編集室より

7人の子どもたちが次々に楽しむおにあそび。本を読んでいるうちに、いつの間にか自分も一緒になって遊んでいる気持ちになるから不思議です。もう、おにごっこするしかない。
一見すると地味な色合いの画面ですが、そこにも仕掛けがあるようです。

この本は1999年に「かがくのとも」として刊行、その後2013年に「かがくのとも特製版」となりましたが、この度は「かがくのとも絵本」として新たに出版されました。1999年の折り込み付録「遊び世界での子どもの力」をご紹介します。

遊び世界での子どもの力 加古里子

鬼遊び鬼ごっこなどと呼ばれる遊びは、世界中の各国各民族で愛好されているので、その魅力の源を知りたくなり、日本での観察と収集を40年ほど続けてきた末、ようやく次のようなことを知りました。

日本の子供たちの鬼遊びは、大きく3つに分類できて、第1のA型は「逃げる/追う/つかまえる」という基本的な形と、その変型の約100型です。走力脚力の競技なら、その優れたものや年長児だけが楽しいだけに終わるので、いかにその能力差、体力差を埋め、鬼にも逃げる側にもうまいハンデにより拮抗(きっこう)させるか、どういう苦心が、こんなに多くの種類を生みだすこととなりました。大人のゲームにも、ときおりこうしたハンデをつけるやり方がありますが、今月号のなかの「タッチおに」や「つながりおに」のぶくちゃんのような"みそっかす"まで一緒に楽しもうというのは、子どもの世界だけの工夫です。

第2のB型は、小石・木片・なわ・ボールなどの道具を用いたり、場所やまわりの状況を利用するもので、約180型あり、今月号にでてくる「いろおに」「はしらおに」「しまおに」などがこのなかに入ります。しかし、場所を使うものでは、高所、階段、コンクリ、手すりや欄干など、子どもたちがいかに狭隘(きょうあい)、劣悪、不敵な遊び場しか与えられていないかを反映していることにも気づかされます。ごく一部の大人の遊びのため、広大な土地を芝生にしたあげく、不良債権で銀行がつぶれる期間、子供たちは文句や座りこみはおろか、ぐちさえいわずわずかな空間を利用していたのが、多数のB型に結実しています。

第3のC型は、数人のグループごとに対抗したり競いあったりする集団のもので、逃げる「どろぼう組」と、追う「警官組」のいわゆる「どろけい」や、他の遊びや遊戯と連結融合したもの約160型です。今月号の「くつとりおに」は、「ひよこまわり」と呼ばれる図形遊びと「くつかくし」が混合したもので、このほか、「花いちもんめ」など歌遊び系も含まれ、多彩です。

以上のように、子どもたちはA、B、Cの3型のなかに自分たちの得た力と意欲をそそぎ、自ら生きる喜びを示しているので、あわせて楽しんでいただければ幸いです。