編集室より

イソップ童話とかこさとし

投稿日時 2024/07/23

世界で三大童話集と言われているのはイソップ、グリム、アンデルセンです。
かこさとしの童話集にはこれらの童話を意識したものがあります。イソップはたくさんの寓話がありますが、『こどものカレンダー7月のまき』では次のようなイソップ童話をご紹介しています。

(引用はじめ)
ことりを うさぎが おいかけて、「わたしのほうがえらい。」おもいました。
うさぎを きつねが つかまえて、「ぼくがつよいんだ。」といいました。
きつねを ライオンが たべようとして、「わたしが いちばん えらいんだ。」といばりました。
ライオンを 小さな かがさして、「おいらが いちばん つよいんだぞ。」といいました。
かを くもが つかまえて、「おれさまが いちばんだぞ。」とわらいました。
すると そこへ とんできた ことりが くもを たべて しまいました。
さぁ、だれが いちばん つよいか、わからなくなりましたね。
(引用おわり)

このイソップのお話は誰が強くて弱いのかぐるぐる回りで決着がつきません。もちろんこのお話は完全な食物連鎖ではありませんが、子どもでもわかる強い弱いの関係が、結局はどうなっているのか??ということが面白い訳です。

かこさとしはこのぐるぐる回りを強い弱いの勝ち負けではなく、助け合いのお話として創作したのが童話集②の「デンデコ山の大合唱」です。

イソップ同様、小鳥で始まりますがこの小鳥は目にゴミが入って困っています。次にのどが渇いてつらいリス、ひっくり返ってしまい元どうりになれないカメ、きつねにこぐまと続きます。皆が苦しかったり痛かったりで泣いていますが、それぞれができることをしてあげて、みんなの親切、おもいやりで全員が元気になってさいごには声を揃えた大合唱がデンデコ山に響きひろがってゆきます。

このお話の創作がいつなのかははっきりしていませんが、これと非常によく似た物語が絵本『こまったこぐま こまったこりす』(1986年偕成社/2017年白泉社)です。こちらは小鳥やリス、きつねやこぐまに加え、ミノムシ、こざるにこじかと7匹の動物が登場します。

想像の域を脱しませんが、歌が入っている点などから「デンデコ山の大合唱」が紙芝居の脚本として最初につくられ、それをさらに書き加えて出来上がったのが『こまったこぐま こまったこりす』ではないでしょうか。後者は幸い、加古の存命中にリニューアル版を出版していただきましたが、それまでの長い間絶版状態だったため、最初に考えた「デンデコ山の大合唱」を童話集に加えておいたのではないかと思われます。

いずれにしても5匹、7匹の小さな親切や思いやりのぐるぐる回りを描き、「子どもたちに持っている力や才智に応じた共生助けあいの心と、未来に生きる情熱を持ってもらいたいと念じて作ったのがこの作品です。」とあとがきにあります。