編集室より

2022/08/07

夏山

夏山シーズンです。夏山で連想されるのは黒富士でしょうか。
町中で生まれ育った筆者にとって山は遠くにあるという認識でアルプスのような山々が最初に抱いたイメージでした。

『だむのおじさんたち』のこの場面です。正確に言えば、この場面を見て山とはこういうものなのかと知り、以来、この景色が私の中では山の原風景になりました。2歳ごろに初めてこの絵本を見てから十数年して黒部ダムを訪れ目にした景色はまさにこの絵の通りで、ようやく山の姿を見たと感動したことをはっきり覚えています。

幼いながら、山や木々、草花の色合いに魅了され、爽やかな風を絵から感じながら小動物が身近にいるこんな所に行ってみたいと想像が膨らみました。

この場面は『かわ』の冒頭。川の話なのに山から始まります。絵のような高い所で飲む石清水はどんなにか美味しいのだろうと思ったものです。『みずとはなんじゃ?』(2018年小峰書店)でかこに代わり絵を担当した鈴木まもるさんはこの場面をオマージュとして描いています。

上の左、『だむのおじさんたち』の表紙はBunkamuraの展示会で原画を初公開中です。
また右の『かわ』は複製原画を1枚ですが展示しています。

下は、日本ではなく、中国『万里の長城』(2011年福音館書店)のカバー絵です。
この本が日本でようやく出版された翌年、福音館書店の松居直さんご家族と、中国の画家さんとの通訳と編集でお世話になった唐亜明さんご夫妻とご一緒にかこが長城を訪れたのは9月初め。長城の周辺の緑は濃いものの多湿な日本の山とは異なる趣が印象的でした。

涼しい山で深呼吸、そんなことがしたい今日この頃ですが、せめて絵本の絵を見ながら想像の翼を広げるとしましょう。