編集室より

絵本の絵はほとんどが加古自身によりますが、稀に写真で構成されているものがあります。
『わたしのかわいいナミちゃん』(1987年ポプラ社)は、犬のナミちゃんだけでなく、飼い主の加古と一家が写真で登場しています。

個人情報満載(?!)のこの本は、1970年に加古が藤沢に転居したお祝いに同僚の方が持ってきてくださった生まれたばかりの柴犬ナミちゃんの成長物語です。そして長寿犬として最後を迎える時までを描く家族の歴史でもあります。

加古は自分が後に絵本を作ることができるようになるとは夢にもおもっていなかった20代の半ば、セツルメント活動を始めた頃、子どもたちが小学校に通う様子を見てそのような写真と絵を組み合わせた紙芝居を作ろうと考えていたようです。

童話集1巻にある「かえるのがっこう」の第1場面には、写真を使う予定だったということがメモによってわかります。

童話集6巻の「おとうさんのくつは おおきいね」は川崎に住んでいた頃の家族が写真で登場します。加古は30代、当時は大きな加古の足に合う靴が売っていなかったので、近くの靴屋さんであつらえていました。

絵ではなく写真を使った1962年の作品を童話集刊行でようやく皆様にご覧いただけるようになりました。小さなモノクロ写真の中ですが、若かりし頃の加古の笑顔をご覧ください。