編集室より

2022/06/20

小さな絵

かこさとしは背が高く大柄でしたが、体に似合わず小さな物も好きでした。子どもたちが小さいものを好むこともあって『ちいさな ちいさな ものがたり』(1984年偕成社)という作品も創作しています。細かい絵を描くこともいといませんでした。

「かこさとししゃかいのほん」(上・下)シリーズは当時全ページをフルカラー印刷することができず、カバーのみがカラー印刷された本も混じっていました。一つの四角は3、5センチほどですが、その中に小さな絵が描かれています。

小さい絵の多くは、あとがきに添えられることが多いのですが、『だるまちゃん・りんごんちゃん』のあとがきの後、最後の奥付には、たくさんの小さなりんごが並び、その中に小さなだるまちゃんも混じっています。

奥付の後の白い一枚に、絵を添えることもあります。見返し同様、何の絵もないのでは申し訳ないとかこは考えていました。デビュー作『だむのおじさんたち』の最後は上のような絵ですし、『とこちゃんはどこ』は下のようなモノクロの絵ですがいずれもサインが入り、ここにも著者の思いが込められています。

そんな思いを尊重して『てづくり おもしろ おもちゃ』(2021年小学館)にも小さな絵を添えました。

これぞ小さな絵といえば『地下鉄のできるまで』の最後のページ、奥付には1センチ四方に入るほどの小さなロードローラーがモノクロで描かれています。地下鉄工事の花形ではありませんが、地味でありながら工事現場の整地をして終わる、ロードローラーは物語の最後にぴったりですし、この空白に小さいながら絵を入れた著者の思いが伝わる、小さいけれど大切な役割をになう絵だと感じます。

どうか心にとめてご覧ください。