

実はこの演奏は、おばあちゃんだけではなく、嵐の日におばあちゃんの家の外でないていて、おばあちゃんに助けられたネコも一緒に歌うのですが、伏線がうまく張られたこの紙芝居の展開はみごとでまさに芝居のような盛り上がりのクライマックスです。

おばあちゃんの歌の中にある「ちいさいひかり」とこのおばあちゃんが「やせてしなびてほそいため きゅうりおばば」とよばれるも、ネコのおかげですっかり元気になり、演奏会の成功によってスターのようになった最後の場面が重なる、という、実は何気なく描かれているようで大変意味深い一つ星なのです。