編集室より

この作品は、2001年4月に福音館書店「かがくとのも」として刊行されたものを今回限定出版されたものです。是非この機会にお読み下さい。

尚、2001年刊行時の折り込み付録に、以下のような著者の解説がありました。題名は「いい子時代の遊び」で、「いい」というところに傍点がついています。その種明かしは文中にあります。
(引用はじめ)

いい子時代の遊び 加古里子

いい・・子時代の遊び

私は北陸の山と川のある小さな町で生まれ、幼少時代を過ごしました。3人兄弟の末っ子でしたから、遊び仲間では一番小さい「いてもいなくてもいい・・子」のひとりでした。

そのころの年長の子は、学校が終わると、10人ほど集まって遊びます。雨が降ればどこかの納屋に入り込んだり、蹄鉄屋の軒先で、ひづめの手術(?)をのぞいたりしましたが、ほとんどはちょっとした広場か道端での外遊びでした。

就学前のいい・・子たちは、そうした兄ちゃん姉ちゃんたちの遊びに入れてもらうのがとてもうれしいことでした。この遊びの中に入れてもらうのを、この地方で「せえて」と言いましたが、そんな大それた言葉を言って入っていくのは、いい子でない年長児でないととてもできません。それでいつもドキドキして、こんど言おうか、もう一回終わったときにしようかとうろうろするのが常でした。途中から入るのではなく、はじめからいれば「自然に・・・」遊べたので、ずっと早くから皆が学校から帰るのをまっていたり、兄や姉のうしろにくっついていたはずですが、ドキドキうろうろしてなかなか「せえて」が言えなかった思いだけが強く残っています。

こうしてようやくその日の遊びの中に入った後は、どうしてこんなに楽しくて面白いことが続くのかと言う至福の時間でした。昨日と同じ鬼ごっこなのに、昨日も面白かったが、今日のほうがずっと楽しい。それも誰かが土手のチガヤを食べたりすると、たちまちおいしいチガヤさがしに夢中になると言う、変化と発展の連続、心も身も陶酔の毎日でした。

今回の『わたしもいれて!』を描くにあたって、次々発展していく遊びの様子と、それに夢中になるいい・・子やそうでないこの思いをもり込みたいと、昔のようにドキドキしながら努めてみました。見ていただければ幸いです。

(引用おわり)

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