お知らせ

2014年7月に「こどものとも」7月号として福音館書店より刊行された「だるまちゃんとにおうちゃん」がハードカバーになって単行本として出版されました。だるまちゃんシリーズ8番目のお友だちは力もちのにおうちゃんで、お寺の境内で力くらべをしたりして遊びます。
この本に込めた著者の思いが、あとがきにあたる〈作者のことば〉にありますのでここに記します。
(引用はじめ)

1945年(昭和20年)4月、東京板橋の自宅を戦災で失った私の一家は、それから練馬、埼玉県入間、三重伊賀と仮設小屋を作って転々さまよい、ようやく宇治の地の借家に辿りついた時、敗戦となりました。私はまだ学生だったので、夏冬の休みに東京の下宿から満員の鈍行夜汽車で帰るのですが、戦火を受けていない黄檗山萬福寺の静かな境内が唯一のなぐさめとなりました。その折、蝉や松かさと遊ぶ子ども達に、よき未来を託するには何をすべきなのか思いなやんでいた若者の迷走の思いを、今回の作にこめた次第です。従って、現在は整備されているようですが、寺院の状況は当時の記憶に残っている様子を描きました。
(引用おわり)

前見返し(上)には黄檗山萬福寺のシルエットが浮かびます。

著者が見た子供たちが遊ぶ大地の色は、戦争で一面焼け野原になった光景を見た著者の心にきっと深くしみたに違いないように、アスファルトに囲まれている現在の私たちには、違った意味でこの本の大地の色が心に染み入ってくるように思えます。

(下は、前扉です)

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  • 2016年12月25日発売 「だるまちゃんとにおうちゃん」(福音館書店)