編集室より

2022/03/08

願いをこめて

ご覧いただいている『わっしょい わっしょい ぶんぶんぶん』(1973年偕成社)はあとがきにあるように、かこさとしにとって「記念碑的作品のひとつ」です。

起承転結のはっきりとした筋立て、子どもの自由な発想がその要である点、多くの人々、動物、ものが登場し生き生きとした群像として描かれている点など、かこさとしの作品の特徴が見出せます。

「七度目の筆をとり」とありますが、この物語の誕生の経緯は『かこさとしと紙芝居 創作の原点』(2021年童心社)に詳しく、その元は「新しい人形劇映画のためのシナリオ」として記されたもので、1951年にはセツルメント活動の中で大型紙芝居にして子どもたちに見せたようです。

意地悪な悪魔(下)の身勝手な振る舞いによって苦しめられる人々が、力を合わせ、悪魔を懲らしめ、幸せを取り戻すという筋です。

365日、どの日も誰かの誕生日や命日で、個人にとっては大きな喜びや悲しみの日になるのですが、多くの人に共通の忘れてはならない日があるのも事実です。1926(大正15)年生まれのかこにとっては1945年3月10日の東京大空襲、2011年3月11日がそうでした。

311で避難していた方がいらした福島県郡山での展示会で、なんとかして元気を取り戻していただきたく加えたのがこの絵本の最終場面(下)でした。人も動物も、嬉しそうに歌い踊り喜びを表現していて見ているだけで笑顔になれます。

2022年3月6日、かこの生まれ故郷福井県越前市に誕生した屋内水泳施設(Perky House)が、大人も子どもも明るく快活に集える場所となることを願い、その1階ホールに、この絵を飾っていただいています。

世界情勢が不安定な今、願いをこめてこの絵をご紹介致します。
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尚、2022年3月11日から26日まで川崎市幸区役所でこの絵が展示されます。詳しくは以下でどうぞ。

川崎市幸区 展示会