編集室より

かこさとし 自然のしくみ 地球のちから えほん第7巻

日本各地の火山噴火に警戒が必要とされています。
日本、そして世界にある火山を例に、小さなお子さんにも知ってもらえるようにかかれたこのシリーズのまえがきとあとがきをご紹介します。

まえがき

(引用はじめ)
自然をまもろう
地球を たいせつに しようと いわれます。
ところが その 自然や 地球は
ときに ものすごい ちからや
おもいがけない できごとを おこします。
なかでも あかい ひを はき、
そらたかく とけた いわや けむりを ふきあげるなど
かざんは おそろしい うごきを します。
その かざんが たくさん あるのが にっぽんです。
その にっぽんに すむ わたしたちは 
どうくらしたら いいのか、どうしたら よいかを
ちいさい どくしゃの ために かいたのが このほんです。
(引用 おわり)

下は日本の海にできた火山についての場面。明神礁(左)や西之島新島(右)が描かれ、地図には諏訪之瀬島もあります。

あとがき

(引用はじめ)

大爆発など、被害が出たりすると、火山がなければよいと考えますが、46億年前、うまれて間もない地球は、マグマの海であったといいます。

一方、月にはわずかに火山活動の跡が見られるものの、現在は全く火山が見られないように、地球も46億年間で、マグマの活動が衰えていることを示しています。したがって火山があるのは、まだ地球が若く、活力があると言うことなので、地球上の生物として、今のうちに火山から元気をいっぱい、いただくことにいたしましょう。

(引用 おわり)
(まえがき、あとがき、いずれにも漢字には、ふりがながあります)

すごろくのような楽しげなチラシは10月4日までニセコ町・有島記念館で開催中の「かこさとしの絵本展」のものです。左側は裏面、右側に並ぶ絵の出典はどの本からでしょう?

右上「あおいめのかわいいおんなのこ」は『あおいめのめりーちゃん おかいもの』(2014年偕成社)。これは『あおいめ くろいめ ちゃいろのめ』(1973年偕成社)の続編です。

山を背に湖の熊は、『青いヌプキナの沼』(復刊ドットコム・下)の前扉の絵です。

2020年7月12日に開業する国立博物館ウポポイで紹介されるアイヌの人々の暮らしや歴史ですが、子ども向けの物語としてそれまであまり語られることのなかった歴史の一端を絵本に残しておきたいと願ったかこが1980年に刊行、本展示会をきっかけに復刊したものです。

チラシ左側中央の熊も同じくこの本からです。「ダダーン」と熊を撃ったのはアイヌの人たちを追い払い痛めつけた「番所のさむらいたち」。この熊が物語を大きく転換させることになります。

「やま また やま」のフクロウは『どろぼうがっこう』(1973年偕成社)のおはなしを教えてくれた「へんな みみずく」です。

その下の肖像画は「来日の時67歳 ホレース・ケプロン」『技術と情熱をつたえた外国の人たち』(2004年瑞雲舎・下)の一人です。北海道開拓事業に全力を傾け、次なる指導者を育成するために彼が設立した札幌農学校のクラーク学長はご存知の通り。「だるまちゃん」や「からす」に加え、こういった本から複製画をご覧にいただけます。

そうそう、熊の右側、長靴で郵便を投函している女の子は、『だんめんず』(1973年福音館書店)の一部、本では郵便ポストの断面図が載っています。「どっさりすくいとる」のは『どうぐ』(1970年福音館書店/2001年瑞雲舎)からです。

北海道の皆様、どうぞお出かけください。

みんなこどもから教わった

『人間』至上主義排し歴史追求

愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第6回目は、『人間』(1995年 福音館書店)について。

『かわ』(1962年)『海』(1969年)『地球』(1975年)『宇宙』(1978年)に続く科学絵本シリーズの総合ともいうべき本作品の制作にはおよそ17年の歳月がかりました。生き物としての人間、社会や歴史、文化の面を「科学という知の力」を借り、「人間至上主義を排し」て描いたと、あとがきにあります。

下の絵は最後から2番めの場面「死の恐れと悲しみをこえて」。
人間が遭遇するであろう身体的苦しみ、症状や病名、そして命が尽きると起こる症状にまで言及しています。

この場面上部には、生命誕生以来およそ40億年ずっと私たちにひきつがれている「生命の設計書」が描きかれています。そして最後の場面には「150億年の宇宙、46億年の地球の歴史を秘めている人間」と「母なる地球の海水をたたえている人体」がいて、記事でも引用されている次のような言葉で終わります。
(引用はじめ)
このように、その細胞や脳や体や心に、宇宙・世界・地球の、歴史と現在と未来とをやどしているのが人間です。
その人間のひとりがあなたです。
そのすばらしい人間が、君なのです。
(引用おわり)

『人間』のあとがき全文は当サイトの【編集室より】の「あとがきから」(2020年3月)にあります。

愛媛県歴史文化博物館の展示では、この絵の他にも『人間』の複製画をご覧いただけます。

以下で『人間』などを展示している会場の様子をご覧ください。

「かこさとし絵本展」は子どもたちへのメッセージ

本州の中央部では最近地震が頻発しています。その原因は、山岳ができた理由とも関係しています。小さなお子さんたちにも理解できるように、わかりやすい例で図解して説明するこのシリーズの本文はすべてひらがなの分かち書きです。
あとがきをご紹介しましょう。

あとがき

(引用はじめ)
この「自然のしくみ 地球のちから」シリーズは、自然の現象変化を地球のさまざまな活動の起こる原因や理由を、ちいさい読者に伝えるためにつくりました。

この巻は、特に地球の高い所、山岳や高原ができたことや、それから後、どのように変化しているかをのべましたが、それらによって、自然のきまり、法則というものを知っていただければと願っています。
(引用おわり)
漢字には全てふりがながあります。

みんなこどもから教わった

数奇な運命 歴史も表現

愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第5回目は『ならの大仏さま』(1985年福音館書店/2006年復刊ドットコム)についてです。

かこは、東大寺の大仏について日本では小学校でも中学校でも習うけれど、本質的なことが伝わっていないと嘆くように申しておりました。コロナ禍で注目を集めた大仏建立前の状況、聖武天皇(下)の願い、そして1000年以上にわたり現在にいたるまで、戦乱や災害にまきこまれながらも存在していることを様々な角度から歴史を追って科学的に伝える77ページの科学絵本です。

お寺に残る古い資料などもみせていただき、化学者として自ら塗金の方法や必要な金(きん)の量を計算をするなど執筆までに5年を費やしたと、あとがきにあります。

展示会場で絵をご覧いただくと感動される方が多いのも、この本の特長です。機会がありましたら是非お出かけください。

(『ならの大仏さま』のあとがきは当サイト「あとがきから」コーナー2019年5月に3回に分けて掲載しています。)

びわの季節もそろそろ終わりでしょうか。
小さい頃、びわの実を前に見てどうやって食べるのだろうと考えこんでしまいました。一年ぶりに出会う果物の食べ方を幼い私は全く覚えていなかったのです。

ようやく食べ方がわかって、今度は中にあるタネが見事なくらい大きくてびっくりしました。子どもにとってはこんなに大きなタネのある果物は珍しかったのですが、それを土にうめると芽がでると聞いてうめてみました。

するとどうでしょう。私が忘れないうちに芽が出てきました。あんなに大きなタネですからきっとたくさんの栄養がつまっているからなのか、嬉しくて毎日眺めていました。そんな感動が伝わる絵本『たねから かめがでて』(1968年 童心社・上)のあとがきをご紹介します。

(下の絵は『あさですよ よるですよ』(1986年福音館書店)の一場面)

色や形よりも大事な植物の本質を知ろう

(引用はじめ)
わたしたち人間は植物から大きな恩恵を受けていながら、その存在に時として気づかないでいます。

植物ほど素晴らしい空気浄化装置はありません。これほど多種多様な芸術文化創造者もないでしょう。

このように、おとなにとってあまりに身近で、あまりにも大きな植物の存在も、子どもにとっては、さらにつかまえにくい、千差万別のものとしかうつりません。

子どのたちには、摘み草や、ごはんや、おやつというふうに、それぞれちがった「もの」である、タンポポや、米や、すいかなどが、みんな同じ「植物」の仲間なんだと知ってもらうのがこの本の目的です。

すなわち、うわべの違いやバイオ技術等の特例ではなく、本質的には「土におちたタネが育って大きくなる」仲間だと知ってもらうのがこの本のねらいです。

それは同時に、造花や、チョコレートや金魚を、地にまいても育たないことを知ることにもなるからです。

かこ・さとし
(引用おわり)

科学絵本『たねから めがでて』の絵はかこではなく文章のみですが、『みごと はなやかなあそび』(1992年農文協)には【たねから めがでて】という見出しで、種の秘密を菜の花とトウモロコシを例に図解しています。(本では、上の絵の右に下の絵が続くようになっていて左から右へ時間が経緯するようになっています。)

ついつい、植物の「色や形」に目がいきますが「その本質」を特にお子さんたちに知ってもらうことは地球環境を考えるにあたり大切なことであると思います。

みんなこどもから教わった

『どろぼうがっこう』 歌舞伎調 笑いとスリル

愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第4回目は、『どろぼうがっこう』(1973年偕成社)について。

前扉(上)から、すでに定式幕に大入袋、幕引きの黒子は頰被りと芝居の雰囲気、ユーモアたっぷりなこの本は、男性ファンが多く「子どもと一緒に楽しみました」というお父様からのファンレターに、かこは大変喜んでいました。

かこが学生時代に体験した、子どもたちが劇を見て笑いで反応する場面、夢中で遊ぶ姿、「プチ悪」から善悪を見抜いていく感性、そういったことをキーワードに解説が展開されます。

ところで、このお話には続編があるのです。「どろぼうがっこう」の生徒たちがクマサカ先生とどうやって全員脱獄(?!)し、大運動会を開催できたのか、是非、絵本でお楽しみください。

2020/06/27

富士山

7月1日は、例年なら富士山の山開きですが、今年は登山道が閉鎖されるそうなので、登らずに眺めて楽しむ夏になります。残念ですが、だからこそ富士山の絵や本をご覧いただきましょう。

かこと富士山の出会いは小学校2年生(1933年)の6月10日、生まれ故郷の武生(現在の福井県越前市)から東京に転居する道中、東海道線の車窓から見たのが最初でした。小学校を卒業するにあたり作った絵いりの文集『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社・上)には、下のような挿絵があって次のように書いています。

(引用はじめ)
「僕が絵をうまくまったのはこのときからである。景色のよい中部の山々、太平洋や富士の勇姿を見ては、自らどうかしてあのようなよいものを紙の上へうまくあらわそうと思った。」
(引用おわり)

その後中学生の時、野営、今風に言えばキャンプですが、戦争の足音が近づく時世で鍛錬のために学校で出かけた山梨で板に描いた富士山の油絵があり、全国巡回展(次回は2020年12月12日から盛岡市民文化センターで開催予定)でご覧いただいています。

富士山といえば世界的に有名な葛飾北斎の「神奈川沖波裏」が思い浮かびますが、かこは『こどものカレンダー4月』(1975年偕成社・上)の中で北斎の描いた富士山を模写して掲載しています。ご覧いただいているのがその場面で「山下白雨」の模写(下)なども全国巡回展で展示しています。

富士山の美しさを独自の分析でご紹介する『富士山大ばくはつ』(1999年小峰書店)は富士山の美しさを愛した、かこさとしらしさが溢れる科学絵本です。

地質、生物、気象、文学、芸術などの要素を含み総合的に富士山誕生の過去から未来を見通す視点、登れない今年にこそおすすめ致します。

2020/06/18

一つ星

食べ物やさんのことではありません。かこが川崎市でセツルメント活動をしていたときにデザインした旗の図案です。コバルトグリーンに一つ星。「自ら輝く星になれ」という意味を込めたそうです。

同じ頃デザインした人形劇団プークのシンボルマーク(上・右)、Pの真ん中にある星もセツルメントの旗と同じ意味を込めたようです。ちなみに左側のキャラクター、プー吉もかこのデザインが原案です。

かこは若い頃からシンボルマークを考えるのを好んでいたようで、大学時代の演劇研究会や大学生協のマークもかこの案が採用されたそうです。

いわゆる星の形は絵本でも少し見受けられます。

『ことばのべんきょう くまちゃんの』(1970年福音館書店・上)では、まさに星という言葉を覚えるために、そして『あさですよ よるですよ』(1986年福音館書店・下)の後ろ見返しには夜中の12時をさす時計の絵とともに窓から見える星空として描いています。

科学絵本の星そのものについてはここではふれません。『だるまちゃんとかみなりちゃん』(1968年福音館書店)のこの場面の星は漫画的な表現ですが、まさに星が見える状況に違いありません。

「自ら輝く星」になる物語があります。紙芝居「きゅうりばあちゃんのコンサート」(1989年 全国心身障害者福祉財団)で、その表紙(下)には一つ星が輝いています。

主人公は町から離れた丘の一軒家に住む目を悪くしたきゅうりばあちゃん。ピアノを弾きながら歌います。

(引用はじめ)
〽︎
きょうもひとりの ひがくれる
こどももないし みよりなく
おととししんだ おじいさん
ほしに おいのり したいけど
ちいさいひかり よくみえぬ
(引用おわり)

この丘に猛獣公園を建てるために、おばあちゃんの家を立ち退かせようと「ピカピカの自動車に乗った人」がやってきます。ところが聞こえてきたおばあちゃんのピアノと歌声の素晴らしさに方針転換。このおばあちゃんのコンサートをすることになり、結果は大成功。次々開かれる演奏会はいずれも拍手喝さい、アンコールの声につつまれます。

実はこの演奏は、おばあちゃんだけではなく、嵐の日におばあちゃんの家の外でないていて、おばあちゃんに助けられたネコも一緒に歌うのですが、伏線がうまく張られたこの紙芝居の展開はみごとでまさに芝居のような盛り上がりのクライマックスです。

おばあちゃんの歌の中にある「ちいさいひかり」とこのおばあちゃんが「やせてしなびてほそいため きゅうりおばば」とよばれるも、ネコのおかげですっかり元気になり、演奏会の成功によってスターのようになった最後の場面が重なる、という、実は何気なく描かれているようで大変意味深い一つ星なのです。

みんなこどもから教わった

『からすのパンやさん』

愛媛県歴史文化博物館で開催中の「かこさとし絵本展」の見どころを学芸員さんの解説で紹介するシリーズの第3回目は、『からすのパンやさん』(1973年偕成社)について。

見開きいっぱいのパンの場面をいつまでも見ていた覚えのある方も多いことでしょう。パンやさんにやってくるからすたちの個性的なこと、4羽の子どもが家のお手伝いをしてお店を盛り立てる「個性を尊重し共生に思い」そこに「社会を考えるヒントを与えて続けている」と解説。

この本とその続編『からすのおかしやさん』(2013年偕成社)については以下の偕成社のサイトを是非ご覧ください。本屋さんで手に入る素敵なプレゼント情報があります。

偕成社 からすのパンやさん

2020年6月30日愛媛新聞 「加古作品の魅力 知って 児童らに読み聞かせ」

本展示会にあわせて6月27日には歴史文化博物館のある西予市の図書交流館分館で学芸員さんによる絵本の解説と読み聞かせ会が開かれ6月30日愛媛新聞にその模様が写真とともに紹介されました。以下でどうぞ。

愛媛 読み聞かせ

誕生日に贈りたい絵本

『からすのパンやさん』については絵本ナビスタイルで、「3歳、4歳、5歳の誕生日に贈りたい絵本」として紹介されています。以下でどうぞ。

絵本ナビ からすのパンやさん