編集室より

2022年逝去された福音館書店相談役、名編集長であった松居直氏の言葉をかつての紙面から再録紹介する記事が掲載されました。

その中で加古の『万里の長城』(2011年福音館書店)を例に、出版を通じてアジア、中国との交流を大切にしてきたのは「戦争責任からです。過去を学ぶことなしに未来は見えてきません。」「十年、二十年、さらには百年先を考えて」本書を出版した意図について語る言葉には大変重いものがあります。

上は中国で出版されている版。

『万里の長城』出版までの長い道のりについては松居氏の長女、小風さちさんとの対談をまとめた『父の話をしましょうか〜加古さんと松居さん〜』(NPOブックスタート・下)に詳しい記述があります。

うさぎはお子さんたちも大好きなので、脇役として登場する絵本は沢山あります。

デビュー作品『だむのおじさんたち』(1959年福音館/復刊ドットコム)では、山奥で測量をする人を遠巻きに見るウサギがいることで画面が生き生きしています。

『ゆきのひ』(福音館書店)のこの場面はまさに「〽︎ウサギ追いし かの山」の様子で、「うさぎとりのわなをしかけ」るのを見ているうさぎ、逃げるものもいて、雪の降りやんだ青空が眩しく感じられます。

一方、下は『地球』(福音館書店)の一場面。きつねの様子を伺うウサギが木の根元にいます。
むしろここでは「うさぎのよこっとび」をご紹介したいと思われます。

『ことばのべんきょう』(福音館書店)は動物たちが人間と同じように暮らす様子を描き、小さいお子さんが言葉を覚えるための4冊シリーズの本ですが、ここでもうさぎちゃんたちが活躍します。

実際のウサギではないのですが題名にうさぎが出てくるのが『うさぎぐみとこぐまぐみ』(1980年ポプラ社)です。
「しんまちほいくえん」の「うさぎぐみ」は「こぐまぐみ」より小さい子たちの組で、そこにダウン症のショウタちゃんが入園してきました。ある日のこと、ショウタちゃんは「こぐまぐみ」の子たちが作っている砂場の山にジョウロで水をかけてしまいケンカが始まります。

止めにはいった「こぐまぐみ」のせいちゃんは一番力の強い子ですが、実はせいちゃんのお兄さんもダウン症で水をかけたショウタちゃんのことをかばったのです。このことをきっかけに、せいちゃんがお兄さん思いの優しい子だとみんなにわかりました。

保育園では色々なことがあって少しづつ大きくなってゆく子らの姿が描かれる「かこさとし こころのほんシリーズ」の第一巻です。SDGsという言葉が使われるはるか前に執筆されたものですが、まさにそれがテーマとなっています。

『からすのそばやさん』(2013年偕成社)

「おそばがご馳走?」と思った方もいらしゃるかもしれませんが、もりそばやかけそばだけでなく、次々にアイデアあふれる「そば」が誕生。「うさぎそば」はこのお正月にピッタリですね。

そばだけでなく、うどん、ラーメン、スパゲッティにパスタとお客さんのリクエストに応えるうちにそのメニューは無限に広がって、もはやそばやさんとは思えない品揃えで、これをご馳走と呼ばないわけにはいきません。

ちなみに『からすのそばやさん』は今年で開店10周年です。
紹介記事は以下でどうぞ。

お正月何食べる? 『からすのそばやさん』

あけましておめでとうございます。

新年恒例の干支探し。
卯年は『だるまちゃんとうさぎちゃん』(1972年福音館書店)の笑顔から始めましょう。

南天の赤い実を雪ウサギの目にしたり、松や竹を使ったウサギ雪だるまは縁起が良さそうでお正月にピッタリですね。

登場するのがうさぎと美味しそうなパンのみという絵本は『うさぎのパンやさんのいちにち』(2021年復刊ドットコム)です。
お店の制服や白衣姿のうさぎさんの可愛らしさと、パンの種類の多さが人気です。

白衣姿といえば、『くもとりやまののイノシシびょういん』の看護師のうさぎさんを忘れてはなりません。

不調やけがの患者さんに問診するイノシシ先生の温かみあふれる様子が魅力的で、看護師のうさぎさんも思いやりあふれています。心に効くお薬のような7つの小さなお話です。

2021年に刊行された本書はその年度のベスト新刊部門の第3位でした。(以下でどうぞ)

くもとりやまのイノシシびょういん

『パピプペポーおんがくかい』では、かわるがわるさまざまな動物が舞台で歌や踊りを披露しますが、うさぎちゃんたちは、その名も「パピプペポンマーチ」を」元気よく熱演。

このうさぎちゃんたちのように、笑顔で元気よく過ごせる一年となりますようご祈念申し上げます。

今年はコロナ禍ではあったものの全国各地で巡回展、「かこさとし おいしいもの展」(岐阜県・こども陶器博物館)そして渋谷 Bunkamuraで展示会を開催でき多くの皆様にご来場いただきました。改めて心より感謝お礼申し上げます。

出版に関してはBunkamura展示会の公式図録でもある『かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと』(平凡社)、かこさとしの姿を自身で投影させた絵本『カッコーはくしのだいぼうけん』(復刊ドットコム)をお届けすることができました。

オンライン講演会に加え、対面での講演会も再開できたことは本当に幸いで、会場の皆様から得難いエネルギーをいただきました。

遅まきながら8月よりTwitterを始めました。本サイトの更新情報に加え、Twitterのみで、かこ作品から時節にあった絵や写真などをご紹介いたしますので、引き続きお楽しみいただけたら幸いです。

どうぞお健やかに佳き新年をお迎えください。

藤沢市本庁舎1階のホールに、かこの絵を季節ごとに掛け替えご覧いただけるようになっています。

来年は卯年ということで、現在は『だるまちゃんとうさぎちゃん』の表紙、裏表紙の絵です。本の絵より大きく描かれた原画サイズのままです。

お近くにお越しの際は是非ご覧ください。

(1)に引き続き『かこさとし あそびの大星雲6 やすくておとくなあそび』(1992年農文協)からの話題です。

この本は上にあるようなダジャレたっぷりの場面もあれば、ねずみ講のしくみ、あやしい しょうばい、株の うりかい 証券ごっこ、けいえい ゲームなど、見出しを見るだけで大人も興味がわく内容です。

その中から「みっつの くにの けいざい せんそう」を全文ご紹介します。

(引用はじめ)
1
せきゆが でる ひろい さばくの くにと、
むぎが たくさん とれるのはらの くにと、
よい じどうしゃを つくる やまの くには
たがいに それぞれの できたものを うり、
ないものを かって なかよくしていました。

2
ところが やまの くにだけが だんだん
ゆたかになるので のこりの ふたつの くには
そうだんして、 やまの くにに うる ねだんを
たかくすることにしました。

3
やまの くにでは たちまち ものの ねだんが
あがったので、 みんなは せつやくして 
つかわないようにしました。
けれども たべものだけは どうしても いるので、
しかたなく たかい むぎを かったため、
つくっている じどうしゃの ねだんも たかくなりました。


4
さばくのくには じどうしゃが たかくなると
つかわないので、せきゆが うれず こまりました。
のはらの くにでも、むぎを はこぶ 
じどうしゃだいが たかくなり、せっかく
ねあげしたぶんの りえきが なくなってしまいました。

5
それで みっつの くにとも まえより くらしが
わるくなり、ひとびとが くるしみ
だんだん ふまんが おおきくなって とうとう
みっつの くにとも ほろびてしまいました。
(引用おわり)

値上げが続くこの頃、よく耳にするインフレ(ーション)。

子どもに説明するとき役立つのが『かこさとし あそびの大星雲6 やすくておとくなあそびーお金と経済のからくりー』(1992年農文協)です。
「パンツのインフレーション」という見出しで、分かりやすい例を用いて説明がされ、その最後はこのように結んでいます。

(引用はじめ)
このように いるものが すくなくて ねだんがあがり、かえなくなってしまう こまった ようすを インフレーションといいます。
(引用おわり)

インフレーションの次には、2020年11月6日の当サイト「編集室より」で取り上げた「えんぴつのデフレーション」の解説が続きます。

 『かこさとし 人と地球の不思議とともに』(2017年文藝別冊 KAWADE夢ムック)に「かこさとしの経済学ーその人と作品から」を寄稿している鈴木愛一郎はこの本(『やすくておとくなあそび』)の読者に向けて次のように語っています。

「なぜ自分の国だけで作らないで貿易をするのか?なぜのびる会社とおとろえる会社があるのか?なぜ望まなくてもインフレやデフレが起きるのか?・・そこにはこれまで人間の社会や歴史を動かしてきたお金の世界の大きなテーマがかくされています。この本(『やすくておとくなあそび』)にはそうしたテーマを考えるきっかけ、ヒントがたくさんつまっています。ぜひ、子どもも大人もいっしょになっていろいろ考えてみてください。」

2020年11月6日の当サイト「編集室より」は以下でどうぞ。

やすくて おとくなあそび

【さ】『サン・サン・サンタ ひみつきち』(1986年・2019年復刊ドットコム)

クリスマスにはこの一冊。しかしながら、クリスマスを迎えるために、北の果てにある秘密基地で人知れず行われている作業のお話でもあるので、一年中そばに置いておいて見ていたい絵本でもあります。

それはそれは沢山のおもちゃとオーロラが描かれた、かこさとし、とびきりのファンタジーをお楽しみください。

【と】『トントンとうさんとガミガミかあさん』(1982年・2005年ポプラ社)

トントンと扉をたたくお父さん、いつもはガミガミのお母さん。そのお母さんが病気になってしまって、お父さんは、トントンと野菜を切り食事つくりに精を出します。

そんなお父さんを見て小学生のともゆきくんと妹のさあちゃんは、入院したお母さんの代わりに家事をしようと思いお父さんから調理の仕方を教わります。

かこは、この本のあとがきで、家庭での食事つくりに関して次のように書いています。
(引用はじめ)
その結果として家族交流とだんらん、そして健康が確保されるのですから、それこそ時間や労力や金銭をさいても入手したい「すばらしいこと」と思います。
しかもそれは毎日、各家庭の台所で展開されるとき、かならず生活をともにしている子どもたちはその様子
に接します。その見聞、におい、ふんい気、手順、手さばき、そうした人間行動の背後にある心づかいや配慮、おもいやりや心くばりを食欲の満足とともにつよくふかくきざみつけます。これは料理の本や講習会でつたえられぬ家庭の教育の賜物です。
(引用おわり)

【し】『しっこのしんちゃん じまんのじいちゃん』(1985年ポプラ社)

かこさとしが、時代に先駆けて心の問題をテーマにしたシリーズの1冊で、オネショの悩みについて取り上げた異色の絵本です。
幼稚園に通うしんちゃんは、よくオネショをします。小学校に上がる前の夏休み、海のそばのおじいちゃん、おばあちゃんと暮らし、身体も心も強くたくましくなってオネショも卒業します。

「オネショは、子どもの心ばかりでなく、親の子どもに対する考えや生活態度を反省し検証する、とても大事な道しるべ」と、あとがきの言葉にあります。

最後の2冊に登場する祖父母による支えにも考えさせられます。

『かわいいみんなのあそび』『こどものげんきなあそび』『さわやかなたのしいあそび』『とってもすてきなあそび』『しらないふしぎなあそび』(2013年復刊ドットコム)の頭文字を読むと「か・こ・さ・と・し」になるのは、かこさとし遊びの本5冊シリーズです。

それにならい、寒い冬に心が温かくなるような「か・こ・さ・と・し」の絵本を2回に分けてご紹介します。

【か】『かわいいきろのクジラちゃん』』(2021年復刊ドットコム)

『かわいいきろのクジラちゃんは1985年同名でポプラ社から刊行されましたが、その年に全国障害者福祉財団「ふれあい紙芝居」として作ったものが元にもなっている、とあとがきにあります。

かこは自身が緑内障で視野が欠けた不自由を抱えながら半生を送り、最後はほとんど見えないほどだったこともあり「心身にハンデをもつ子に対しておもいやりのないいじめや、つめたい無関心が今なお横行しているのに、じっとしておられず」この作品に「おもいを托したのです」。

みんなと色の違う子クジラが、それを理由にいじめられ、かばってくれた母クジラ亡くし失望のどん底で星に願うことしかできませんでした。しかし夜が明けるとその願いが通じます。

あとがきの最後の言葉は次のようです。
「どうか、みんなの心に朝の光がさしてくるよう祈ります。かこさとし」

【こ】『こまったこぐま こまったこりす』(1986・2017年白泉社)

『こまったこぐま こまったこりす』は、自分ができることをしてあげることでみんなの「こまった」ことが解決できるお話です。

道に迷ってこまったこぐまが、喉が渇いているのに疲れて水を探せずこまったこりすを肩に乗せてあげます。すると目にゴミが入って痛くて飛べない小鳥に出会い、というように次々とこまった動物が行動を共にしてゆきます。

1986年偕成社から出版された時のあとがきの最後には次のようにあります。
(引用はじめ)
「明るく、はっきり、ゆったり」と立ち向かう大人の姿から子どもは生きる力をひとつひとつ学びとってゆくように、このお話のこぐまたちから困難をのりこえる力を読み取ってほしいと願います。
(引用おわり)

そして2017年の復刊に際しての言葉は次のように結ばれています。

(引用はじめ)
せめて子ども達に持っている力や才智に応じた共生助け合いの心と、未来に生きる情熱を持ってもらいたいと念じて、作ったのがこの作品です。その私の願いが今も変わらないのが、少しさみしい気がしている所です。愛読を感謝します。 かこさとし
(引用おわり)