作品によせて

2019/02/19

コラージュ

今から60年以上前、かこさとしはセツルメント活動で川崎の子どもたちに毎日曜日、紙芝居を見せたり、行事にまつわる催しを楽しませたりしていました。七夕飾りを作ろうとしたところ、ハサミをうまく使えない子どもたちの様子に、これはいけないと早速ハサミを持たせ色紙を丸く切り抜くことをさせました。その紙は、現在の一般的な折紙よりも厚く上等で表面はツルツルして光沢がある綺麗な色で裏は白でした。どこで手にいれたのかはわかりませんが、筆者は幼心にこんなに素敵な紙があることに感動した覚えがあります。

丸い切り抜きのあと、セツルメントの子ども会では、自分の名前を切り抜いてみたり、切り抜いた紙で作品をつくったりということを楽しんでいたようで、今も残っています。当時わら半紙は一枚2円と高価ですから貼り絵の台紙には、セツルメント診療所で使用したレントゲンを入れる黒い紙袋や古雑誌のページを使っていました。またその雑誌を切り抜いてみたりと自由な発想で子どもたちは色々と作っていきました。

コラージュを活用した絵本には『あおいめ くろいめちゃいろのめ』(1972年)『どろぼうがっこう』(1973年、いずれも偕成社)やその続編があげられます。
下は、『あおいめのめりーちゃんおかいもの』(2014年偕成社)の一場面、背景の薄緑色は越前和紙です。

『どろぼうがっこう』の誕生の経緯は、あとがきにありますが、絵本にする時、かこはこのコラージュの手法を背景に盛り込みました。続編のどろぼうがっこうの生徒たちが刑務所できている服はコラージュに更に手を加えた、かこのオリジナル柄です。

お手元に『だるまちゃんととらのこちゃん』(福音館書店)がありましたら見返しをご覧ください。オレンジ色のみのものは旧版で、2018年6月発行の第36刷以降では、前見返しで、とらのこちゃんが、後ろ見返しではだるまちゃんが大暴れ。忍術使いのようにペンキ、はけやバケツが物凄い勢いで乱れ飛ぶような構図。この場面は、2015年、長年見返しに何も描いていなかったことを気にかけていた加古がコラージュで作成しました。動きを表すため、縞模様やドット柄などの白黒の紙を切り抜き、黒の部分が白く、白い部分がこのオレンジ色になるようにしたものです。たくさんのパーツを切っておいて、ピンセットで一つ一つ貼っていました。随分、骨の折れる作業に見えましたが、むしろ楽しそうに仕上げていた姿が印象的でした。

かこが作成したコラージュ作品の代表的なものは農文協の遊びの本にある切手のコラージュによる「モナリザ」です。印刷ではその出来栄えが伝わりにくいのが残念ですが、朗報があります。2019年3月21日から福井県越前市、武生公会堂で始まる(5月12日まで)特別展「加古里子 ~ただ、こどもたちのために~」でこの作品をご覧いただけます。(下はその一部分です。)また、同時に同市ふるさと絵本館では『あおいめ くろいめ ちゃいろのめ』や『あおいめのめりーちゃんおかいもの』の複製原画を展示、コラージュであることがはっきりご覧いただけます。ご期待下さい。

「日曜大工」なんて聞いたことがないという方があるかもしれません。昭和時代の半ばごろまで本棚など小さな家具や犬小屋を素人が余暇に木材をノコギリで切り、釘を打ち付け大工仕事をしたものです。

加古はこの日曜大工が得意でした。戦後間もない頃は絵の額も自分で作ったそうですし、大学の演劇研究会では舞台衣装と装置を担当、設計から製作をしていました。木造平家を建てたこともあるほどですから部屋の四方にぐるりと本棚を吊ることぐらいは朝飯前で、それこそ晴れた日曜日には糸鋸のゴキゴキする音が聞こえてくることがありました。数十年も前のことですから電動の道具はありませんでした。亡くなるまで愛用していたライトテーブルも自作で半世紀以上使っていたことになります。

そんな様子を彷彿とさせるような場面が絵本にも登場しています。『だるまちゃんとだいこくちゃん』(1991年福音館書店)のこの場面。

『からすのてんぷらやさん』(2013年偕成社)では、火事で焼けた天ぷらやさんの再建をからすの兄弟の友だちであるジロくんの仲間がかって出て、お店の再開を後押しします。

大工仕事の道具がずらりと並ぶのは『まさかりどんが さあたいへん』(1996年小峰書店)。ページをめくると次々、まだまだとばかり大工道具がずらり登場して気持ちの良いほどです。

農文協・あそびの大星雲9『のこぎりとんかちのあそび』では数々の遊びに加え、多種多様な専門的な大工道具も紹介(冒頭の写真)。遊びの本ではありますが、あそびの域を超えた専門的な技術も多く紹介されています。下は「ほぞぐみのつくりかた」と「はねきばしの作り方」を紹介するページです。

現在ではDo it yourself からDIYと呼ばれていますが、出来上がるのが何であれ、世界でたった一つのものを手作りするのは、きっと子どもにも大人にも楽しいはずです。木を切るのが大変でしたら紙を切ったり貼ったりコラージュというのは、どうでしょうか。次回はかこさとしのコラージュについてご紹介します。

ヘブライ語は右から左に書くのだと聞いて驚いことがありました。昭和も前半の頃は、日本でも横書きを右から左に書いていましたので、古い看板でクルミだと思ったらミルクだったり、などということがあったものです。これは縦書きの影響かと推測しますが、それにしても縦、横どちらでも書けるのですから日本語は本当に便利です。

加古が小学校卒業にあたり学校で書いた『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社)の元になった絵日記の表題も右から左の横書き、本文は縦書きです。

加古作品の本文は、科学絵本は横書き、お話の絵本は縦書きが基本です。ただし、福音館の「こどものとも」は横書きですので「だるまちゃん」のシリーズは横書きとなっています。

一般の新聞が見出しを縦書きにしたり横書きにしたりと自由に使い分けているように『だるまちゃんしんぶん』(2016年福音館書店)も同様です。「ふゆのごう」にある「もじいれなぞなぞ」は縦書き横書きをを利用してできる言葉遊びです。

タイトルと縦書き、横書きの関係はどうでしょうか。
加古のデビュー作『だむのおじさんたち』(1959年福音館書店・現在は復刊ドットコム)は本文は縦書きですが、タイトルだけは横書き。偕成社かこさとしおはなしの本シリーズもほぼ同様で『からすのパンやさん』『おたまじゃくしの101ちゃん』(いずれも1973年)がその例です。

しかし、書名が横書きでも前扉が本文同様、縦書きというものもあります。同じく1973年に出版された『あかいありとくろいあり』や『サザンちゃんのおともだち』がそうです。当時は、こういった文字を現在のようにデザイナーさんが作るのではなく、著者自らが書いていたからなのかもしれません。

縦書きのあるありがたさは背表紙の読みやすさです。
縦書きの方が集中して読める、ということから縦書きが多いと聞いたことがありますが、読者の皆様はどのように感じていらっしゃるでしょうか。

かこさとしが原稿を書く時はどうしていたかというと、縦書きのものは原稿も縦書き、横書きのものは原稿も横書きで書いていました。

『海』では、本文横書き、図は縦横両方ですが、本文がこんな斜めの部分もあります。

かこさとしのライフワークをまとめた『伝承遊び考 1絵かき遊び考』(2006年小峰書店)には次のような図があります。いわゆる「へのへのもへじ」ですが、右側、図29は安藤広重「新法狂字図句画」の模写で「へへののもへいじ」とあり、つまりこの絵描き遊びの最初は横書き、図30は私たちが見慣れている「へのへのもへじ」で江戸の文字絵にあり縦書きです。縦書き、横書きの自由さを昔の人々もこのように利用して遊んでいたというわけです。

「へへのの」と「へのへの」の出現する地域差など詳細膨大なデータとその考察については是非、『伝承遊び考』をご覧下さい。縦書きの厚い本ですが、絵図が豊富で小学生でも充分楽しめる内容です。

2019/01/01

イノシシ

2019年の干支にちなみ、イノシシを探してみます。

イノシシが本来住んでいる所と言えば、、、『地球』にはイノシシの親子が秋の林の中にいます。食べ物を探しているのでしょうか。2018年11月に出版された『みずとは なんじゃ?』(小峰書店)では鈴木まもるさんがこの場面をオマージュして夏の景色に変えて描いていますが、そこにもイノシシの姿が見えます。

猪突猛進とまではいきませんが、『あそびの大事典 大宇宙編』(2015年農文協)パート3「しか くま ぶたちゃんのあそび」では様々な動物が勢いよく走っているこの場面に登場です。

筆者のお気に入りは、同パート「いのししがっこうのきょうしつです」の場面(冒頭の写真)。視力検査表の中にイノシシの足跡が見えます。シノシシの子、ウリ坊も愛らしいし(下)、教室の掲示物にも加古のユーモアがあふれています。動物尽くしの世界地図にイノシシは見当たりませんが加古はこういうデザインを考えるのが大好きでした。

そしてイノシシのお話といえば、月刊『母の友』(福音館書店)で過去4回にわたり掲載された「イノシシ先生」のお話。先生と言っても学校ではなく山の杉の木の横にある病院のお医者さん。花粉症になってしまった「クチュンクチュンのカマキリさん」など毎回くすっと笑える短いお話です。2018年の11月号では「イノシシ病院 救急車のまき」が加古の文、挿絵は孫のカメツヒロキで登場しました。かこさとしは、この「イノシシ先生」が気に入っていたのか他にもお話を書きためていたのが最近見つかりました。いつか皆様にご披露できればと思っています。

年頭にあたり加古の古いイラストでイノシシをご覧下さい。「龍の子太郎」とありますので1960年松谷みよこさん作の創作昔話を読んで自分なりに描いたもののようです。

本年が皆様にとって良き一年となりますようお祈りいたします。

2018/12/15

犬がいる

今年もあと何日ということがいわれるような時期になりました。「あとがきから」コーナーでご紹介してきた「加古里子かがくの世界」(福音館書店)6冊には、今年の干支でもある犬が登場するという共通点があります。気付かれましたか。

お子さんたちが本に親しみやすいように、加古の絵本では、子どもと一緒に犬や猫など小動物を登場させることがしばしばあります。科学の世界、電気や断面図はちょっと難しいと感じられるかもしれませんので、例にもれずワンちゃんが顔を出して興味をつないでいきます。

『でんとうがつくまで』(上) の表紙にいるのは耳が垂れて、白とちゃ色のこのワンちゃん。
『ごむのじっけん』(下)の耳が垂れている白い犬は前扉ではこんな風にゴムに興味シンシン。

ところが最後には、ちょっとかわいそうなことになってしまいます。(下)
これぞゴムの特徴、決して動物ギャクタイのつもりではありません。

『だんめんず』(下)のこの場面では、犬の本領発揮。吠える理由は、断面図で見れば一目瞭然という仕掛けです。

『いろいろおにおそび』(下)には珍しく黒い犬が子どもたちと一緒に、鬼遊びの場にいます。
これは裏表紙で[いろおに]をしているところです。オニが言った色、ここでは黒、を触っていればオニに捕まってもセーフという鬼ごっこです。この場面の子どもたちは、皆黒いものにさわっているので例えオニにタッチされても大丈夫だというわけです。

『ふたりであそぼ みんなであそぼ』(下)の表紙で勢いよく走る様子が印象的なのは、ちゃ色の毛で顔が白い垂れ耳ワンちゃん。元気一杯です。

『たこ』に出てくる白い犬とは随分仲良しのようです。後ろ扉(下)では遊び疲れた男の子と一緒に眠っています。凧揚げが大好きだった著者の幼い頃はきっとこんなだったのでしょうか。

筆者には、たこの「さ」の文字と2018年永眠した、かこさとしがこの絵に重なってしまいます。

残り少なくなってきた戌年、皆さまどうかお健やかにお過ごしください。

(2018年戌年最初の「編集室から」コーナーでも「気になる犬」という表題で加古作品に登場する犬のあれこれについて書きました。ご参考になれば幸いです)

2018/12/07

冬の赤い実

クリスマスといえばヒイラギの緑の葉と赤い実が思い浮かびます。『こどもの行事 しぜんと生活12月のまき』(2012年小峰書店・上)には、クリスマス・リースに「ヒイラギなど、寒さの中でも緑の葉をつける木をつかいます」とあります。永遠の生命とキリストの血を象徴すると言われていますが、正確に言うと赤い実をつけるのは西洋ヒイラギで、日本の柊の実は青紫色だそうです。

冬枯れのこの季節には緑の葉につく赤い実が目立ちます。『あそびずかん ふゆのまき』(2014年小峰書店・上)には〈あかいみをつける しょくぶつ〉として、ヤブコウジ、モチノキ、センリョウ、マンリョウが描かれています。

センリョウにはオレンジ色の実があったり、上の写真のようにマンリョウには白い実もあったりしますが、ヒイラギ同様何れにしてもこれらの花は白くて、あるいは薄緑色で小さく可憐。咲いているときは、さほど目立たないのですが、実ると目にも鮮やかな色となります。一緒に紹介されているナンテンも同じです。

スズランもご存知のように白い愛らしい花をつけますが、この実も真っ赤で花から想像される以上の大きさになります。すべての花が実になるわけではないらしいのですが、スズランは全草毒があり、花瓶にさしておいた水にもその毒が溶け出ているとか、びっくりです。

りんごやイチゴの花も白ですね。あんなに小さな白い花がこんなにも大きな実になるとは、本当に植物の力には驚かされます。雪に覆われない地域なら、木枯らしの中、赤い実探しはちょっと楽しいネイチャーゲームです。そんな冬の過ごし方はいかがですか。

下は、『かこさとしの食べごと大発見5 いろいろ食事 春秋うまい』(1994年 農文協)より

2018/11/27

かぼちゃ

かぼちゃというと、ハロウィンを連想されるもしれませんが、筆者が子どもの頃は、シンデレラのかぼちゃの馬車を思い浮かべたものです。
(下は『あそびの大惑星 5 こびととおとぎのくにのあそび』1991年農文協)

かぼちゃが大きく描かれているのは、2018年10月に刊行された『だんめんず』(福音館書店)のこの場面。硬そう、そして美味しそうです。

日本では昔から冬至かぼちゃといって、夏に収穫したかぼちゃを冬のこの時期まで保存して風邪の予防に食べてきました。スーパーマーケットの野菜売り場にも冬至になるとそんなことがポップに書かれているのを見かけます。

『かこさとしの食べごと大発見 9 まま人参いもパパだいこん』(1994年農文協・下)には「とうじにはとうなす(かぼちゃ)をたべます。かぼちゃのことを「なんきん」ともいいますが、このように「ん」が2つつく食べものを食べると、病気にならないといわれているからです」とあります。

『こどもの行事 しぜんと生活 12がつのまき』(2012年小峰書店)にも、かぼちゃの煮物が食卓に並んでいる様子が描かれ、説明には「こんにゃくやユズをたべるところもあります」

『食べごと大発見 5 いろいろ食事 春秋うまい』(1994年農文協・下)では「冬至のゆず かぼちゃ」に合わせて「かぜひき はなづまりのくすり」として、ねぎゆ、しょうがゆ、きんかんゆ、みかんゆ、レモネード、だいこんあめ、黒豆汁などが並びます。

この本から引用します。
(引用はじめ)
12月8日は火を使うところは、「ふいごまつり」ぬいものをするところは「はりやすめ」といって仕事をやすむ日となっていました。
(引用おわり)(漢字には全てふりがながあります)

ふいごまつりは、もともとは旧暦の11月8日に行われていたもので現在の12月半ばにあたり、「はりやすめ」は、針供養と言われて2月8日に行う地域もあるそうです。そして12月8日で忘れてはならないのが、太平洋戦争開戦の日であるということです。

前出の『こどもの行事 しぜんと生活12がつのまき』には、この戦争について次のような一節があります。本文を一部ご紹介しましょう。

(引用はじめ)
戦争によって、おおきな犠牲を日本国民だけでなく、ほかの国々の人々にもおよぼしたことをよく考え、戦争のない真に平和な世界をつくるために、まず日本は真剣に平和な世界の実現を追求しなければならないとおもいます。
(引用おわり)(漢字には全てふりがながあります)

戦争中、食料難でお米の代わりに食べたのがサツマイモやカボチャ。「何が何でもカボチャを作れと言われ、狭い土地でも地面があれば耕し種まきをさせられた」と加古は語っていました。「イヤというほど食べた」ので、ずいぶん長い間、すすんでかぼちゃを食べることはありませんでした。

そんな時代のことを綴ったエッセイ「白い秋、青い秋のこと」(『子どもたちへ、今こそ伝える戦争 』2015年講談社)に添えられている挿絵に描かれているのは、お世話になった医師とかぼちゃ。

「何がなんでもの 南瓜も食わで 征くか君 」昭和十九年夏 三斗子(さとし)

今年の冬至、病気にならないことを願い、平和でかぼちゃが食べられる幸せを心して味わいたいと思います。

しばらく品切れ状態が続き重版が待望されていた『すばらしい彫刻』(1989年偕成社)が2018年11月に印刷されました。かこさとし自らが出版を依頼した唯一の絵本『美しい絵』(1974年偕成社)から15年を経て刊行された姉妹編ともいえるのが本作です。著者の言葉は、2016年7月16日に当サイト「あとがきから」でご紹介しましたので是非ご覧下さい。

かこさとしと彫刻との出会いは、いつ頃だったのでしょうか。
生まれ故郷福井県越前市で通っていた幼稚園は引接寺(いんじょうじ)という1488年に建てられたお寺にありました。総ケヤキ造りの山門には彫刻があるほか境内には古い石仏などもあり、幼い頃にこのようなものを目にしていたはずです。

東京に転居し1942年中学生の時、上野で開催されたレオナルド ・ダ・ヴィンチの展示会を見て驚愕したそうです。以来、ダ・ヴィンチに魅了され、興味が深まっていくのですが、その時に上野で見た彫刻のスケッチが残っています。西郷隆盛の像、ロダンの「考える人」や「カレーの市民」の歩む人の足元が、色が変わってしまった古いわら半紙に、せいぜい4-5センチくらいの小さなものですが鉛筆で走るようなタッチで描かれています。これだけ見ると中学生の手によるものとは信じがたい手慣れた線ですが、『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社)を小学校卒業時に描いた加古ならば、合点が行く描きっぷりです。

『すばらしい彫刻』でとりあげられているミロのビーナスの思い出は、高校にあったミロのビーナス像に始まり、ゲートルを巻いた加古とのツーショット(『別冊太陽』に大きな写真掲載)が残っています。そして終戦後初めての五月祭、大学2年生だった加古はミロのビーナスの版画を作成(当ウェブサイトのプロフィール1946年に掲載)したほどです。

『すばらしい彫刻』に紹介されているエジプトのアブシンベル神殿・ラムセス2世の像や奈良の大仏なども加古が長年興味を持ち研究していたものです。1985年に『ならの大仏さま』(福音館・現在は復刊ドットコム)、1990年に『ピラミッド』(偕成社)を出版していることからもわかります。

そしてこの本の最後には、あの上野で見たロダンの作品が取り上げられています。『すばらしい彫刻』で古今東西のすばらしい彫刻とそれを作った芸術家、そしてそれを見て感動した加古里子と出会っていただけたらと思います。

金木犀の香り漂う候となりました。季節ならでは自然の香りは良いものです。

秋の香りで連想するものといえば、松茸でしょうか。食さずともせめて香りだけでも、と思ってしまいます。「においはマツタケオール、イソマツタケオール、ケイヒ酸メチル」と説明があるのは、『世界の化学者12か月』(2016年偕成社)9月の欄です。このページでは、9月に生まれ(1887年)亡くなった(1976年)スイスの化学者ルジカ(下)を紹介しています。

ルジカは「ジャコウの中に含まれている、かおりの化合物ムスコン、とジャコウのねこのかおりの成分、シベトン化学構造をあきらかにし」たばかりでなく、「ジャスミンの花にある、ジャスモンという化学物質をつきとめ」1939年ノーベル化学賞を受賞しました。

かこさとしふるさと絵本館がある越前市の「だるまちゃん広場」など武生中央公園では、例年より早く2018年9月28日から11月4日まで菊人形が展示されています。他では見たことのないような千輪菊、7本立ての大菊、懸崖や、動物や文字の形のトピアリーなど、1-2年かけて栽培されたものが所狭しと並べられます。

キクについて、この本の10月のページ(下)には「キク:花の色はアントシアン(赤)、カロチノイド(黄)。花のにおいは、ピネン、テルペンアルコール、しょうのう。」とあります。

10月には21日に生まれたノーベルの遺言によるノーベル賞が発表されますが、この本には、宇宙誕生から2016年までの「科学年表・科学の歴史」もあり、あとがきには制作にあたり、熱い思いでご協力いただいた多くの化学者の名前が列記されています。古今東西、研究に人生を捧げた科学者たちのおかげで私たちの現在の生活があるというわけです。

ところで、かこさとし」の遺稿「だるまちゃんとうらしまちゃん」(「母の友」10月号に掲載)をお読みいただけましたか。浦島太郎をモチーフにした読み聞かせにぴったりの作品です。『世界の科学者12か月』の「化学のちいさなお話」コーナーでは次のようにあります。

(引用はじめ)
「桃太郎、金太郎、浦島太郎をおとぎ話の三太郎、アボガドロ(Avogadro )、ベルセリウス(Berzelius)、キャベンディシュ(Cavendish)を化学の先覚ABCとよんでいます。
(引用おわり)

というわけで、この本の裏表紙(下)には、この三人の化学者が紹介されています。また、日本の化学者のすばらしい三太郎、鈴木梅太郎、長岡半太郎、本多光太郎についても本文で紹介しています。ちなみに表紙の六角形の三人はギリシャのタレス、アリストテレス、デモクリトスで紀元前の人々です。

読書の秋、文学も素敵ですが身近にある科学もお楽しみ下さい。

2018/09/18

月見だんご

花より団子ではないのですが、お月見でどうしても飾りたいのはススキに秋の実りとお団子。月餅を飾ったこともありましたが、白いまんまるのお団子を盛り、翌日、甘辛く煮てもらって食べるのが幼い頃は楽しみでした。

そんな風物詩を描いているのが、『ことばのべんきょう くまちゃんいちねん』(1971年福音館書店)や『こどものカレンダー』(1975年偕成社)です。

お月見が表紙になっている『こどもの行事 しぜんと生活 9がつのまき』(2012年 小峰書店・上)では「中秋の名月」にちなみ〈月の形と名前〉〈月とウサギ〉、〈月の位置とみちかけの形〉〈月の形と出入りの時間〉など、大人でも正確に説明するのは難しい事柄がわかり易くイラストで示されています。

この本の表紙及び裏表紙の絵は、藤沢市役所の1階に9月いっぱい展示されていますので、近くにお住まいの方は是非ご覧下さい。(2018年12月まで毎月、その月の本の表紙絵に掛け替えています。)

『いろいろ食事 春秋うまい かこさとしの食べごと 大発見 5』(1994年農文協・下)には、〈月見だんごのつくり方〉まで載っています。

「だんごの数は、ふつう15ですが、ところによっては、12(平年)、13(うるう年)のときもあります。」と説明があって、三宝に美味しそうに飾られているお団子の絵があり、ここでクイズが出題されます。

「15のだんごのをつむには、どのようなかたちにしたらよいでしょうか。また、12や13のときはどうつみますか?」

ヒントは、一番上は1つ、その下は4つでこれは、お団子がいくつであっても同じです。

「答えは後ろの見返し」とありますが、特別に答えをお知らせします。2018年は9月24日が十五夜だそうです。きれいに積んだお団子とともに、お月見をお楽しみ下さい。