編集室より

2022/07/19

展示会で原画を見ていただける機会がありましたら紙にも注目していただくと面白いかもしれません。

かこは特別な画材を使うことはありませんでしたので、絵の具にしろ紙にしろ、身近な文房具屋さんに置いてあるようなものを使っていました。


ケント紙に描くことが多かったと思いますが、にじみを活かした絵に仕上げたい時は画仙紙を使いました。『おたまじゃくしの101ちゃん』(偕成社)の水中の場面などがその良い例です。

色のついたラシャ紙やミューズ紙と使い、その色を生かしている作品もあります。例えば『たろうがらす じろうがらす』(2021年復刊ドットコム)のねずみ色はどんより、雪雲が垂れ込めている空模様にぴったりです。『こどものカレンダー9月のまき』に掲載されているブリューゲル「子供の遊戯」の模写は、ブリューゲルの絵の背景色に近い濃いベージュ色の紙に描いています。

珍しく海外で作られた紙を使っているのが『ねんねしたおばあちゃん』(1980年 ポプラ社)の表紙絵です。おばあちゃんとおばあちゃんが世話をする子どもが描かれている非常に薄い紙ですが、その紙にはMade in France MBMの文字が透かしで入っています。

ここでご紹介した絵は、おたまじゃくしの101ちゃんの水中の絵を除いて、2022年夏のBunkamura展示会の公式図録『かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと』(平凡社)に掲載していますのでご覧いただけたら幸いです。