編集室より

10月27日から読書週間が始まるのにちなみ、世界各国で愛されている名作童話の登場人物が勢ぞろいする、あそびの大惑星 5 「こびととおとぎのくにのあそび ー遊びの宮殿かんらん車ー」(農文協1991年)をご紹介します。

ピノキオ、ガリバー、シンデレラ、ヘンゼルとグレーテル、ドンキ・ホーテ、ふしぎのくにのアリスや赤ずきんちゃん、長ぐつをはいたねこ、日本のさんたろう、はなさかじいさんもでてきます。あそびの本なのにどうして?と思われるかもしれません。

例えばピノキオでは、あやつり人形の作り方、ガリバーの絵の中に隠れている人を探す絵探し、ふしぎのくにのアリスのトランプ手品 、ジャックと豆のきのことば探しなど、頭をひねる数字遊びや迷路あそび、一筆書き、四コマ漫画まで、まさに副題にかんらん車とある通り、あそび、遊びの連続です。

〈アトムやスーパーマンもピーターパンもとんでゆく〉の項目では、それぞれの飛んでいる姿とともに勢いよく飛ぶ工作遊びが紹介されています。

上は前とびらの一部です。
「あなたはほんをよみますか?」と題するまえがき、正確にいうと前歌、が書かれています。このページ左上ではミミズクが「暗夜行路」を、右上ではカラスが「からすのパンやさん」を読んでいます。

ここに描かれている本の題名は左から「ロミオとジュリエット」「奇妙な果実」「ロボット工学入門」「唐詩銘撰」「わが輩は猫である」(本が逆さ向きなので夏目漱石の肖像画もひっくり返っています。)

読みにくいと思いますので、あらためて前がきを記します。

あなたは ほんを よみますか?

(引用はじめ)

〽︎ほんは すばらしい のりものだ
すぐに どこへでも ゆけるんだ
ほんは すてきな せんせいだ
なんでも たのしく おしえてくれる
ほんは ふしぎな レントゲン
こころの おくまで はっきり うつす
そのうえ ほんの せかいは
やさしい ゆりかごだ
いつのまにか しずかに
ねむらせて くれるもの
(引用おわり)

上の写真にあるように、この本の最後の見開き(47ー48ページ)には「おとぎのくににあさがきた」という言葉とともに朝日をあびるたくさんのおもちゃや子どもに慕われている物語の登場人物が大集合します。(写真は一部です)

実は、この絵には長い歴史があります。加古が社会人になって間もない頃、セツルメント活動をはじめていた1952年に制作した大きな水彩画「おもちゃの国にあさがきた」をもとにしているのです。

当時、加古のまわりの子どもたちはおもちゃらしいものは何一つもっていませんでした。この絵を見ながら、かこさとしが語る物語に想像の翼を広げたり、動物の数を数えたり、ある色を探すゲームをしたりしてみんなで楽しんだそうです。役目をはたし終えたその絵は、今ではすっかり色あせてしまいましたが、本著を描くにあたり、時代に合わせた絵にして残しておきたいと願った著者のおもいが伝わってきます。どうぞ本を開けて隅々までご覧ください。

そして、最後には「お伽の世界は想像と創造の星雲」と題するあとがきがあり、以下にご紹介します。

お伽の世界は想像と創造の星雲

(引用はじめ)

光速のロケットができてもとなりの星雲にゆくには何千年とかかるそうですし、事件がおこるとそこにいたかどういかという、いわゆるアリバイが問題となります。このように時間や距離や生物の耐えられない条件などを超えるには、最新の技術や経済力を動員しても出来難いことなのに、なんと本の世界では「話はかわって」「むかしとおいくにで」「さて一方こちらでは」とたった数字数行で、とびこえてきました。特にお伽話や童話の世界にはこのふしぎさすばらしさが渦巻いています。
読書で知識を覚え、文字や物事を知り、かしこくなるとすすめますが、本によってこのふしぎですばらしい世界をとびまわり、まよったりあそんだり楽しんでほしいというのがこの巻のもうひとつの願いです。ではどうぞこの本も、もう1冊。

(引用おわり)

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