編集室より

『人間』(福音館書店)のあとがきに添えられた絵は、洞窟絵画の模写

毎年恒例の干支探し、今年は午(馬)。

人類は人力で動かしていた道具を牛馬に頼るようになり農業や輸送などに大きな力を得ました。また、古くから身分の高い人は馬を移動手段として活用していました。

『かこさとし 新・絵でみる化学のせかい⑤未来の化学 資源とエネルギー』の最初の場面を見ると、馬がそこここに描かれ、様々に利用されてきたことがわかります。

海外に目を向ければ、冒頭に載せた洞窟絵画に始まり、ピラミッドの時代、そしてヨーロッパをはじめ世界各地の絵画作品にも数多く見つけることができますので、それを伝える加古作品にも枚挙にいとまがありません。

紀元前1296年カデシュの戦いでのラムセス2世『ピラミッド』より

『万里の長城』より

『絵でみる化学のせかい③』より

日本の古い時代については『富士山大ばくはつ』(小峰書店)や『ならの大仏さま』(復刊ドットコム)などに多く描かれています。

800年ごろの延暦の噴火を見つめる馬を連れた人

864年・870年の貞観の噴火『富士山大ばくはつ』より

聖武天皇の時代745年の出来事『ならの大仏さま』より

お祭りや行事で馬を見ることもあります。
流鏑馬もその一つでしょう。

『こどもの行事しぜんと生活9月のまき』より

また、そうした大切な馬ですから郷土玩具にも登場します。だるまちゃんすごろくで見てみましょう。

「おくにおもちゃめぐり」青森の【やわたごま】

「おくにおもちゃのいろはすごろく」のちゃぐちゃぐうまこ(岩手)

皆様の地域には馬にまつわるおもちゃや逸話がおありでしょうか。

すっかりデジタル、電化生活の中にいる私たちですが、馬をきっかけに人間の歴史を振り返ってみるのはいかがでしょうか。(つづく)

今年2月に発売された『くらげのパポちゃん』(講談社 かこさとし・文 中島加名・絵)を2025年福井の文化回顧の欄でご紹介いただきました。

かこさとしの没後に本作の遺稿(1950年〜55年作)が見つかりました。この作品を創作したことは加古自身が記したの作品リストや存命中に刊行された本のリストにも掲載されていました。しかしながら長い間その所在が分かりませんでした。

コロナの自宅待機期間の終わりごろの4年前に発見されたものの、絵はなかったのです。そこで、孫の中島加名が絵をつけ絵本として出版することができました。

戦後80年という節目の年に絵本の形でかこさとしのメッセージをお届けすることができ、遺族として深く心に残る2025年の出来事となりました。

行事とお話し(2)大晦日

投稿日時 2025/12/26

大晦日で思い出すお話は「笠地蔵」。これは小学校の教科書でも読みました。現在でも載っているようです。

この物語の筋はかえず、加古の言葉で表現したのが『童話集⑤ 』(偕成社2023年)に収録されている「じっさとばっさの年の暮れ」です。

いつ読んでも、つましい暮らしのおじいさんとおばあさんの深いおもいやりに心ふるえ、暖かな気持ちになります。

短いお話です。あわただしい日々ですが、お読みいただけたらと思います。

2025年をふりかえって

投稿日時 2025/12/24

展示会

今年は展示会に恵まれた一年でした。
1月には前年から続く福井県セーレンプラネットでの「宇宙のえほんとおもちゃ 〜かこさとしの科学絵本〜」、3月には「絵本でたどるいのちのふしぎ 加古里子かこさとしxいのちのたび博物館」(いのちのたび博物館)と科学系の展示会場が続きました。これらの展示会では模型や標本と絵が見事に組み合わされ、年齢を問わず楽しんでいただくことができました。

夏には、かこさとし生誕100周年の先取りでもありましたが、この100年間の日本の歩み、特に戦後80周年という節目の年、さらには市制85年の藤沢市の多大なご協力で、市政施行85周年記念事業無料展示会「かこさとし作品展 〜これまでの100年、そして未来へ〜」を藤沢市アートスペース、藤沢市民ギャラリーの2カ所で盛大に開催していただきました。

このことは2025年12月25日号広報藤沢で「2025年の出来事」(7月)として取り上げられています。

広報ふじさわ 2025年12月25日号

いのちのたび博物館での展示会

藤沢での展示会チラシ

また「古往今来・発車オーライ!」(市原湖畔美術館)では常設展示会場に特別に『出発進行!里山トロッコ列車』の原画を春から秋にかけての長い期間展示していただきました。

くらげのパポちゃん

没後7年ながら、新刊『くらげのパポちゃん』(講談社 かこさとし・文 中島加名・絵)を出版がかないました。かこさとしの原稿発見のニュースを伝えていただいてから2年をかけて刊行に至り、その間の様々をNHKのニュース番組などで報じていただきました。

また、本作および『秋』をNHKラジオで朗読していただいたことは、戦後80年の節目の年に貴重なことでした。

藤沢での展示会では、加古の孫中島加名による絵を初披露、関連のトークイベントでは江ノ島水族館のスタッフの方々からのくらげについて貴重なお話しを伺うこともできたのは思ってもみないことでした。

パポちゃん大好き!と、10月下旬、清泉小学校の5年生に招かれて直接お話しする機会をいただき、この交流は深く心に残っております。

11月には藤沢市や奈良県大和高田市の平和式典で朗読していただくなど出版の年に多くの皆様ご披露したり、お目にかかってお話しする機会が多くあり、感謝の念にたえません。

こうして今年も直接にそして公式サイトなどを通じて あるいは各地の書店さんや図書館さんのおかげで、多くの皆様に発信することができ、ご感想や反響を知ることとなり大変励みになりました。誠にありがとうございました。

皆様のおかげで、みのり豊かな一年となり深謝申し上げます。来年はかこさとし生誕100年を迎え、展示会の企画もあります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

最後になりましたが、どうか佳き新年をお迎えくださいますようお祈り申し上げます。

絵本館でもパポちゃん刊行にちなんだ催し

藤沢の展示会で初公開

行事とお話し(1)クリスマス

投稿日時 2025/12/18

ある行事がめぐってくると読むお話し。かつて読んでもらったことを思い出したり、もう一度読み直したりするお話。みなさんにはそんなお話がおありですか。

クリスマスといえば筆者は幼稚園の頃に読んだ「マッチ売りの少女」や、チャールズディケンズの「クリスマスキャロル」が思い浮かびます。そしてクリスマスの日に子どもたちに化学のお話をしたマイケルファラデーこそクリスマスの精神を現す科学者であったのではないかと感じます。

上の写真にあるように『世界の化学者12か月』(偕成社2016年)で紹介しています。

クリスマスには、やはりサンタクロースのお話が読みたいという方におすすめは『サン・サン・サンタひみつきち』(2019年白泉社)です。

「ひみつきち」でつくられるたくさんのおもちゃの数といったら!物尽くしというよりそのおびただしい洪水のような数に驚かれことでしょう。クリスマスといわず、筆者は1年中見て楽しんでいます。

夜空をゆくトナカイロケットに注目

裏表紙にもかわいいおもちゃ

裏表紙の裏話

投稿日時 2025/12/10

何の本の裏表紙かというと、絵本ではなく中央公論新社の文庫『ちっちゃな科学』(2016年中央公論新社・上)のことです。

福田伸一先生と加古の対談を中心に、理科教育や科学についての編集部からのご質問に文章でお答えするほか、科学についての著述を一部再掲載する充実した内容です。当時、90歳を迎えようという加古はだるまちゃんの3作品に加え、各社からのご依頼に応えるべく執筆に多忙でしたので、本書のために表紙や裏表紙を描き下ろす時間の余裕が全くありませんでした。

若い頃なら無理をしてでも描いたかもしれませんが目の状況も芳しくなく、高齢ということもあり、これまでに描いたものを使って表紙と裏表紙の絵とすることになりました。そして裏表紙の候補に上がったのは、当時絶版だった『みんなの生命くらしの化学』(偕成社下左)の表紙の絵でした。

絶版だった本は、その後おかげ様で2024年に講談社より『かこさとし 新・絵でみる化学のせかい 地球と生命 自然の化学』(下右)として情報を新しくした新版として出版となりました。

というわけで現在刊行されている2冊の本の表紙と裏表紙に同じ絵がある、という稀なこととなりました。

なお、新版『絵で見る化学のせかい』出版にあたり、帯にコメントつけてくださったのは福岡伸一先生。これも奇遇でした。

かこさとしの生まれ故郷越前市には多くの伝統工芸が現在まで脈々と受け継がれていますが、令和の時代の現在は、時代にあった新しい工夫も加えられています。

紫式部の時代に珍重された越前和紙もその例外ではありません。五十嵐製紙さんでは和紙を使った「だるまちゃん」うちわなども作っていただいていますが、5年前に廃棄される野菜や果物の皮を活用したフードペーパーを開発、ノートなどこどもたちが使う製品となっています。

紙の神様をまつる越前市大瀧神社、冬には雪囲いがされます

そのきっかけとなったのは当時小学生だったお子さんの自由研究だったそうです。

実は五十嵐製紙さんをお訪ねした際に、その研究をまとめたものを見せていただいたことがあります。たくさんの種類の野菜や果物の皮などを混ぜる割合を変えて根気強く調べことがわかり、その熱心さに驚きました。

お手元に『かこさとし童話集』(偕成社)がありましたら表紙を開けてご覧ください。普通は遊び紙と言われ何も印刷されないのですが、「かこさとし童話集」の文字が印刷された紙が、フードペーパーです。童話集ではネギとゴボウの2種類を使用、巻末にどちらを使用しているか書いてあります。

加古が米寿のお祝いとして2014年、全国の図書館に寄贈した『矢村のヤ助』にも越前和紙が使われています。図書館で手に取っていただけたら幸いです。

2025年11月21日 福井新聞 越前和紙

「かこさとし からだこころのえほん」(農文協)シリーズ第2巻『びょうきじまん やまいきらべ』(1988年)をご紹介します。

インフルエンザ、はしか、おたふく、食あたりなど6人のこどもが次々に自分がかかった病気の体験談を話します。

最後に口を開いた「かっちゃんは」、みんなと違い治らない病気で、「こないだまで うごいていた ひだりあしは もうだめで、のこった ゆびや あしも だんだん かたくなって いつか うごかなくなる」と話します。

それを聞いてみんなびっくり。しかも足を引きずりながら、かっちゃんはこれから老人ホームに、育てた花を届けに行くので「みんなも きてくれると うれしいわ」とにっこりしているのです。

こうして6人のこどもがホームを訪問するとおじいちゃんやおばあさんは大喜びとなりました。

帰り道、こどもたちは自分が病気になった時のことを思い出しながら、いろいろなことを考えます。
かっちゃんのように「じぶんのことより まわりのひとや もっと かわいそうな ひとのことを かんがえたり、ながくいきることより いきている あいだを だいじに たいせつに すごそうと おもった こが いたのです。」

【この本のねらい】として上の前書きより前の冒頭に、以下のようなかこさとしの言葉があります。

(引用はじめ)
生き物の常として、人は思いかけぬ怪我や病気に襲われることがあります。重い病気に苦しんだり、つらい目に会うと、人はさびしくなり、気弱になり、めそめそ泣きごとを言ったり、何かに頼ろうとするようになります。しかし、病気になっている時も、苦しんでいる間も、誰のものでもない、自分の貴重な生きている期間なのですから、そういう時こそ、日ごろの導きや教えが良い方向にみのっているかどうか確かめる良い機会となるでしょう。

そして、甘えや依頼心に流されていないか、自らためし、自覚をうながすよう、はげまし勇気づけてほしいのがこの本の願いです。

金品を与えることより、本人の自立を助け励ますのが、真の福祉のように、病気とたたかっている子どもに、真の力を与えてやっていただきたいのです。
(引用おわり)

なお、「あとがき」については当サイトで以前掲載しましたが、今回は本の画像でどうぞご覧ください。

編み物

投稿日時 2025/11/18

伝記『かこさとし 絵本と遊びで子どもの未来を』 (2021年あかね書房 鈴木愛一郎著)の中で加古は新聞記者のインタビューに答えて、次のように語っています。
(引用はじめ)
科学をもっと自由で広い目で見て欲しいですね。身の回りにあるもの、編み物、工作、花火、そういうものをつきつめれば科学が出てくる。そんなところから科学に興味を持ってもらいたいと思っています。
(引用おわり)

かこさとしからだの本6『てとてとゆびと』(1977年童心社)には手でする動作を40以上紹介、手偏のつく漢字が100も並ぶ科学絵本ですが、もちろん編み棒を持つ絵が描かれています。

2歳頃の加古の写真(下左)には母が編んだ帽子にセーター、ズボンに靴下を履いた姿。加古は大人になっても母親の手編みのチョッキや腹巻きを愛用していましたし、絵を描く時には前髪が邪魔だといって、妻が編んだヘアバンドをしていました。

『別冊太陽』に掲載している2歳の頃の加古

『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社)より。グレイヘアでわかりにくいが同色のヘアバンドをしている

編み物がテーマのお話を書いています。
『お話こんにちは秋十一月の巻』(1979年偕成社)には「かわった あみもの」。

寒くなってきたのでお母さんが編み棒を動かして赤ちゃんに毛糸の靴下を編んでいると、赤ちゃんが泣いたのであやしに行きます。戻って来て編み物を再開すると今度はミルクを欲しいと泣き声。それが終わって、また編み物をしながら赤ちゃんの成長をあれこれ考えているうちに、靴下の曲げるところと通りすぎてしまい・・・
こんなことを繰り返すうちに、編み物は赤ちゃんの靴下から、お姉ちゃんの帽子、やがてはお父さんのマフラーになって、お父さんの首に巻きついているのです。

赤ちゃんようの靴下をと思って編み始めたお母さん

編んでいるうちに帽子にしようと変更・・・

結局出来上がったのはお父さんのマフラーでした

編み物は無心になれる時間でそれはそれで楽しいのですが、考えごとをしながら手を動かすと、こんなことになるのもうなずけます。

この冬、編み物に挑戦されてはいかがでしょうか。

『わっしょい わっしょい ぶんぶんぶん』ではアクマが取っていった編み棒に毛糸も落ちて戻ってきます

秋の風情

投稿日時 2025/11/06

秋の風情を感じる光景といったら、どのようなものを連想されますか。
うろこぐも、雁の群れ、夕陽に染まる照り葉、まがきの菊・・・

かこさとしにとっては『秋』(2021年講談社)の絵本にあるような、高く澄んだ空にコスモスや野原の草花がゆれる風景だったのではないでしょうか。そして晩秋の趣といえば柿の木に残された赤い実。

そんな場面で『秋』は終わります。

虚子の句、「柿食えば鐘がなるなり法隆寺」ではありませんが、秋の澄み切った空気と静けさが伝わり、『秋』の平和を願う最終場面にふさわしいものとなっています。

他の絵本にも多く、柿が実った風情を描いていますが、『ならの大仏さま』(復刊ドットコム)のこの場面では、静かな秋の日に大仏の勧進をする聖人を取り巻く人々の様子がまるで声が聞こえてくるかのように描かれています。背景にある塀越しの柿の実や黄葉、道端の色づいた木が、中央の松の常緑との対比で一層秋の風情を醸し出しています。

日本の秋の風情のみならず、ヨーロッパの絵も『こどものカレンダー11月のまき』(偕成社1975年)で紹介しています。
【おうちのかたへ】では以下のように書いています。
(引用はじめ)
画家は美しい景色に出会った時、受けた感動をそのまま作品に表現します。ですから、私たちが美しい絵を見るとき、美しい景色を見るのとは、別の深い感動を受けるのでしょう。
(引用おわり)

美しい景色を描いた絵は、画家の感性と筆によって、景色そのものの美しさに加え、深みを持ち、それが見る人に感動を与えるということ。

今一度ここにご紹介した絵を見ていただければと思います。