編集室より

2月の別名、初花月にちなんだかこさとし創作昔話「やまやしき はなざしき」をご紹介します。このお話は『あそびの大星雲3 みごとはなやかなあそびーなぜ花や実がつくのかー』(1992年農文協)におさめられています。この本には、世界各地の珍しい植物やそれにまつわる文化や芸術など様々なことが紹介されています。全てひらがなの分かち書きで、そのまま掲載します。

花のはなし「やまやしき はなざしき」

(引用はじめ)
むかし、あったそうな
みちに まよった たびびとが
やまに あかりが みえたんでな、
たずねてゆくと りっぱな
やまやしきが あってな、わけを
いうと、いとしげな むすめが
とめてくれたんじゃと。

よくあさ、むすめは、
「あなたの たべものを かって
くるので、しばらく
おまちください。るすの あいだ
となりざしきだけは おあけ
なされませんよう。」と
でかけていったと。

いちばんめの ざしきは ももの
はなかざり、にばんめは
さくらのはな、さんばんめは
あやめ、 よんばんめは ふじの
はな、ごばんめは ねむのはな、
ろくばんめは すすきの はな、
しちばんめは きくの はな、
はちばんめは もみじの にしき、
きゅうばんめは びわの はな、
じゅうばんめは さざんかの はな、
そのつぎは りっぱな まつ さかり、

こうして もとの ざしきに
もどったが、 なんとも かくも
のなりの ざしきが みたくなり、
そっと とを あけるとな、
ぐんだか ごんだか まがった
うめが はなざかりでな、
とまっていた うぐいすが
むすめの こえでーーー

「アレさ、とうとう
みましたね」といって、
あけた とから でてゆくと、
ぐんだか ごんだか、
まがった うめも
さいていた はなも
ざしきも やしきも 
きりのように きえうせて、
はなざしきの はなしも
こんで おしめえだなし。
(引用おわり)