お知らせ

かこ作品の中でも最も古い時代に属する「かっぱとてんぐとかみなりどん」(2014年復刊ドットコム)の全19場面と表紙・裏表紙を展示いたします。

登場するのは題名そして表紙の絵にある通りの面々と裏表紙に描かれたとうべいと息子のとうへいです。昔むかし、かっぱとてんぐとかみなりどんに難題をふっかけられ困り果てたとうべいを息子の機知が救います。

著者のあとがきをご紹介します。

(引用はじめ)
この物語は昭和30年、子ども会でおこなった〈素話〉がもとになっています。その後、手描きの紙芝居を作り、のちに童心社から、印刷、市販するに至りました。その筋は、昔話や「吉四六(きっちょむ)さん」「曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)」や「一休さん」に見られるとんち話、ちえ話の系列ですけれど、そうした話を、たんに「うまいことをしておもしろいな」で終わらせたのでは、いちばん大事な点がぬけたように考えます。

私たちふつうの人間、庶民は、なんとかその日その日を平穏におくりたい、家族が無事であればと思っているものです。その力もよわく、小心でささやかな人間が、時にまなじりとさいて何かをめざし、がんばり、執念をもつには、それなりの強い理由、たちあがらずにはおられなかった怒りや苦しみや呪いといったものが、その裏に必ずあるのだ、その人の心の中に渦まいていたのだということをぬきにしたのでは、それは意味のない「うそつき話」や「わらい話」となってしまいます。
この本を読んでくださる方が、もし、いわれのない不当な苦しさをしいられ、つらさの底におとされた時、どうするか、どう考え、行動しなければならないかを、この本でーーーこのシリーズの中で問いかけたいと思ってかきました。楽しい面白さに秘めた呪いの話であり、おどろな人間の怨念のものがたりです。
かこさとし
(引用終わり)

あとがきにもありますが、正確な時期は以下の通りです。

1955年にセツルメント活動で素話
1959年に手描き紙芝居をセツルメントで演じる
1960年紙芝居「てんぐとかっぱとかみなりどん」として童心社より出版。ただし、画はかこさとしでではない。
1978年絵本「かっぱとてんぐとかみなりどん」(かこさとし作・画)が童心社より刊行される。2014年上記を底本に復刊ドットコムより復刊。

お気づきのように、紙芝居の題名は「てんぐ」で始まっています。加古は当時から「てんぐ」を主人公にした物語を書けないかと探っていたのです。そしてうまれたのが主人公をだるまちゃんに譲り、てんぐちゃんが相手役となる「だるまちゃんとてんぐちゃん」(1967年福音館)でした。

そのことは、前扉と後扉の絵をご覧いただくとおわかりになることでしょう。
前扉にはてんぐのうちわ、後扉にはてんぐの履き物一本歯の下駄にからすが描かれていて、その後の加古の作品を予見させるようです。

上は前扉、てんぐのうちわ。
下は、あとがきに添えられたたてんぐの下駄。からすがいることで、この絵の表情・表現が物語の最後を余韻をもたせ締めくくる大きな役割を果たしています。

いよいよ来年はだるまちゃん誕生50周年を迎えます。
それにちなみ、だるまちゃんにつながる本作品を一足先に展示いたします。題字とともに絵の独特のタッチをお楽しみください。

尚、絵本館は展示替えのため11月16日は休館となります。

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  • 「かっぱとてんぐとかみなりどん」かこさとし ふるさと絵本館で展示2016年11月17日〜2018年3月20日