編集室より

二月は逃げる、と言われます。1月や3月など31日ある月もあるのに何故2月だけが28日なのか、子どもならずとも不思議に思いますが、なかなかきちんとした説明ができないものです。

しかも、今年はうるう年。2月29日に生まれたら誕生日は4年に1回なの?そんな疑問にも、やさしく答えてくれるのが『こどもの行事 しぜんと生活 2月のまき』です。

「令和」命名とも関係する令月(れいげつ)・麗月、梅見月(うめみづき)、如月・衣更着(きさらぎ)などに加え、この本の冒頭の「2月の別のいいかた」(日本)には、短月(日数がすくなく、はやくすぎる月)も紹介されています。

「ふるいこよみ、あたらしい暦」「うるう年、うるうの日(2月29日)」「2月がみじかいのはなぜ?」「一週間が七日のわけ」という項目で、図をふんだんに使い順を追って説明してあるので、お子さんにもわかりやすい内容です。

「2月あとがき 新旧の暦と天体のうごき」

(引用はじめ)

カレンダーや学校の行事など、みな太陽暦(新暦)なのに、各地の行事の中には、旧暦やひと月おくれで行われているものがあります。すべて新暦にすればいいのにと言う意見もあります。

むかしの人たちは、月のみちかけを用いて昼と夜の時間や四季の変化をたくみにはかり、まちがいのないよう工夫をして、農耕や生活を実行していました。

この旧暦と新暦の関係と違いを知ることは、太陽・地球・月のうごきをただしく知る機会となります。むかしの暦などとおもわずに、宇宙と人間の生活をかんがえるきっかけにしましょう。
(引用おわり)
(縦書きで漢字には全てふりがながあります。)

上は、雪消月(ゆきげづき)言い方もある2月、あとがきに添えられた絵です。

2020/01/29

キジムナ

『だるまちゃんとキジムナちゃん』は2018年三作同時出版された「だるまちゃんシリーズ」の一冊です。間も無く92歳の誕生日を迎えようという、かこがテレビや新聞のインタビューでこの作品に込めた思いを語っていたように、あとがきにもありますが、戦後からの状況が未だに続く沖縄にエールを送りたいという気持ちを著したものです。

ご存知のように「だるまちゃん」シリーズはそのお相手を日本の郷土玩具に求めていますが、キジムナちゃんも他のお相手同様長い時間をかけて、かこが調べ温めていました。1991年刊行の『かこさとし あそびの大惑星4いちぬけた にいにげた のあそび』(農文協・下)に、すでに[おきなわキジムナーたちのあそび]という項目があり、「キジムナーは、おきなわのこどもたちの よいあそびなかまです」として、ヤラブやアダンといった沖縄独特の植物を利用した遊びの数々を紹介しています。

「おにごっこ・・・カチミンソーリー
 かくれんぼ・・・クワッキソーリー
 ちゃんばら・・・タタカイグアーセー
といいます。」と言った記述もあります。

『だるまちゃんしんぶん』(2016年福音館書店)には「おきなわ キジムナちゃん ほうもん」というコーナーがあり、だるまちゃんが報告しています。それによるとキジムナちゃんの嫌いなものは、にわとりの声と飛行機の音だそうです。

2020年1月12日琉球新報朝刊には、こんなクイズが掲載されました。

沖縄を舞台にした絵本「だるまちゃんとキジムナちゃん」を発刊した作家は誰かな?

三人の作家の名前から選ぶというもので、はなれた紙面にある答えには、絵本の内容が簡単に紹介されています。昨年は首里城の悲しい出来事もありました。キジムナちゃんは今頃どんなことを思っているのでしょうか。

2020年2月1日から始まる八王子市夢美術館での全国巡回展では、『だるまちゃんとキジムナちゃん』の原画もご覧いただけます。

8月29日に福井県越前市で開幕

寒中ですが、真夏の情報です。
かこさとしの生まれ故郷、福井県越前市でこの夏、紙芝居まつりが開かれます。開会式会場の文化センターに面している武生中央公園のだるまちゃん広場には紙芝居を楽しめるような仕掛けがありますし、この春には新たな台も加わる予定です。

ところで、ロンドンのハイドパークには「スピーカーズコーナー」という場所があって、日曜日の午後には、ここで自由に自分の意見を述べることができます。特別な縁台があるわけではなく、自分で持ってきた木箱などに立って、自由に語り、聴衆とやりとりをすることができます。

紙芝居を持ってきてそんな風に自由に演じ自由に見て楽しめたらという思いを込めて、武生中央公園の監修にあたり、紙芝居ができる仕掛けを設けていただきました。かこさとしが30代はじめの頃、川崎の多摩川の土手や子どもたちが集まる、通称三角公園で演じていた野外紙芝居。生の声で直接語りかける紙芝居の魅力は、電気を通して聞こえてくるものとは違うものがあります。

この夏はふらっと紙芝居、そんな贅沢をお楽しみください。
大会に関しての記事は以下で。

紙芝居大会

2020/01/22

受験シーズン

かこさとしが民間会社を辞めた後、1973(昭和48)年から1982(昭和57)年まで民放テレビの昼間の時間帯、奥様向けニュース番組の中で教育に関するミニコーナーを受け持っていました。月一回程度で99回出演して子どもの成長、生活や教育に関してのコメンテーターとしてその内容は多岐にわたりました。

受験シーズンになると、天神様として知られる菅原道真公の素晴らしさを紹介したりしていました。中でも印象的だったのが、アインシュタインの回。(上は『科学者の目』のアインシュタインの項目)

大天才と言われるアインシュタインは実はテストに失敗したことがあったのです。深く考えすぎて時間内に答案が書けなかったからでした。

目指す学校や大学の入学試験に合格できるに越したことはありませんが、競争があり全員が合格とはいかないので、受験で思うような結果を得られなかった方へのかこさとしなりの励ましであり、合格だけが成功ではないと伝えたかったのでしょう。

梅の花が咲き始め、「東風吹かば 思いおこせよ 梅の花 」の和歌をかみしめつつ受験生のご健闘をお祈りしています。

下は、菅原道真の人格、品性を敬い 「簡素清廉な気質と温厚な態度」、「詩心」ある生涯を想い作った『だるまちゃんとてんじんちゃん』(2003年福音館書店)

77万年前の「逆転層」

2020年1月17日、地質年代の正式名称に日本にちなんだ初めての名称「チバニアン」が決定されました。
2016年に発刊された『出発進行!里山トロッコ列車』では命名の審議中ではありましたが、かこはその重要性を考え、上記のような見出しで、詳しい地図や図とともに説明し「地球の貴重な逆転層が、月崎駅東の山中にあるのです」としています。
まずはこの絵本で、そしてトロッコ列車に乗って、地球の不思議に出会って下さい。

藤沢駅周辺で加古の複製画が見られる場所としておなじみになってきた藤沢市南図書館(小田急湘南ゲート6階)では新しい4枚の額が新年から飾られています。

2019年NHK「日曜美術館」で放映され話題となった『たべもののたび』と同じ、かこさとし からだの本シリーズの『てとてとゆびと』(1977年童心社)、手を動かして使う道具のお話で手斧始めにちなみ『まさかりどんが さあたいへん』(1996年小峰書店)、きっと懐かしいと思われる『だるまちゃんとうさぎちゃん』(1972年 福音館書店)。

そして昨年の巡回展で注目していただいた『ならの大仏さま』(2006年復刊ドットコム・下)は『宇宙』『人間』『ピラミッド』『万里の長城』に並ぶ壮大なスケールの大型絵本で大人の方々にもお読みいただきたい内容です。東大寺で貴重な資料を拝見し工学部出身の強みを活かし、かこが学術的な調査をした上で執筆した本格的なものです。

藤沢市役所本庁舎のホールには、小さなお子さんも楽しめる『ことばのべんきょう くまちゃんのいちねん』(1971年 福音館書店・上)の冬らしい一場面を展示しています。この内容の展示は2月末頃までの予定です。
お近くに行かれましたら、是非ご覧下さい。

この場面で終わった前回のお約束通り、お餅がテーマです。『こどもの行事 しぜんと生活 1がつのまき』(2011年小峰書店・下)には、各地のお雑煮がならび、味付けや具材、そして丸もちなのか角もちなのかが◯ 🔲で描かれ、なぜお正月にお雑煮が食べられるのか説明があります。

それによると
「むかしの人にとって、もちはながいあいだくさらずにおいしくたべられるので、たいせつなたべものでした」
とあります。

臼と杵でついた、つきたてのお餅の美味しさは格別ですが、かこが杵を振り上げてついたことが一度だけあったのを覚えています。ちょうど上の絵、『ことばのべんきょうくまちゃんのいちねん』(1971年福音館)にあるような感じ、かこの母が餅をこねて、今から半世紀以上も前のことですが、その石臼は今でも庭の片隅にあります。

『かこさとしのたべものえほん1 ごはんですよ おもちですよ』(1987年農文協・下)という絵本もあります。絵はかこによるものではありませんが、この本でも杵つき、のしもち、鏡もち、草餅、ちまき等が描かれ、お米の作り方、お米を使った料理メニューも紹介されています。

筆者が小学生だった半世紀も前、お雑煮にお餅をいくつ入れたとか、お餅を幾つ食べたとか、数を友だちと競っていたことがありました。

真空パックのお供え餅やのし餅が登場する前は、ヒビの入った鏡餅をわるのに苦労したり、のし餅を切って水もちにして保存していたかこの姿が記憶に残っています。

かこ作品の中でお餅と言ったら一番に思いつくのは、下の場面かもしれません。
だるまどんが湯気をふきながら「ぺったら ぺったんおもちをついて」

できあがあったのは、てんぐちゃんの鼻にも負けない長〜い鼻。おばあちゃんが伸ばしている(下)これから作ったのでしょうか。。。?

最後にもう一つ、忘れてはなりません。『からすのパンやさん』のパンがずらりと並んだあの場面にもありましたね、おそなえパン。

2020/01/01

ネズミ

明けましておめでとうございます

2020年は干支頭のネズミ年にあたりますので、ネズミ探しから始めましょう。
おめでたいイメージの『だるまちゃんとだいこくちゃん』では、この二人の様子を見守り、一緒になって心配したり喜んだりで、ネズミちゃんは愛らしさ満点です。

『たっくんひろちゃんの ちょうちょうとっきゅう』(1973年小峰書店)の表紙(上)で列車の先頭、お話の中(下)では最後尾にいるねずみくんは、小さいながら大きな表情で物語を盛り上げています。

『にんじんばたけのパピプペポ』(1973年偕成社)では、こぶたたちから人参を取り上げる悪役として「ねずみどん」が登場しますが、最後には、にんじんをもらってすっかり元気になり手伝いに精をだします(下)。

その続編『パピプペポーおんがくかい』(2014年偕成社)では、ねずみの「チマちゃん」がなわとびで見事な飛びっぷりを披露している姿に目が釘付けです。

『ことばのべんきょう 1 くまちゃんのいちにち』のねずみちゃんは猫にじゃんけんで勝ったり、大きなうさぎさんを泣かせたり、イタズラですが憎めません。

ネズミが主役の絵本の筆頭は残念ながら絶版の『ねずみのしょうぼうたい』(1985年 偕成社・下)です。

このネズミたちの表情は非常に説得力があり、その目力は大変なものです。小学生の頃から火災予防のポスターを描いては賞をいただいていたという、かこさとしだけあって迫力があります。

紙芝居にもネズミが主人公のものがあります。『バンちゃんねずみとミミンガー』(1986年全国心身障害児福祉財団・1995年『ばんちゃんの大ぼうけん』に改題、表紙を含めて14場面・下)は、お父さんお母さんの言うことを聞かないねずみのバンちゃんが怖いミミズクのミミンガーに遭遇。ところがそのミミズクは目がわるく怖いどころか、不思議な木の葉をくれます。バンちゃんはその葉の力でみんなを助け、めでたし、めでたしというお話です。

『ばあばねずみじいじねずみ』(2001年全国心身障害児福祉財団、表紙を含めて12場面・下)は、かこ自身がじいじと呼ばれるようになった頃の作品で、年老いたねずみ夫婦がのんびり旅を始めるのですが最後に思いもよらぬ大ぼうけんをして安住の地を見つける物語です。

人間で描くとえげつなくなってしまうのでネズミに任せている物語もあります。「かこさとし お話こんにちは」という各月ごと12ヶ月にちなんだ絵入の読み物シリーズが1979年偕成社から出版されました。現在は絶版ですが、この4月の巻(上)におさめらている、長屋の花見ならぬ「ねずみの花見」(下)は、大賑わいのねずみたちが登場。

同シリーズ12月の巻には「ふとっちょネズミ」。この主人公ふとっちょネズミは、会社の社長で、金儲けの悪巧みに使う社員を募集。どちらのお話も猫が登場してオチとなります。

クマにしてもネズミにしても実際は人間に害を及ぼすこともあるわけですが、物語や絵本では、どうしてこんなに可愛くなってしまうのでしょう。

画面がねずみ色になってきてしまいましたが、最期の一枚、下の絵はおそらく1980年代に描かれた5センチ四方に満たない小さな挿絵、ネズミの餅つきです。ということで、次回はお餅をテーマにご紹介致します。

上は1970年代前半にかこさとしが描いた小さな自画像ですが、この度かこさとし49歳(1975年)の肖像写真が一冊の写真集に収められました。写真家・田村茂氏による『素顔の文士たち』(2019年河出書房新社・下)。膨大なネガから八年の歳月をかけて、田村眞生さんが茂氏三十三回忌に当たる本年出版されたものです。

あとがきによると茂氏は、この写真集の表紙を飾る太宰治の写真を撮影したことで知られていますが、それが代表作ではないとのこと。本の帯には〈骨太で存在感あふれる昭和の「顔」〉とあります。

志賀直哉、藤田嗣治、牧野富太郎、松本清張、三島由紀夫、湯川秀樹、川端康成、高村光太郎、谷崎潤一郎、手塚治虫、武者小路実篤。。。名前をあげればきりがない八十人の文士たちの顔には、今の時代には見かけない何かがあり、見入ってしまうほど惹きつけられます。

手にしているもの、着ているもの、背景、それら全てが、そこにいる人を知る手がかかりになりますが、その顔にまさるものはありません。モノクロの世界でありながらその陰影には色では伝えられないものを表現しているから不思議です。

写真のかこはいつもの書斎に座り、右手にペン、ブリューゲルの画集をひろげ模写しているのは1560年に描かれた「子供の遊戯」。その絵はその年1975年8月に出版された『こどものカレンダー9がつのまき』(偕成社・下)9月5日のページに掲載されています。その日はオランダのブリューゲル村出身でその名を名乗ったブリューゲルの命日です。本文には次のようにあります。(原文はたてがき、漢数字にはふりがな)

(引用はじめ)
いまから 四00ねんも まえにえがかれた こどもたちの あそびの えをまねて えがきました。

いろいろなあそびが あって おもしろいでしょう。
あなたが している あそびと おなじのが ありますか?
(引用おわり)

最後の二文は遊ぶこどもの姿の隙間を縫うように書かれています。
ブリューゲルの画面には木登りをする男の子、鉄棒、竹馬、箒を手のひらの上に立たせてバランスをとっている子、馬とび、鬼ごっこ、お手玉、おみこしとおおよそ子どもたちがやりそうなことが描きこまれています。かこはそれらを模写しながら、きっとニヤニヤして「ああ、やっとる、やっとる」と心のなかで繰り返していたことでしょう。

写真集の中のかこの瞳はサラリーマンを退職し、これから思い切り創作に向かう意気込みで光っています。緑内障で見えなくなる前のこの輝きを見ていると胸があつくなってきます。機会がありましたら是非この写真集を手にとってご覧下さい。私の言葉では伝えきれない多くがそこにはあります。

今年も多くの皆様にお世話になりありがとうございました。十大ニュースではありませんが、たくさんの初めてがあった2019年を振り返ります。

初めての詩集『ありちゃん あいうえお(講談社)出版

大正15年に生まれ昭和、平成を生きたかこにとって、かこさとしの名前で出版する最初の詩集のお話をいただいたのは、亡くなる直前でした。

いつ何時でも言葉を探し、拾い集め、楽しんでいた、かこの「あいうえお」は小さなお子さんが耳で覚えてしまい、わざわざ「あいうえお」を覚えさせなくても大丈夫との反響をいただきました。読み聞かせ、読み語りの第一歩におすすめです。

孫が可愛くて仕方ない「おじいちゃん」の気持ちを書き留めた詩は、あなたの心にどのように響くでしょうか。

初めての全国巡回展・公式図録

かこの存命中から打ち合わせをしていた全国巡回展をいよいよ始めることができました。
3月、生まれ故郷の福井県越前市を皮切りに夏にはひろしま美術館、そして秋、大丸ミュージアム京都を巡り、大勢の皆様がご来場、熱心にご覧くださいました。2020年は、八王子市夢美術館、松坂屋美術館(名古屋)をはじめ各地を巡る予定です。

初めての美術番組 NHK「日曜美術館」

多くの教育番組やニュースに登場させていただいた、かこですが「日曜美術館」に、しかも美術というより科学に関しての生命図譜(上・撮影スタジオにて)に焦点を当てて取り上げていただくという大変ユニークな構成となりました。

ユニークといえば、NHK「サラメシ」で思い出いっぱいのお弁当が紹介されたのも今年でした。

初めてのDVD発売

2018年にNHKで放映された「プロフェッショナル」がDVD化され発売されました。かこ史上初めてのDVD発売です。特典映像として番組の中で登場した『みずとはなんじゃ?』が出版された時のニュース映像も入っています。

初めての、かこのいないお正月

2019年の年頭は、新年の晴れやかさも遠い世界のことのようで加古総合研究所では『かこさとしの世界』のための写真撮影が進んでいました。例年なら、床の間にお正月飾りをしつらえ、お屠蘇で祝い記念写真を撮影するのが元日の慣わしです。それは叶いませんでしたが、こうしてこの一年、初めてのいろいろなことができたのは、かこさとしの作品を愛してくださる多くの皆様のおかげです。この一年を振り返り心より感謝もうしあげます。どうか皆様、佳き新年をお迎えください。