編集室より

2020/08/09

ベルツ水

ベルツすい、といっても、一体何?ですよね。ずーと忘れていたのに突然思い出した言葉です。半世紀以上前の昔、私が幼稚園に通っていた頃、冬になるとしもやけの手をしていました。原因は手を洗ってきちんと拭かずいたからかもしれません。

当時はハンドクリームの種類も限られ、まして、子どもなのでクリームのようなものはベタベタして嫌い。そこで化学会社につとめていた、かこがツルの首のようなものが付いているプラスチックの容器に入った液体を持ち帰りました。それがベルツ水。水というくらいですから水のようなさらったした無色透明、匂いもない液体です。

弾力性のある容器を押すとそのツルの首のように細くなった先からでてきます。しもやけに塗ることになりました。いつしか、しもやけもなくなりベルツ水のこともすっかり忘れていましたが、コロナ禍でしっかり手を洗う回数が増え手荒れが話題になって記憶の底からよみがえってきました。ベルツというのはドイツの化学者だそうです。

その容器のことは、つる首スポイト(洗浄びん)というらしいのですが、かこは絵を描く時この容器に水をいれて水彩絵の具をといていました。今でも書斎の机の片隅に置かれています。いつも見ていたその容器ですが、ベルツ水、急に湧いて出てきた言葉につられ思い出した幼い頃の記憶に若き日のかこの姿がありました。