作品によせて

2018/11/27

かぼちゃ

かぼちゃというと、ハロウィンを連想されるもしれませんが、筆者が子どもの頃は、シンデレラのかぼちゃの馬車を思い浮かべたものです。
(下は『あそびの大惑星 5 こびととおとぎのくにのあそび』1991年農文協)

かぼちゃが大きく描かれているのは、2018年10月に刊行された『だんめんず』(福音館書店)のこの場面。硬そう、そして美味しそうです。

日本では昔から冬至かぼちゃといって、夏に収穫したかぼちゃを冬のこの時期まで保存して風邪の予防に食べてきました。スーパーマーケットの野菜売り場にも冬至になるとそんなことがポップに書かれているのを見かけます。

『かこさとしの食べごと大発見 9 まま人参いもパパだいこん』(1994年農文協・下)には「とうじにはとうなす(かぼちゃ)をたべます。かぼちゃのことを「なんきん」ともいいますが、このように「ん」が2つつく食べものを食べると、病気にならないといわれているからです」とあります。

『こどもの行事 しぜんと生活 12がつのまき』(2012年小峰書店)にも、かぼちゃの煮物が食卓に並んでいる様子が描かれ、説明には「こんにゃくやユズをたべるところもあります」

『食べごと大発見 5 いろいろ食事 春秋うまい』(1994年農文協・下)では「冬至のゆず かぼちゃ」に合わせて「かぜひき はなづまりのくすり」として、ねぎゆ、しょうがゆ、きんかんゆ、みかんゆ、レモネード、だいこんあめ、黒豆汁などが並びます。

この本から引用します。
(引用はじめ)
12月8日は火を使うところは、「ふいごまつり」ぬいものをするところは「はりやすめ」といって仕事をやすむ日となっていました。
(引用おわり)(漢字には全てふりがながあります)

ふいごまつりは、もともとは旧暦の11月8日に行われていたもので現在の12月半ばにあたり、「はりやすめ」は、針供養と言われて2月8日に行う地域もあるそうです。そして12月8日で忘れてはならないのが、太平洋戦争開戦の日であるということです。

前出の『こどもの行事 しぜんと生活12がつのまき』には、この戦争について次のような一節があります。本文を一部ご紹介しましょう。

(引用はじめ)
戦争によって、おおきな犠牲を日本国民だけでなく、ほかの国々の人々にもおよぼしたことをよく考え、戦争のない真に平和な世界をつくるために、まず日本は真剣に平和な世界の実現を追求しなければならないとおもいます。
(引用おわり)(漢字には全てふりがながあります)

戦争中、食料難でお米の代わりに食べたのがサツマイモやカボチャ。「何が何でもカボチャを作れと言われ、狭い土地でも地面があれば耕し種まきをさせられた」と加古は語っていました。「イヤというほど食べた」ので、ずいぶん長い間、すすんでかぼちゃを食べることはありませんでした。

そんな時代のことを綴ったエッセイ「白い秋、青い秋のこと」(『子どもたちへ、今こそ伝える戦争 』2015年講談社)に添えられている挿絵に描かれているのは、お世話になった医師とかぼちゃ。

「何がなんでもの 南瓜も食わで 征くか君 」昭和十九年夏 三斗子(さとし)

今年の冬至、病気にならないことを願い、平和でかぼちゃが食べられる幸せを心して味わいたいと思います。

しばらく品切れ状態が続き重版が待望されていた『すばらしい彫刻』(1989年偕成社)が2018年11月に印刷されました。かこさとし自らが出版を依頼した唯一の絵本『美しい絵』(1974年偕成社)から15年を経て刊行された姉妹編ともいえるのが本作です。著者の言葉は、2016年7月16日に当サイト「あとがきから」でご紹介しましたので是非ご覧下さい。

かこさとしと彫刻との出会いは、いつ頃だったのでしょうか。
生まれ故郷福井県越前市で通っていた幼稚園は引接寺(いんじょうじ)という1488年に建てられたお寺にありました。総ケヤキ造りの山門には彫刻があるほか境内には古い石仏などもあり、幼い頃にこのようなものを目にしていたはずです。

東京に転居し1942年中学生の時、上野で開催されたレオナルド ・ダ・ヴィンチの展示会を見て驚愕したそうです。以来、ダ・ヴィンチに魅了され、興味が深まっていくのですが、その時に上野で見た彫刻のスケッチが残っています。西郷隆盛の像、ロダンの「考える人」や「カレーの市民」の歩む人の足元が、色が変わってしまった古いわら半紙に、せいぜい4-5センチくらいの小さなものですが鉛筆で走るようなタッチで描かれています。これだけ見ると中学生の手によるものとは信じがたい手慣れた線ですが、『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社)を小学校卒業時に描いた加古ならば、合点が行く描きっぷりです。

『すばらしい彫刻』でとりあげられているミロのビーナスの思い出は、高校にあったミロのビーナス像に始まり、ゲートルを巻いた加古とのツーショット(『別冊太陽』に大きな写真掲載)が残っています。そして終戦後初めての五月祭、大学2年生だった加古はミロのビーナスの版画を作成(当ウェブサイトのプロフィール1946年に掲載)したほどです。

『すばらしい彫刻』に紹介されているエジプトのアブシンベル神殿・ラムセス2世の像や奈良の大仏なども加古が長年興味を持ち研究していたものです。1985年に『ならの大仏さま』(福音館・現在は復刊ドットコム)、1990年に『ピラミッド』(偕成社)を出版していることからもわかります。

そしてこの本の最後には、あの上野で見たロダンの作品が取り上げられています。『すばらしい彫刻』で古今東西のすばらしい彫刻とそれを作った芸術家、そしてそれを見て感動した加古里子と出会っていただけたらと思います。

金木犀の香り漂う候となりました。季節ならでは自然の香りは良いものです。

秋の香りで連想するものといえば、松茸でしょうか。食さずともせめて香りだけでも、と思ってしまいます。「においはマツタケオール、イソマツタケオール、ケイヒ酸メチル」と説明があるのは、『世界の化学者12か月』(2016年偕成社)9月の欄です。このページでは、9月に生まれ(1887年)亡くなった(1976年)スイスの化学者ルジカ(下)を紹介しています。

ルジカは「ジャコウの中に含まれている、かおりの化合物ムスコン、とジャコウのねこのかおりの成分、シベトン化学構造をあきらかにし」たばかりでなく、「ジャスミンの花にある、ジャスモンという化学物質をつきとめ」1939年ノーベル化学賞を受賞しました。

かこさとしふるさと絵本館がある越前市の「だるまちゃん広場」など武生中央公園では、例年より早く2018年9月28日から11月4日まで菊人形が展示されています。他では見たことのないような千輪菊、7本立ての大菊、懸崖や、動物や文字の形のトピアリーなど、1-2年かけて栽培されたものが所狭しと並べられます。

キクについて、この本の10月のページ(下)には「キク:花の色はアントシアン(赤)、カロチノイド(黄)。花のにおいは、ピネン、テルペンアルコール、しょうのう。」とあります。

10月には21日に生まれたノーベルの遺言によるノーベル賞が発表されますが、この本には、宇宙誕生から2016年までの「科学年表・科学の歴史」もあり、あとがきには制作にあたり、熱い思いでご協力いただいた多くの化学者の名前が列記されています。古今東西、研究に人生を捧げた科学者たちのおかげで私たちの現在の生活があるというわけです。

ところで、かこさとし」の遺稿「だるまちゃんとうらしまちゃん」(「母の友」10月号に掲載)をお読みいただけましたか。浦島太郎をモチーフにした読み聞かせにぴったりの作品です。『世界の科学者12か月』の「化学のちいさなお話」コーナーでは次のようにあります。

(引用はじめ)
「桃太郎、金太郎、浦島太郎をおとぎ話の三太郎、アボガドロ(Avogadro )、ベルセリウス(Berzelius)、キャベンディシュ(Cavendish)を化学の先覚ABCとよんでいます。
(引用おわり)

というわけで、この本の裏表紙(下)には、この三人の化学者が紹介されています。また、日本の化学者のすばらしい三太郎、鈴木梅太郎、長岡半太郎、本多光太郎についても本文で紹介しています。ちなみに表紙の六角形の三人はギリシャのタレス、アリストテレス、デモクリトスで紀元前の人々です。

読書の秋、文学も素敵ですが身近にある科学もお楽しみ下さい。

2018/09/18

月見だんご

花より団子ではないのですが、お月見でどうしても飾りたいのはススキに秋の実りとお団子。月餅を飾ったこともありましたが、白いまんまるのお団子を盛り、翌日、甘辛く煮てもらって食べるのが幼い頃は楽しみでした。

そんな風物詩を描いているのが、『ことばのべんきょう くまちゃんいちねん』(1971年福音館書店)や『こどものカレンダー』(1975年偕成社)です。

お月見が表紙になっている『こどもの行事 しぜんと生活 9がつのまき』(2012年 小峰書店・上)では「中秋の名月」にちなみ〈月の形と名前〉〈月とウサギ〉、〈月の位置とみちかけの形〉〈月の形と出入りの時間〉など、大人でも正確に説明するのは難しい事柄がわかり易くイラストで示されています。

この本の表紙及び裏表紙の絵は、藤沢市役所の1階に9月いっぱい展示されていますので、近くにお住まいの方は是非ご覧下さい。(2018年12月まで毎月、その月の本の表紙絵に掛け替えています。)

『いろいろ食事 春秋うまい かこさとしの食べごと 大発見 5』(1994年農文協・下)には、〈月見だんごのつくり方〉まで載っています。

「だんごの数は、ふつう15ですが、ところによっては、12(平年)、13(うるう年)のときもあります。」と説明があって、三宝に美味しそうに飾られているお団子の絵があり、ここでクイズが出題されます。

「15のだんごのをつむには、どのようなかたちにしたらよいでしょうか。また、12や13のときはどうつみますか?」

ヒントは、一番上は1つ、その下は4つでこれは、お団子がいくつであっても同じです。

「答えは後ろの見返し」とありますが、特別に答えをお知らせします。2018年は9月24日が十五夜だそうです。きれいに積んだお団子とともに、お月見をお楽しみ下さい。

2018/09/12

秋の遠足

遠足シーズンといえば春か秋ですが、暑さが厳しい近年はその時期を選ぶのも難しそうです。絵本の中を覗いてみましょう。

「、、、きょうは、とても いいおてんきだから、みんなで えんそくに 行きましょう。」この声に歓声をあげて 「🎶チロ チロ パッパ」と遠足に出かけるのは『おたまじゃくしの101ちゃん』(1973年偕成社)。
途中で101ちゃんが迷子になってしまったらしく、事件が起こります。

元気いっぱい山登りするのは『あかいありのぼうけんえんそく』(2014年 偕成社・下は前扉)。題名に「えんそく」の文字がありますが、物語はこう始まります。

「あきになりました。えんそくに よい きせつです。あかありしょうがっこうでは、いちねんせいから ろくねんせいまで、ぜんぶのせいとでそろって「あきえんそく」をします。」

ところがその遠足の場所はどうやら難所もあるらしくPTAも同行しての一大イベント。秋の草花を背景に遠足の行列が進んで行くと「ぼうけんえんそく」の名にふさわしく様々なハプニングが起こります。虫好きさんには大人気ですが、ちょっぴり怖い方もいらっしゃるかもしれません。

「 どくしゃへ ごちゅうい!! きをつけて ページをひらいてください!」

こんな注意書きがあるのは加古作品の中でこの絵本のみです。しかし、実はもっとあぶない遠足もあります。

そうです。とっぷり日が暮れたこの場面。

「🎶 ぬきあし さしあし
しのびあし
どろぼうがっこうの
えんそくだ
それ!」

やっぱり遠足は、『ことばのべんきょう くまちゃんのいちねん』(1971年福音館書店)にあるように、秋晴れのもと素敵な景色をゆっくり眺めながら美味しいお弁当を食べて季節を満喫したいものです。

後ろ向きで絵を描いているのは著者でしょうか。秋は加古の好きな季節でした。

だるまちゃんシリーズは1957年刊行の「だるまちゃんとてんぐちゃん」に始まり2018年の最新三作「だるまちゃんとかまどんちゃん」「だるまちゃんとはやたちゃん」「だるまちゃんとキジムナちゃん」の全11作品(福音館書店)ですが、実はだるまちゃんを主人公にした絵本や紙芝居は他にもあります。

飯田の人形劇フェタに招かれ地元の皆様の切望にお応えして作成した「だるまちゃん・りんごんちゃん」(2013年瑞雲舎)は飯田の名産、りんごがだるまちゃんのお友だち、りんごんちゃんとして登場。人形劇もありのご当地色満載の楽しいお話です。(上が表紙、下は前扉)

社会福祉財団のジャンボ絵本になった「だるまちゃん きつねちゃん」「だるまちゃん はるのうた ふゆのうた」という作品は一般には販売せず、福祉施設に寄贈されました。

本ではありませんが、加古作品には、時折だるまちゃんやその仲間が登場しますので、探してみましょう。
『遊びの大星雲3みごとはなやかなあそび」(1992年農文協)「いろいろのはな さまざまないろ」(下)では季節による花の色の多少を示しているのですが、なんと「だるまちゃん」のみならず「かみなりちゃん」や「てんぐちゃん」も花を手に嬉しそう。見ているこちらも嬉しくなってきます。ちなみに白い花は一年を通して多いそうです。

『あそびの大事典 もりいずみ はらっぱの あそび』(2015年農文協)の「もみじのはのさきのかぞえかた」では、小さい絵ではありますが、だるまちゃん、てんぐちゃん、それに、からすもいます!

古い本ですが、この10月に限定販売の予定ですので、ご紹介しておきましょう。以下のようにだるまちゃんとてんぐちゃんが凧の絵になって登場のその名も『たこ』(1975年福音館書店)という科学絵本もあります。

だるまは、絵本の色々な場面で描かれていますが、それはまたの機会にご紹介致します。

「だるまちゃん」は、もちろん『だるまちゃんすごろく』『だるまちゃんしんぶん』や『だるまちゃんと楽しむ 日本の子どもにあそび読本(いずれも2016年福音館書店)でもたっぷり、たくさんのお友だちと登場します。すごろく、季節の話題、遊びを是非「だるまちゃん」と一緒にお楽しみ下さい。

夏休みのおやつ作りのヒントになりそうな本です。暑くて外出するのが億劫なときこそ、お家でレストランやカフェの気分はいかがでしょうか。前見返しには布ナプキンの素敵なたたみ方、前扉には「紙ナプキンのかざりおり」がいろいろと紹介されています。そのページにある著者の言葉は以下です。

デザートですか? おやつですか?

(引用はじめ)
この本はおもにくだものやお菓子について書いてあります。あなたは、食事がすんだあとのデザートとして食べるのが好きですか?それとも食事と食事の間のおやつにめしあがりますか?どちらにしてもすばらしいことですね。

わたしの年がわかって癪ですが、わたしのちいさいころ、ビスケットやリンゴなどは、りっぱな食料で、それで何食も何日もすごすなど、めずらしいことではありませんでした。いまでも世界のどこかで、うすいおかゆや山野のくだもので飢えをしのいでいるというニュースに、胸が痛みますが、デザートやおやつをとるというのはそれだけ食料が豊かで、経済的にめぐまれているだけではなく、主食とちがった味を楽しむこころのゆとりがあるということです。

ぜひ、その広い豊かな心のゆとりを、よりよきものへ、より高いものへむけて、もとめ、すすんでくださるよう、くだものやお菓子にかわってお願いします。
(引用おわり)
本文では全ての漢字にひらがながふってあります。

このシリーズには、今までもご紹介したように前書きやあとがきに当たる言葉以外にも〈この本のねらい〉や大人に向けての著者のメッセージがきわめて多く掲載されています。
次にあるのは、通常のあとがきに当たる部分です。

色やかおりも、だから目も鼻も

(引用はじめ)
いまでは、あまりみられませんが、すこし前までくだもの屋さんの店先で、しょっちゅうりんごやネーブルをピカピカ、ツヤツヤ布でふいてならべていました。

また、お菓子屋さんのショーウィンドの前で、子どもといっっしょにしゃがみこんで、「あれがほしい」「これが食べたい」と長いこと鼻をつけていたことがあります。

いまでもくだもの屋さんの店先やお菓子屋さんの飾り窓は、ほかのお店先には悪いほど、とてもきれいで、鮮やかな彩りに満ちあふれています。色ばかりではなく、ふつうの食べものより、ずっとずっとすてきなにおいや、かおりがただよってきます。

お菓子は、つくる人が色やかおりも考えてつくったものですし、くだものも動物や鳥が、好んで食べ、種子を広めてくれる作用が、進化の過程で目立つ色やにおいのよいものを残し、人がさらに改良栽培した結果でしょう。

したがって、ただお腹がふくれ、栄養があればよいというのではなく、くだものやお菓子では、色つやの美しさやまろやかさやつりあいのとれた深みなどが大切なこととなります。どうぞこの本で、見出された新発見をふくめ、たっぷりゆっくり目も鼻も舌も、お楽しみください。
(引用おわり)

そして最後には大人にむけた以下のようなメッセージがあります。

健康と生活をじぶんで律する力

(引用はじめ)
甘いケーキは虫歯になる、くだものも糖分があるから肥満のもとという人がいます。活発な成長期の子供には、お菓子やくだものは第4の食事の役を果たしますが、ただむやみに飽食過食したのでは、必ずどこかに問題が起こります。食前食後の処理や始末はもちろんあそびやスポーツ、家事手伝い、そして労働など正しい生命の燃焼である身体各部の運動活動がなければ、健康を損なうこととなります。

嗜好品と呼ばれるように、食べるかどうかは本人の選択なのですから、自らのからだや生活を自ら律し改良する力をもつきっかけとなるよう、ぜひお菓子やくだものを利用し、指導されるよう期待いたします。
(引用おわリ)

『たいふうがやってくる』(1972年 童心社)は、こんなのどかな表紙(上)から始まる紙芝居ですが、良く見るとスズメは急いでいるようです。次の場面では、虫たちもしっかり木陰に隠れます。次には、天気予報で台風の接近に注意を呼びかけ、雨戸がとばないように、船が流されないようにと準備を進めます。台風を擬人化し(下)、皆で力を合わせて被害を最小限に食い止める様子が幼いお子さんにもわかるように作られ、台風一過の秋晴れのもと、家族みんなの笑顔で終わります。

残念ながらこの紙芝居もーその1ーでご紹介した絵本『たいふう』も絶版ですが、一部の場面は『別冊太陽 かこさとし』(2017年平凡社)に掲載されています。

台風と竜巻については『台風のついせき 竜巻のついきゅう』(2001年 小峰書店)に詳しく、お子さんから大人まで楽しめる内容です。2016年9月にこのサイトの〈あとがきから〉コーナでご紹介していますのでご参考になれば幸いです。

『海』(1969年福音館書店)でも台風について触れています。32ページのサンゴ礁に続く海上(下・33ページ)では竜巻、そして「たいふうのたまご」の雲が描かれ、その間にある「りょうふう丸」(凌風丸)は著者による解説によると「気象庁所属の1200トンの観測船です。」上空には気象衛星が見えます。

大自然の力を目の当たりにする台風や竜巻についての知識を持ち、備えや避難について日頃から考えておきたいと思います。

1964年の東京オリンピックの頃は、台風は秋にやってきてその後は涼しい空気に入れ替わりすっかり秋が深まる、という感覚でした。しかし、現在は地球温暖化のせいでしょうか、今年は早くも台風が日本列島に上陸し大きな被害をもたらしています。


『たいふう』(1967年福音館書店)は、まだ気象衛星による情報がなく富士山頂のレーダーや定点観測船や飛行機による観測に頼っていた頃の制作です。日本列島に近づく台風とそれに対応する人々の様子を伝えます。被災状況を伝えるカメラマンの姿、そしてそのカメラがとらえた映像がテレビ局のアナウンサーの背景に大きく映し出されています。実はこのようにアナウンサーの後ろに映像を出すことは当時は一般的ではなく、やがて広まっていくのですが、海外ではすでにこのような放映スタイルでしたので、いち早く加古は取り入れたのだと語っておりました。
なぜこのような絵本をつくったのか、あとがきともいうべき著者の言葉をお読み下さい。

小さな台風の絵本 加古里子

(引用はじめ)
私は、今まで台風を主題にして、4度作品を試みました。1度は童話、1度は記録画、1度は詩、そして、紙しばいです。今度の絵本では、全く今までとは異なった、新たな意図をもって作りました。

その第一は、台風のこまやかな現象の絵ときや、知識の断片を提供するのではなく、台風とはどんなもので、どこからどこへ行き、何をするものかといことを、大づかみにでも1本の柱として、えがきたいということです。

そこで、この「たいふう」では、現象としては空気のうずであり、形としては雲と雨のかたまりであり、感覚的には強い風雨の台風が、生まれ、育ち、発達し、最盛を経て、衰え消滅する生涯を、法則ある自然現象の1つのサイクルとしてえがきだすようにつとめました。

そのために第一場面から第13場面に至る流れを、台風の成長過程に伴い、時間の推移、状況配置の変化、それに応ずる機能活動の様々な様相をもってあらわし、1つの始めと終わりを結ぶみちすじとして表現するようにしました。

これらの各場面の地理的配置を表紙に記しておきましたので、どうぞご覧ください。

今1つの意図として、自然現象としてだけの台風ではなく、地球に発生する年間約60と言われる熱帯性低気圧のうち、約半数近くの通り道に当たっている日本と言う国の宿命的な特殊性を、そこに住む人々と生活との関係で描きたいと念じたことです。

台風を軸として、そこに展開される海上、離島、港湾、都市、村落、平地、山間など、各地各様な人々とその生活活動を、感情と現実性を持って展開したいと考えました。

その中では、単におそろしいもの、こわいもの、対抗できないものとしての台風ではなく、むしろ、それに工夫を重ね、協力し、それに雄々しく立ち向かってい前進的な人間のすがたを、できるだけうきぼりにしたつもりです。各場面に登場する児童の姿をかりて、あるいは柿の実の赤味や、にわとり、赤とんぼの姿に親近感と詩情をちりばめながら、あかね色に染む夕やけ空に、健康で幸福なあすの社会、未来の姿を予見したいと思いました。

作者の意図が、どこまで的確に達せられたか、ご批判いただければ、さいわいです。
(引用おわり)


この言葉から半世紀が過ぎた今日では予報や警報の伝達方法は進化しましたが災害がなくならないのが現実です。著者が願ったような「健康で幸福な社会」は、果たしてどれくらい実現しているのでしょうか。

(上の写真は裏表紙。メガネの予報官の左にある雲と雨のマークが台風発生地点、船、飛行機はそれぞれの観測地点を表す。冒頭の表紙絵には、測候所、灯台、堤防が壊れた所が示されている。)

2018/07/07

手書き文字

本の題名は、現在ではデザイナーさんがその字体を考えてくださる場合が多いようですが、かこ作品の中には、自身の文字が使われているものがあります。『あさですよ よるですよ』『あかですよ おあですよ』(いずれも福音館書店)、『きんいろきつねのきんたちゃん』(初版は学研、のち復刊ドットコム)がその例です。

題名ではないけれど本の表紙や裏表紙に、かこの手書き文字が見られるものもあります。
『かわ』(1962年福音館)の裏表紙、地図の記号が示すのは何か、この文字は加古の手によるものです。地図そのものも加古の創作で、どこかの地図を流用しているのではありません。

『にんじんばたけのパピプペポ』(1973年偕成社・下)の表紙には、登場するこぶたちゃん達の名前が、かこの手書きでそえられています。

ユニークなのは『太陽と光しょくばいものがたり』(2010年偕成社・下)の表紙に書かれている文字。全てが太陽 の光を形容するような言葉ですがそれがデザインにもなっていて、よくぞここまで考えたと言わざるを得ない画面です。ひかり、ぴかり、こかり、かがり、まかり、ぢかり、、、、

特に古い時代のものは、小見出しなどにもたくさん手書き文字があります。『かこさとしあそびの本5巻 』(2013年復刊ドットコム)には、温かみのあるレタリングがいっぱい。その文字を見るのも楽しいです。

『海』(1969年 福音館)のような科学絵本でも図表の中に書き文字があったりして、かこさとしファンなら嬉しくなるところです。

特に手紙は手書きがいいものです。『こんにちは おてがみです』(2006年福音館)では、絵と手書き文字の素敵なお手紙10通がお子さんたちにあてて集められているユニークさが人気。続編もあります。

2018年7月7日から開催の川崎市市民ミュージアムでの展示会でも、かこの手書き文字原稿がご覧いただけます。是非ご覧下さい。