編集室より

かこがセツルメントの子どもたちにお話をしたり紙芝居を見せていた昭和30年代から50年代、男の子は、たろうやいちろう、じろうくん、女の子は、はなこちゃんやよしこちゃん、かずこちゃんといった名前が物語に限らず、例えば算数の文章題などでも広く使われていました。ここでご紹介するのは、その頃創作された作品です。

『あおいめ くろいめ ちちゃいろのめ』(1972年偕成社・上)では、「くろいめのたろーちゃん」が「あおいめのめりーちゃん」と「ちゃいろのめのばぶちゃん」と一緒に遊びます。

『たろうがらす じろうがらす』(2021年復刊ドットコム・上)はいたずらっ子のこどもからす、たろう、じろう兄弟のお話です。

『からすのパンやさん』(1973年偕成社)の4羽の子どもたちはご存知のように、チョコちゃん、リンゴちゃん、レモンちゃん、オモチちゃん、と食べ物に因んだものばかりで、食いしん坊の著者とおいしいものに目がないこどもたちの趣向が合致している命名はなかなか優れていると言わざるを得ません。

からすのこどもたちのお友達の名前は、スミちゃん、ロクちゃん、ミヤちゃん、ドンタちゃん。からすのパンやさんが焼けたと勘違いして、集まってくるのは、サイチどん、ゴロベエどん、ヤマおばさん、チリチリばあさん、マゴマゴじいさん、ゴサクだんな、アカベエどん。。。名前を聞いただけでも著者が描きたかった、からす一羽一羽の個性が感じらます。

『あかいありとくろいあり』(1973年偕成社)に登場する、あかあり小学校の1年生は、ちみちゃん、ぽてちゃん、なっちゃん。6年生のお兄ちゃんはぺっちゃん。いずれも愛称のようです。行方不明になったぺっちゃんを探すのは、ジンキチじいさん、ベンベロさん、モコモコばあさんにキチキチじいさんです。

こころなしか、名前や愛称からも時代の空気感が伝わってくるように感じられます。