編集室より

創作昔話「やまやしき はなざしき」(2022年1月29日 編集室より その2に掲載)を楽しんでいただけたでしょうか。このお話は『あそびの大星雲3 みごと はなやかなあそびーなぜ花や実がつくのかー』(1992年農文協)におさめらています。

この絵本は染料として使われてきた植物や面白い名前の植物、砂漠に咲く珍しい花から、果ては花札にまつわる話まで盛りだくさんの内容で、その前書きとして次のようなメッセージがあります。

かこさとしから、大人の人へ

花も実もある願いを込めて

(引用はじめ)
花にことよせて植物の謎や秘密をちりばめたこの本に、作者は密かに3つの願いを織り込みました。

一番目は、人間はもちろん地球上のすべての動物が、生命を植物に頼って生きている事実をしっかりしってほしいことです。二番はどんなによい種類でも、同じ単一の植物で一つの地域をおおい尽くすのは、極めて不自然異常な事態で、従来の農業や林業のもつ矛盾を、雑草が警告している視点を含めたと言うことです。第三はまずくて固くても重さやカロリーだけの重視や、栄養や残留毒性を無視してミバよくうれればよい虚飾技術ではなく、楽しくて為になり面白くて美しい「花も実もある」場面にするよう努力したことです。

この3つの願いを込めて未来のグレゴリー・メンデルやレイチェル・カーソンたちにこの本をおくります。
(引用おわり)

最後の場面は、各県の花を紹介する華やかな画面(下)に次のように書かれています。

「はなも みもある」ちきゅうをまもり たがやして たねまく ちから きみのもの
ねも みきも みらいのために しっかりと うるわし うちゅう はれやか はなやか」

広い宇宙の中で花咲くこの地球はかけがえのないものです。30年前に書かれたメッセージが、一層重みを増していていると感じられるのは筆者だけでしょうか。

それでは「あとがき」をどうぞ。

かこさとし あとがき

花は植物のかお

(引用はじめ)
花の役目は、花粉をはこぶ昆虫を誘うためといわれてきましたが、色感がにぶい虫にだけあんなきれいな色や形をみせるためとは思われません。もちろん人工的に改変育成されたものも多いのですが、野山に咲く自然の花にもすばらしいものがあります。無駄で無益なことをしているのでしょうか。

花は植物の顔、だから熱心に手入れするものも、てんで気にしないゴツイのもいるーーーなぜなら生きものだからーーーと鏡の前で入念に努力する男の子がふえている最近の事情と考え合わせながら、この「はなとそれをめぐるひみつとふしぎ」の巻」をつくりました。どうぞはなやかな花たちをみてやって下さい。
(引用おわり)

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