編集室より

地中に住む虫といったら何が思い浮かぶでしょうか。
アリ、ミミズ、セミの幼虫。。。オケラの姿は、見かけなくなりましたが、絵本館のある越前市は豊かな自然が残り、田んぼにはオケラもいるそうです。

地中に住む一番大きな動物、モグラについての本『モグラのもんだい モグラのもんく』のあとがきをご紹介しましょう。

(引用はじめ)
小川が庭の西と南に流れている北陸の小さな家で、私は生まれました。幼児時代、この庭にできる土の小山が、モグラくんを知った最初でした。

戦争中の中学生時代、学校農場で作業していた時、たい肥の中にモグラくんの巣をみつけました。はだかの子を生物好きの友人が、ポケットにおしこんで、ニコニコしていたのを覚えています。

それ以来、ずいぶんモグラくんとはご無沙汰していたわけですが、今回ゆっくり接することができ、とても懐かしい、そして少し悲しい気がしていることろです。

終わりに、富山大学教育学部の横畑泰志先生から専門的なご教示と懇厚なご示唆を得たことをご報告し、御礼といたします。
(引用おわり)

あとがきにある「少し悲しい気がしている」とはどういうことでしょうか。

モグラがいるということはかなり豊かな土壌があることの証拠だとこの本でわかりますが、田んぼの世話をしている方によると、モグラが畦に横穴を掘ると水が抜けてしまい困るので厄介もの扱いされ、モグラやミミズなどを活用する手間のかかる有機的な農業ではなく農薬や化学肥料に頼るようになってしまっています。

ユネスコは2015年を「国際土壌年」とし、人類にとって不可欠な土壌が失われている危機を訴えました。かつて土壌改良剤の研究に携わっていたかこさとしは、この土壌の問題に強い危機感を持って執筆にあたったようです。『大地のめぐみ 土の力大作戦』(2003年小峰書店)も同様の意図で作成されました。

ところで、小学校4年生の国語の教科書(光村図書)下では、「生き物のなぞにせまりましょう」という項目で、本作を紹介しています。