編集室より

手品には、絶対何かヒミツの仕掛けがあるに違いないと目を皿のようにして見ていても、見つけられるものではありません。だから面白いとも言えるのですが、小さいお子さんにもできる簡単な手品とその種明かしがあるのが『だるまちゃんと楽しむ日本の子どものあそび読本』(2016年福音館書店)です。

筆者が幼い頃、かこが見せてくれたこの手品を見て面白い!と思った思い出があります。素人がするので種明かしの前にばれてしまいそうになるのがかえって愉快な手品で、その名は「見えない糸」。用意するのは細長い紙切れと見えない糸のみ。

見えない糸がない?
そうですか。。。では紙だけでなんとかしましょう!
やり方は、39ページです。

種明かしも。。。39ページにありますからご安心ください?!

洒落たフレンチレストランのひさしのような色合い。かこの手書き文字の題名『あかですよ あおですよ』(1995年福音館書店)のとおり、たしかに上から赤、白、青です。しかし、濁点のほかにも丸いものがあって。。。

下の方には不思議な模様がついたものが描かれています。

裏表紙を見ると。。。

タコ!
不思議なものはタコの吸盤、青いナミナミは波で、丸いのは水泡です。

本を開けると、前見返しからすでに物語が始まります。

(引用はじめ)
🎵たこたこ がっこう いいがっこ
  6ぴき せいとも いいこども
  たたこ せんせも すてきです

🎵 たこたこ がっこう いわのなか
  べんきょも ゆうぎも たいそうも
  なみの まにまに ゆうらゆら
(引用おわり)

まるで、遠くから聞こえてくる歌声で始まる映画の冒頭場面のよう。この本は、たこたこ学校の6匹のお話で表紙に並んでいるのはランドセルです。

えんどうまめ一家の1日を描いた『あさですよ よるですよ』(1986年福音館書店)に続くお話として、この本は創作されました。前者は時間を小さいお子さんに知ってもらえるよう、そして本作のテーマは色です。クレヨンにあるような基本的な8色のものが次々に登場しカラフルです。

そして最後はもちろんあの色です?!
タコですから。。。。

種明かしとして、後見返しの絵をご覧ください。

この絵、どこかで見た覚えがある。。。という方がいらっしゃるでしょう。

実は『かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと』(2022年平凡社・下)のカバーを外すとでてきます。上部の表やタイトル、恐竜の名前などは印刷されていませんが、絵と一緒にかこの手書き文字がそこかしこにあり、そのユーモラスな会話に笑ってしまいます。

ケティオサウルスのお腹には絆創膏、コリトサウルスの足には包帯が巻かれていたり、ティラノサウルスがゴルゴサウルスの尾を踏んでいたり、そしてステゴサウルスには子どもが乗っていて、かこらしさが溢れ、本書の最後でご紹介している図譜の世界に通じるものがあるので、登場させました。

種明かしをすれば、『かこさとし あそびの大星雲 2 とびきりばっちりあそび』からの採用です。副題は「生物の力、動物のふしぎ」で、2022年9月26日に「編集室より・あとがき」コーナーでご紹介した本です。

この恐竜の次の場面では地球生成から新世代、その次の場面では始生代から新生代、今に至る動物が驚くほどカラフルに、これまたユーモラスに描かれていて、大きな文字で次のようにあります。

いきものはみんな けんめいに いきてきた
どうぶつはみな すてきな ともだちだ

まさに図譜で表現したかったことを、お子さん向けにわかりやすく言いかえているようです。

秋の夜長、10月27日からは読書週間ですが、その最初の日は「文字・活字文化の日」とされているそうです。

活字離れと言われて久しくなりますが、もし文字がなかったら、そして活字がなかったら人間の文化は大きく変わっていたに違いないでしょう。

活字が生まれたのは550年以上前、ドイツのグーテンベルクが「金細工師のフストとともに印刷会社を創立し、45才頃から印刷の研究をはじめ、ついに合金活字を使った印刷技術を発明しました。」と『こどものカレンダー2月のまき』(1976年偕成社)で紹介されています。

それによると「従来の木版印刷よりはるかに経済的で印刷の速度もはやい、活字文化のもとをきずきました。」

下の絵はグーテンベルクが初めて印刷した本とあり右上に見える「か」「こ」が活字です。グーテンベルクは1468年2月23日に亡くなったそうです。

四季それぞれ、小さい子が遊ぶヒントがつまった遊び図鑑。この4巻に込めた著者の思いを「まえがき」のような以下の言葉から知ることができます。

子どものあそびがもたらす実り かこさとし

(引用はじめ)
子どものあそびは、楽しみながら知恵や力を伸ばし、体や心を育てていく実りをもたらしてくれます。
しかし、いやいやながらおしつけでは、よい実りにはなりません。
小さい子が遊びのおもしろさを知ると、いろいろ考え、探し、工夫して自分に合ったあそびにしてゆきます。
この「あそびずかん」は書いてあることがわかって、すすんであそびができるよう、絵と言葉でやさしくつづった、子どものあそびの本です。
(引用おわり・漢字には全てふりがながあります)

この巻に登場するのは、草花遊び、虫の音の聞き分けを紹介する「むしのおんがくかい」、渡り鳥とそれにまつわるわらべうた、屋内・屋外での遊び、雲や星月についてなどです。

自然の中で、あるいは自分の身体や身近なものを使っての遊びを紹介する「あきのまき」のお子さん向けのまえがきは以下です。

あきのまき まえがき

この ほんには、ちいさい こが たのしめるよう やさしくて おもしろい あきの あそびを あつめました。

あきは きのはが きいろや あかに かわったり、おいしい くだものが みのる とても よいときです。

そうした なかで、ともだちや なかまと あそぶことで、ちえや ちからが のびてゆきます。

さあ、あきの あそびを たくさん たのしんでくださいね。

それではあとがきをどうぞ。

あきのまき あとがき

(引用はじめ)
秋は実りの季節。子どもたちの活動もいちだんと深まるときです。

植物や昆虫、光や風など自然の影響だけでなく、ともに遊ぶ子の言葉や声、表情や動きがたがいに働きかけてゆきます。発育途上にある子にとって、周囲の自然や人々との交流や接触が、ひとりひとりの子の総合的な糧となって、成長を支え、促し、実りをもたらしていくのです。

どうぞ、こうした実りある秋の遊びとなるよう、楽しんでいただければ幸いです。
(引用おわり)

年々、クリスマスケーキやおせち料理の予約時期が早くなるような気がします。
急かされるような気持ちと年に一度の嬉しい季節を想像する楽しみが入り混じります。

2023年は卯年ということで『だるまちゃんとうさぎちゃん』(1972年福音館書店)が大活躍しそうな予感。

一昨年の発売から大好評の卓上カレンダーには『だるまちゃんとうさぎちゃん』のかわいい絵、そして裏面には、『かこさとし あそびずかん』(全4巻・小峰書店)から楽しい遊びの紹介もあります。

郵便局の年賀状にも登場しています。以下でどうぞ。

郵便局 年賀状

年賀状

『からすのパンやさん』一家ファミリーカレンダーももちろんあります!

毎日5つの欄があってご家族5人分の予定が書き込めるようになっています。ペットの予定も入れたり、お一人で5つの欄を時間帯ごとに区切って使われたり、あるいはお仕事、趣味など項目別に使われたりとスペースを活かした使い方ができ、毎年好評です。

かこさとしの食べごと大発見 1

「収穫と食欲の秋に覚えておきたいこと」として『ご飯 みそ汁 どんぶりめし』(1993年農文協)を取り上げ、まえがきにあたる〈この本のねらい〉を紹介。(下の写真、前見返し右ページ)

前見返し左側では米作りの日数180は漢字で「日の本」とか「白米」という字になることや、イネを作る手数88は「米」という字になる、といったことが説明されています。

尚、表紙の絵に使われている紙粘土による人形はかこが作ったものです。

記事は以下で。

ご飯 みそ汁 どんぶりめし

『かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと』(2022年平凡社)などでご紹介している、かことミロのビーナス像の写真。当時かこは高校生で、このミロのビーナス像は現在でも成蹊学園史料館にあるそうです。

成蹊学園サステナビリティ教育研究センター・リレーコラム(第37回)で「加古里子さんとミロのビーナス」と題して、そのビーナス像とかこについて詳しく紹介されました。

上の写真の左側緑色のものは大学生の時、かこがミロのビーナスを版画にして刷ったもので、群馬県立館林美術館で開催中の「かこさとしの世界」展で展示しています。また、『すばらしい彫刻』(1989年偕成社・下)の制作のための下絵・資料も同展示会でご覧いただけます。

リレーコラムは以下でどうぞ。

かこさとしとミロのビーナス

2022/10/03

虫干し・曝書

空気が乾いてきて爽やかなこの季節、こんな晴天は虫干しにピッタリです。

写真をよーくご覧いただくとトンボが電線に止まっていて、まさに虫干し!?

虫干しとは本来、着物や本などをカビやムシから守るために空気に曝すこと。図書館などでは殺菌消毒の装置がありますが、高温多湿の日本では昔から風通しの良い日陰で昼間の時間に行います。

曝書(ばくしょ)は夏の季語だそうですが、暑くもなく寒くもない今頃は本だけでなく人間も気持ちの良い空気の中で過ごしたいと思います。

さて、写真の赤トンボはわずかしか写っていませんが、実はたくさんが群れ飛んでいて『とんぼのうんどうかい』さながらの様子に、平和な秋をしみじみ感じるひとときでした。

この3冊に共通するのはいずれも世界遺産に登録されているものをテーマにしている点です。ピラミッドは1979年、万里の長城は1987年、奈良の大仏は1998年に世界文化遺産に認定されましたが、かこは世界遺産だからという理由だけで取り上げたのではありません。

地球誕生から始まる『万里の長城』(2011年福音館書店)には壮大な人間の歴史が写しだされていますし、20代の頃から興味を持ち人形劇の脚本を書いたピラミッドについては歴史のみならず建設の技法にも触れ日本科学読物賞を受賞しました。

特に『ならの大仏さま』(1985年福音館・後に復刊ドットコム)は世界遺産認定のずっと以前から研究しその建立にまつわる人間模様、土木技術とそれに携わった人々の苦心にも言及。歴史、科学のみならず心や宗教ということをも含む総合的な視点からの科学絵本です。化学者としての塗金についての解説は土木学会誌に発表したほどの専門的な検証によるものです。

『太陽と光しょくばいものがたり』(2010年偕成社・下)の共著者でもあり光触媒の発見者である藤嶋昭先生による、この3冊とかことの思い出が「学士会会報」No956(最新号)随想「加古里子先生の世界遺産の本に感動して」として掲載されています。