編集室より

1987(昭和62)年、当時の環境庁が開催した「環境管理シンポジウム」で加古が行った貴重講演「子供の遊び」の後半を2回に分けてご紹介しています。その2回目です。

(引用はじめ)
よく遊びの効用として、協調性の醸成、運動能力の向上などが言われる。しかし、遊びは偶然であり、無駄であり、必ずしも良い結果に至るとは限らない。唯一得られるものは「自立」である。

遊びの世界に大人が出てくることには問題がある。
「ケンちゃんあなたはまだ小さくて危ないから”けんぱ”にしなさいって言ったのに、どうして”けんけんぱ”をするの!」といらざることをしたりする。

子供同士であれば「あんなお姉ちゃんにもできるんだから僕もがんばろう」と幼い子供もやる気を起こす。大人がやっていることではないから、不確定であり、変化が生まれる。変化は、他の子供たちの支持があれば、一つの形になる。支持は、たのしみ、よろこび、かなしみといった生活感情、感性から起こるものである。

遊びの条件を3つ挙げるならば、まず第1は「広さ」である。子供は成長していく生き物であり、よじ登ったり、かけ巡ったりする必要がある。したがって、子供に必要なのは「外遊び」である。そのためには、子供一人当たり最低10平方メートルの土地が必要であるが、現状は0.2から0.6平方メートルである。一方、ゴルフクラブの会員は全国に2、000万人おり、一人当たりのコース面積は、約470平方メートルである。

第2に必要なのは「自然」それも子供が入っていける身近な自然である。自然は、人間に恵みを与えてくれる一方、過酷な面も持っている。また、誰に対しても同じように振舞う。自然は、両刃性と中立性を持っている。子供にとっては雑草が生えており、昆虫や小動物がいる身近な原っぱが必要なのである。

第3はこうした「広さ」と「自然」が「生活の場」としてあることである。
環境管理といった大きなテーマとどう関係があるのかと言われそうだが、こうしたささやかなことすらできずに、なんで世界や日本の大きな環境管理が解決できようか。
(引用おわり)

上の絵は『こどものあそびずかん はるのまき』と同『なつのまき』(いずれも2014年小峰書店)、
下の絵は同『なつのまき』より。