2025
栃木子どもの本連絡会の45周年を記念して宇都宮中央図書館にて鈴木万里が「かこさとしが子どもたちに伝えたかったこと」というテーマで講演しました。
加古は1983年この図書館で講演をしたこともあり、はじめて伺う場所でしたが、40年以上を経て同じ場所で講演することに感慨を覚えました。
会員の方々と一般の方も参加されて大変熱心にお聴きいただき、講演後もご感想を直接伝えてくださる方々があり、加古の本の話題が続きました。
加古の子ども、少年・青年時代のことやセツルメント(ボランティア)活動、そして『童話集』に込められた思いなど、作品をご紹介しながらの1時間半でした。
てんぐとかみなりといえば、『だるまちゃんとてんぐちゃん』(1967年)、『だるまちゃんとかみなりちゃん』(1978年、いずれも福音館書店)を思いうかべてくださる方も多いことと思います。
実は、このてんぐとかみなりを加古は絵本を作るようになる以前、手描き紙芝居に登場させています。
1952年、セツルメント(ボランティア)こども会のため作った『てんぐのはなはな』はてんぐのうちわをあおぎながら「てんぐのはなはな」と唱えると鼻が伸びてゆくというユーモラスなお話ですが、調子にのっているうちに大事件が起こり、主人公が安楽な生活を反省することとなります。
2年がかりで構想を練った、仕掛けのあるこの紙芝居は大好評となり、貸しては戻ってこず、新たに作り直しを繰り返し現存するのは1995年に作ったものが『かこさとしと紙芝居 創作の原点』(2021年童心社)に掲載されています。
そして『童話集④日本のむかしばなし〈その1〉』(2023年偕成社)にも場面ごとの挿絵入りで収録されていますので、お楽しみください。また、この巻には2002年作の「天狗とばあさん」(下)という実に愉快なお話もあります。
1953年作の「カミナリ・ゴロちゃん」は、かみなりの坊やが空から落ちてきて、人間の子どもたちと遊びます。しかし夕方になると子どもたちは家に帰ってしまい、カミナリ・ゴロちゃんは空から降りてきたカゴに乗って帰ってゆくという17場面からなります。
手描き紙芝居「カミナリ・ゴロちゃん」第1場面(表紙)
「カミナリ・ゴロちゃん」第2場面
加古はかみなりの子どもの姿を描く前に宗達の風神雷神図を模写したり、様々なかみなりの絵を見て模写しながら自分なりのかみなりの姿を作り出そうとしていました。
『だるまちゃんとかみなりちゃん』が誕生するのはこの紙芝居から15年後のことになります。
手描き紙芝居「かっぱとてんぐとかみなりどん」
「かっぱとてんぐとかみなりどん」第3場面
1959年作の紙芝居「かっぱとてんぐとかみなりどん」(上)は炭焼きの「とうべえ」にかっぱとてんぐとかみなりの三者が無理難題を言いつけるのすが、いつもは泣いてばかりの「とうべえ」のこども「とうへい」がこの3者を一気に退治してしまう愉快な物語です。
子どもの機知で問題を解決する、このお話は1978年にかこさとし・むかしばなしのほんシリーズ5巻 お第1巻として同名で絵本として出版されました。
この物語の中では、てんぐもかみなりも人間に悪さをするものなので、その雰囲気が漂う顔つきが表紙に並んでいます。
悪者たちをやっつけた「とうへい」は最後にこんな表情です。さて、どうやって退治したのでしょうか。
独特の味わいのある絵と言葉で語られる物語を是非、お楽しみください。
2014年に復刊ドットコムで出版され、2025年にも重版されることになりました。詳しくは以下でどうぞ。
かっぱとてんぐとかみなりどん
おやつは大人にとっても楽しみですが、特に成長期の子どもには大切なものです。
2025年1月8日の福井新聞「越山若水」では、おやつと言われる由来や大人にとっても「大事な時間」として棋士やスポーツ選手のおやつに触れながら、越前市ふるさと絵本館で展示中の「みんな大好き!おやつ」で紹介している加古のふるさとのおやつの思い出を伝え「古里のだんらん」を思い起こさせるとしています。
上の絵は『からすのおかしやさん』(2013年偕成社)、洋風のお菓子だけでなく、「ようかんか まんじゅうなんかが ほしいのう」というしろいひげおじいさんのリクエストにこたえて出来上がった数々です。
この希望は、幼い頃には野原で調達したおやつか、だしをとった後のじゃこをしがんでいた加古にとってなかなか口にすることができなった、おやつへの願望がこめられていているようです。
現在、越前市絵本館で多くの場面を展示している『あそびの大惑星⑦ももくり チョコレートのあそび』のあとがきをどうぞお読みください。
午後3時は健康文化の停車駅
(引用はじめ)
まだ小さな内臓のこどもという生物の大きな運動量をまかなうため、休息や水やおやつが大切です。特におやつは間食と言う。臨時仮設駅ではなく、また栄養やカロリーといった物質面だけにとどまらず、心身の全面発達という大きな旅行の重点スケジュールに組み込む配慮が必要でしょう。それはシツケとか教訓とかではない、やすらかな満足と健やかな文化を伴った、心との交錯主要駅としていただきたいのが、イタドリの芽やダシジャコのおやつ(?)で育った作者の願いです。
(引用おわり)
2025年1月8日越山若水 おやつ
最新データ、知見盛り込む
2024年11月末に刊行された『かこさとし 新・絵でみる化学のせかい』5冊シリーズ刊行について、その経緯やこのシリーズに込めた加古の思いなどとともに、藤嶋昭先生による監修で、版を大きく新装した本書の特色などを紹介しています。
福井新聞 「かこさとし 新・絵でみる化学のせかい」
1