子どもたちに伝えたかったこと
2022年7月16日〜9月4日、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催の「かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと」の公式図録。
かこさとし自身の心情を投影したカッコーはくしは、好奇心旺盛。自家製のロケットに乗って首が7つある怪獣の捕獲に出かけます。ユーモアたっぷり、怖くない冒険物語です。1978年フレーベル館より刊行の同名絵本の復刊です。
母クジラの愛情と黄色いゆえにいじめられる子クジラの悲しみを希望につながる感動の場面で終わる最後は圧巻です。かこさとしが長年描き続けてきた思いがこの本に凝縮されているかのようです。
かこさとしの紙芝居を手描きのものから出版されたものまで、現存する全作品を紹介。 かこさとしの紙芝居について解説するほか、資料としての価値が高いかこ自身が紙芝居について書いたものを再録しています。かことその紙芝居を知る方から寄せられたエッセイも興味深い内容で読み物としても楽しめます。 著者はかこさとし、鈴木万里
Chock Full o’Fun の日本語版
1968年アメリカで出版された『Chock Full o’Fun』復刻にあたり、日本語版として刊行。かこさとしのかわいらしいイラストはアメリカ向けを意識してちょっとレトロでモダンな雰囲気が魅力。手近にあるものを少しの工作と工夫で自分だけのおもちゃに仕立てて遊ぶ楽しさは格別です。家の中で遊べるもの、外でも遊べるもの色々です。
1968年アメリカ向けに出版された同名の絵本を復刻したもので、英語表記です。洋の東西を問わず、子どもの身の回りにあるものを使って、ほんの少し手を加え、工夫することで自分だけのおもちゃが出来上がる嬉しさとそれを使って遊ぶ楽しさを満喫できることを提案する絵本です。工夫から生まれる創造力や自由な発想が子どもの力を伸ばすというかこの体験から得たものが根底にあります。日本語版『てづくり おもしろおもちゃ』も同時刊行。
1953年に文、1957年に絵を描き紙芝居として制作。その後およそ30年かけ、1982年絵本として出版しようと出版社に相談するも、かないませんでした。以来、埋もれていた作品が2021年、かこが望んだ絵本の形で出版されたのがこの本です。かこが18歳の時に遭遇した壮絶な戦争体験を「私」という一人称で語っています。美しい風景、恐ろしい光景が繰り広げられる絵と素直な言葉が胸に響きます。
1984年偕成社より刊行された『たろうがらす じろうがらす かこさとし七色のおはなしえほん④』の復刊。からすの兄弟がいたずらで失敗したことで大切なことを学ぶお話し。お説教的なところがなく、兄弟からすが愛情を込めて描かれていて、かこさとしならではの暖かさが感じられる作品で、「あとがき」に著者のメッセージが込められています。
『遊びのの四季 ふるさとの伝承遊戯考』(1975年じゃこめてい出版)および、増補版(2018念復刊ドットコム)を底本として、文庫化したものです。文庫にするにあたり改題し、16ページにわたるオリジナルカラーページで、子どもの遊びのまつわる挿絵や写真を収録。また、文庫版付録として「越前武生という町のこと」(「文藝春秋」2014年7月号)を掲載。解説は美術史家の辻惟雄氏。
2004年ベネッセコーポレーション刊行の同名絵本を復刊したもの。うさぎのぱんやさんのいちにちを追いながら、パンの作り方はもちろん、普段目にしない仕事の様子もわかる絵本です。見ているだけでも愛らしいうさぎたちと美味しそうなパンが次々出てきて小さいお子さんも楽しめます。
伝記を読もう
1926(大正15)年かこさとしが現在の福井県越前市で生まれてから2018年5月2日、神奈川県藤沢市で亡くなるまでの92年間の生涯を小学生でも読めるようにわかりやすく伝える内容は、多くの初公開の写真とともにかこが、悩み苦しみ、生涯をかけて取り組んできたことの根源を明らかにします。大人にもおすすめしたい伝記です。
くもとり山のふもとの小さな病院で、イノシシ先生が動物や虫たちの痛いところや体の具合ところを、話をしながら原因を突き止め見事に治療します。7つ小話からなる幼年童話です。穏やかでわかりやすい語り口は、読み聞かせを想定して作られたためで、大人も子どももその世界に引き込まれます。文はかこさとし、絵はかこと中島加名。
ヌプキナはアイヌ語で「すずらん」を意味します。ヌプキナ咲く湖のほとりで暮らすアイヌ兄弟のこの悲しい物語は、未来を担う子どもたちに伝えておきたいという著者の強い思いで描かれました。多様性のことが語られる現在ですが、1980年に絵本として出版されていたことに著者の一貫した姿勢が伺えます。
1986年に出版されたものを再編集の上、復刊した傑作ファンタジーです。サンタクロースの「謎とその秘密の全部を明らかにした」と著者があとがきで述べているように、サンタクロースの存在に疑問をいだいているお子さんたちがこの絵本で秘密基地のことを知ったら、きっと喜ばれることでしょう。次々に出てくるたくさんのおもちゃは必見です。
かこさとしの初詩集。2部構成で第1部はあいうえおに濁音、半濁音を加えた71音の言葉遊びの詩。第2部は孫を間近に見て創った12編の詩。かこさとしによる挿画も愛らしい。
かこさとし・作、鈴木まもる・絵 かこさとしの下絵をもとに鈴木まもるさんによる絵で完成した、かこさとしの遺作。身近な水の特徴や特性を小さな子どもたちに示しながら、その重要性を伝える。地球環境について考えるきっかけにもなる大人にも読んでほしい絵本。
疎開させておいたため消失を免れ2015年に発見された小学校卒業時の画文集。戦争前の子どもから見た社会の様子が垣間見え、また著者の才能の萌芽も見て取れる貴重なノンフィクション。出版に当たり、絵日記の内容について著者自身が当時を振り返り、今だからこそ伝えたい解説や地図など資料を書き加えました。著者の心情が吐露されている「あとがき」にも注目したい。
だるまどんに連れられて、沖縄の小さな島をおとずれただるまちゃんは、島の先生から昔のことや古い習わしを教わります。森で会ったキジムナちゃんと楽しく遊んでいると助けを求める声が聞こえ、急いで駆けつけます。ドキドキ、そしてほっとするお話です。
森で出会ったはやたちゃんにさそわれて、だるまちゃんはおばけ大会の審査をすることになり、東西南北のお化けが次々に現れます。鵺(ぬえ)退治にまつわる古いお話の主人公の従者が東北で郷土玩具となっていたことに発想を得、東日本大震災と福島の原発事故被災の方々への鎮魂と慰霊の思いから誕生した絵本です。
だるまちゃんは女の子たちに「おままごと」に入れてもらいます。一緒にいたかまどんちゃんに美味しいご馳走を出してもらっていると、近くで火事が起こり大騒ぎとなります。宮城に伝わるカマド神をモチーフに、東日本大震災と原発事故への警鐘の念を込めて作られたお話です。