編集室より

1986年に出版され、しばらくお手元に届きにくい状態だった『まほうのもりのブチブル・ベンベ』が、2023年11月にオンデマンド出版されました。

12月1日から越前市絵本館では、この本の最初の場面を展示しています。この物語に登場する子どもをご覧になられたら、その描き方が際立って珍しいと思われることでしょう。

それはこの物語がドイツの黒い森に伝わるお話を元にしているからです。この話が誕生した経緯が「あとがき」にありますので、どうぞお読みください。

あとがき  かこさとし

(引用はじめ)
私は今から10年前、ドイツのバンベルクと言う古い町に泊まったことがあります。ホテルや旅館と言うより「はたご」と呼びたいような、ガッシリした古い宿の家族全員が、総出で私たちを迎えてくれたのに、同行の人たちは夕食にみんな外出してしまいました。遅れてロビーに来た私は、がっかりしている宿の夫婦や2人の子を見て、外での外食をやめ、言い訳をして、持参した私の絵本をその子に贈りました。

さぁ、それから私と家族4人が、10人分以上のご馳走を囲んでの夕食がはじまり、ご主人は、次々秘蔵のお酒やくん製を惜し気もなく出してくれました。やがて戻ってきた同行者を交え、夜明けまで楽しい会がつづきました。この夜の楽しさとその時、かわいい下の男の子が、私に話してくれた黒い森の話が、今も忘れられません。

このベンベのお話は、その黒い森のお話をもとにつくりました。あの時のご主人やおかみさん、そして2人の子は元気でしょうか。お礼を込めて、皆さんにお知らせします。
(引用おわり)

下の絵は前扉です。