編集室より

この3冊に共通するのはいずれも世界遺産に登録されているものをテーマにしている点です。ピラミッドは1979年、万里の長城は1987年、奈良の大仏は1998年に世界文化遺産に認定されましたが、かこは世界遺産だからという理由だけで取り上げたのではありません。

地球誕生から始まる『万里の長城』(2011年福音館書店)には壮大な人間の歴史が写しだされていますし、20代の頃から興味を持ち人形劇の脚本を書いたピラミッドについては歴史のみならず建設の技法にも触れ日本科学読物賞を受賞しました。

特に『ならの大仏さま』(1985年福音館・後に復刊ドットコム)は世界遺産認定のずっと以前から研究しその建立にまつわる人間模様、土木技術とそれに携わった人々の苦心にも言及。歴史、科学のみならず心や宗教ということをも含む総合的な視点からの科学絵本です。化学者としての塗金についての解説は土木学会誌に発表したほどの専門的な検証によるものです。

『太陽と光しょくばいものがたり』(2010年偕成社・下)の共著者でもあり光触媒の発見者である藤嶋昭先生による、この3冊とかことの思い出が「学士会会報」No956(最新号)随想「加古里子先生の世界遺産の本に感動して」として掲載されています。