編集室より

(1999年福音館書店)

そして今度、そんなお前の誤りだらけの過去と思い迷った来歴をまとめてみないかと言う申し出をいただきました。若い頃私が夢見ていた絵本の世界を、最初に現実のものにしてくださった出版社が、再び老人の思いを叶えてやろうというのです。あまりに過分な申し出に恐縮、ご辞退申し上げたのに、原稿を書かなくても、テープでおこして「聞き書き」の内容をワープロで打ち出すのでそれを点検すれば良いからと退路を絶たれ、遠路茅屋までこられて、どうぞ気楽に思いつくまま話してくださいと上手に誘い、聞き手が少なくてはと数人連れ立ってこられたりすること十数回、三年の長きに及んだ結果、順序系統だった「絵本塾講義録」になったと言うわけです。せっかくお読みくださる参考にと、資料現物を極力揃えるようしましたが、一部紛失忘却でお目にかけることができなかったのが唯一の心残りです。
(本文は縦書きです)
願わくば、私のごとき誤りを繰り返すことなく、そして眠れぬ夜を何度も迎えても達してなかった真実といる彼岸を、どうぞ読者の清新な力と広い心で取得し凌駕していただきた祈念し、感謝を込めてあとがきとします。

一九九九年三月

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