編集室より

童話集6ー8巻は生活のなかのお話です。

6巻にあるのは
「まりちゃんの一週間」 日記風の異色な短い作品です。小学校2年生の「まりちゃんのみたこと、きいたこと、かんじたこと」という想定でが書かれていますが、その内容は世相を反映しています。
「ブン屋のブン一」加古が小学生の時の同級生がモデルになっている実話です。

7巻には小さいお子さんたちのために数を意識した作品が多くあります。
「ひとりとひとつ」は下の挿絵がある「ひとりとひとつ、ふたりとふたつ」より、さらに小さいお子さん向けのお話です。
「ひとつじのことば」は「蚊」(か) のように一文字で一つの言葉になっているものについてです。
「1、2の3ちゃん 1、2のさんぽ」はSDGs関連の作品です。
「いたずらポンコツ6にんぐみ」 6にんのいたずらっ子とポンコツおじいさんの愉快なお話で、このおじいさんには加古の面影が重なります。

8巻にあるのは
「なきむし三重奏」題名を見ただけで光景が想像できますが、中島加名のイラストも泣き顔のオンパレードです。最後はいったいどうなるのでしょう? 赤ちゃんや小さな子どもの大泣きに悩む大人の方にも共感していただけそうです。

第9・10巻は「世界のおはなし」ですが、その中にも題名に数字が入っているものが多くあります。

「七人のこども」アフリカ・ギニアの昔話。しっかりものの母には七人の子どもがいて、そのうち一人だけが女の子でやがて結婚をすることになったのですが⋯
「二匹のかえる」 アメリカ先住民のお話で二匹のカエルが競った結果、私たちがよく知るものになりました。
「メン鶏と三羽のひよこ」 9巻の表紙にある絵はこのお話の挿絵です。苗族の古いお話の結末には胸がすく思いがします。

「九つの枝角の鹿」(上)弓の名手の若者と九つの枝角を持つ鹿との不思議な出会いを伝える西アジア・アラジャのお話です。
「家を守る三人の神」 ベトナムの人々が家を守る神とあがめる三人の由来にまつわる古いお話は、せつなく、心に残ります。
「五つの太陽とケツァル鳥」メキシコの伝説と歴史が交錯する不思議を感じるお話です。
この巻には「イワン」のお話が5篇ありますが、その中に「百姓の子イワン」というお話もあります。

10巻に収められている「九つの教えナワ・ユーパの話」と「五姿の教えピンサッ・ユーパ」、は現在でもその教えを伝える絵をビルマで見ることができるそうです。

「五人のとうぞく」(上)砂漠を舞台に繰り広げられるアラビアの昔話で、思いがけない結末を迎えます。
「とらと三人のむすめ」(下) 朝鮮半島に伝わるこのお話は「ちえとゆうきとかんがえのある三人のむすめ」の大手柄で終わります。

童話集全246話の中から題名に数字や数のつくものを取り上げてご紹介しました。

『おたまじゃくしの101ちゃん』のように数多くが登場するものはありませんが、たくさんの種類のアイスクリームが並ぶ第1巻の「こぶたのアイス さあどうぞ」や祖先をたどるような7巻の「おじいさんのおじいさん おばあさんのおばあさん」や、いつ終わるともしれない「長いながアいおはなし」もあります。

お気に入りをみつけていただけたら嬉しいです。

越前市にある武生(たけふ)中央公園は加古の絵本の世界がそこかしこにあり、お子さんから大人までゆっくり楽しめる場所です。無料で遊べる施設が盛りだくさんで、山を眺めながら広々した公園で深呼吸すれば、元気がでます。

このほど新しいパンフレットが出来上がりました!
ゴールデンウィークにお出かけしたいと思っていらっしゃる方、是非ご活用ください。

武生中央公園 パンフレット

公園案内は以下でどうぞ。

武生中央公園案内

(新江ノ島水族館で取材中の様子。実際にはくらげのために暗くしてあります。)

2023年12月にNHKニュースで放映され大きな反響をいただいた「くらげのパポちゃん」が出版されることになりました。来春の出版を目指して進行中です。ご期待ください。

くらげのパポちゃん 出版

くらげのパポちゃん出版決定

くらげのパポちゃん出版

聞き逃した方は以下のページからお聴きいただけます。(【にっぽん列島夕方ラジオ】はま⭐︎キラ!の「このページで再生」をクリックしてお聴きください。)

はま⭐︎キラ!

2024年3月31日は加古の生誕98周年ということで、以下2つのニュースとして取り上げていただきました。

1つは、『だるまちゃん・りんごんちゃん』(2003年/2013年瑞雲舎)のご縁がある、飯田市・図書館です。

飯田市図書館 『だるまちゃん・りんごんちゃん』

もう1つは高知県にある「ゆすはら雲上の図書館」が、今日の一冊として『かこさとし あそびの大事典大宇宙編』(2015年農文協)を紹介してくださいました。

あそびの大事典

かこさとし童話集全10巻には246のお話が収録されています。
その中には数が題名についているものがたくさんあります。1巻から見てみましょう。

「なごや ななわの ひよこたち」(下の絵)ひよこ7羽が大騒ぎ。そのやかましいことと言ったら⋯思わず笑いが出てきます。

「みつ山の かやねずみ」かやねずみは日本にいる一番小さなネズミで、稲科の植物が多いところにすんでいるそうです。そんな小さなこねずみが三つの山を目指します。

「さんびき ちょんちょん はりねずみ」その1でご紹介した同名の紙芝居をお話にしたものです。「みつ山のかやねずみ」に似ているお話ですが、背中にハリのあるハリネズミ親子のお話です。

「あひるのがっこの一年生」三羽のアヒルの子が一年生になって学校での勉強が始まります。新一年生に贈りたいお話です。

「こいぬ六ぴきワンワンワン」「かわいいこいぬが 六ぴきもいますね。」という出だしで、それはそれはワンワンワンの大騒ぎの連続です。

2巻も動物のお話が続きます。
「三年三組のおばけ大会」夏休みの前に開かれる評判の「おばけ大会」。今年の出し物は⋯

「冷たい一日」これは絵本『たろうがらす じろうがらす』のお話版です。はじめての雪に嬉しくなってはしゃいだからすの兄弟でしたが⋯

「四ひきのこぶた」(下の絵)その1でご紹介した絵本『こぶた四ひきちんちろりん』(上)と同じお話ですが挿絵は絵本とは異なる雰囲気があります。

3巻には1作品のみ数字が題名に入っているお話があります。
「四ひきのコアラプちゃんのあそび」絵本になった上記2作品を除き、本作も童話集で初めて発表された作品です。4ひきのかわいいコアラ兄弟が登場、中島加名による挿絵です。

4・5巻は日本のむかしばなしです。
4巻(上)には
「二人の男と白い船」定めを破って漁にでた二人が出会った不思議な体験が伝えられます。

「二人の旅人」二人の見知らぬ旅人が見た同じ夢。年長の旅人にその夢を買わせてくれと頼む若い旅人。さて二人の運命は⋯

「三人きょうだいと七首龍」次々に家族を失いついには三兄弟のみになってしまいました。この三人が家族の死の原因は七首龍の仕業と知り退治に向かいます。

他に「九頭竜のお話」もあり、5巻(下)には
「かきの木 一本 かき一つ」加古が大好きだった柿の木とその実のお話。山にあった、たったた1本の柿の木にやってくる動物たち。やがてその柿の木は⋯

「さんにんのさささ忍者」後に滋賀、甲賀、伊賀で忍者を育てることになった三兄弟の若い頃のお話です。

6〜10巻の作品については次回に続きます。

円周率 3.14

投稿日時 2024/03/11

円の周りは直径の3.14倍と習ったのは小学生の時。

3月14日は、パイπの日。なるほどです。πというのはギリシャ語の「周」を意味する単語の頭文字をとって「パイ」とよぶように」なったと『こどもの行事 しぜんと生活 3月のまき』(2012年小峰書店)にあります。

この本によると紀元前2000年頃、古代バビロニアの粘土版に、そして紀元前1800年頃の古代エジプトのパピルスにすでに記録があるそうです。そして古代ギリシャのアルキメデス(紀元前3世紀頃)は、22/7 つまり3.14286と計算したそうです。

円周率はキリが良ければ簡単ですが、そうではないので歴史が始まってから多くの学者が正確な値を追求してきました。その後もプトレマイオス、祖沖之(そちゅうし)、アリヤバータ、日本人の松村茂清、関孝和が得た円周率がわかりやすい絵と表で紹介されています。

現在ではコンピューターにより30兆以上の桁まで求められているそうですが、実際に使われる際には3.1416ぐらいだそうです。『新装版 科学者の目』(2019年童心社)によれば、その数値をいち早く計算したのは、アルキメデス同様の方法で、しかし独自に約率22/7、蜜率355/113を算出した中国の祖沖之(429-500)とあります。

この人のえらさを加古は次のように書いています。
(引用はじめ)
たんに古い時代にπの値を細かに求めたことにあるのではなく、実際に必要な範囲を見きわめ、約率と密率という二種の値を提出した点、そこに科学者の目を働かしたところだとわたしは考えている。
(引用おわり)

2024年3月5日より都営地下鉄三田線にも、「だるまちゃん」シリーズのデザインが装飾された子育て応援スペース設置車両が運行となりました。
これで都営地下鉄全線に「だるまちゃん」シリーズの応援スペースが誕生しました。

写真提供:福音館書店

子育て応援スペースのある車両の運行状況は都営地下鉄のサイトでご確認ください。(「だるまちゃん」シリーズ以外の装飾の場合もあります)

都営地下鉄子育て応援スペース

風の日の遊びー凧上げー

投稿日時 2024/03/03

5・6歳の頃の加古に「どんな遊びが好き?」と尋ねたらきっと「凧上げ」と答えたに違いありません。凧上げが大好きだったことは本人の口から何度も聞いたものでした。(上の絵は『かぜのひのおはなし』(小峰書店)

2024年1月22日に山口新聞「こども心の本箱」でご紹介いただいた『たこ』(1975年福音館書店)の初版に折り込まれていた付録にもその思い出を詳細に書き綴っています。

『たこ』その1

『たこ』その2

こどもは風の子と言われたのは昭和時代も半ばまででしょうか。その頃は、雨が上がるかどうかのうちに子どもは外に飛び出してきて遊びましたし、風が強くて縄跳びの大縄がゆがんで回ってもそれを面白がって対応しながらとんだりはねたりしたものです。

令和の子どもたちは天候などに左右されずに遊んでいるのでしょうか。

確かに加古少年がしていたような河原の向こう岸にまで届くような凧上げができる場所は限られてしまいそうです。しかし、レジ袋を解体して作るほんの小さな、ヒモや糸の長さが1、2メートルほどのぐにゃぐにゃ凧でも風を受けて上がると、それこそ気分も上がります。

なぜだかわかりませんが、楽しいのです。年齢問わず笑顔になれます。風の日には是非お試しください!

上・下の写真はあそびの大惑星8『あんただれさ どこさのあそび』(1992年農文協)より

昨年出版50周年を迎えた『おたまじゃくしの101ちゃん』(1973年偕成社)ですが、その元になった手描き紙芝居の題名は「いちべえぬまのだいじけん」でした。

加古がその紙芝居を川崎セツルメントの子どもたちに見せているうちに「101ちゃんの紙芝居を見せて」と言われるようになり、いつの間にか「101ちゃん」とばれるようになったと絵本のあとがきに書かれています。

出版された絵本としては、「ことばのべんきょう」シリーズ『くまちゃんのいちにち』『くまちゃんのいちねん」』(いずれも1970年福音館書店)、『うさぎのパンやさんのいちにち』(2021年復刊ドットコム)や2023年にオンデマンド出版された*『こぶた四ひきちんちろりん』があります。

手描き紙芝居では、マザーグースを参考に日本版にした「一ぽんあし ニほんあし 三ぼんあし そして四ほんあし」(1951年)があり、これは数詞の言い方が異なる音になることにも注意を喚起しつつ、同じセリフが2回繰り返されるというユニークな作品で、詳しくは『こどものげんきなあそび』(2013年復刊ドットコム)に掲載されています。

同じく手描き紙芝居では1953年作の「二つの太陽」、1955年作成のアンデルセン童話から「5つのエンドウ豆」、1962年に加古の創作「4ひきのからす」があります。

出版された紙芝居では年代順に
「いにちにのさっちゃん」「ひよこのろくちゃん」(いずれも1975年童心社)
「6月6ちゃん はっはっは」(1978年童心社)
「みんなげんきピヨピヨ1・2」(1979年童心社)
「五にんめのぼく」(1987年心身障害児福祉財団)
*「さんびきちょんちょんはりねずみ」(1996年心身障害児福祉財団)

手描きのものも含めて全紙芝居ついては『かこさとしと紙芝居 ー創作の原点ー』(2021年童心社)に表紙絵、あらすじ、解説がありますので是非ご覧ください。

なお題名に*がついているものは『かこさとし童話集』全10巻(2023・2024年 偕成社)にお話として収録されています。

「五にんめのぼく」は一人っ子の男の子が将来なりたい「ぼく」を想像します。
最後の「五にんめのぼく」は現実の「ぼく」で「車椅子の運転手」としての生活が始まります。SDGsについて考えるのに大変適した作品です。

小さいお子さん向けの絵本や紙芝居なので大きな数が登場するのは珍しく、おたまじゃくしだからこそ10匹、20匹ではなく101匹が絵本の中でも泳ぐことになったのでしょう。
もう少しで、おたまじゃくしの季節がやってきます。