お知らせ

2018年3月に92歳となる、かこさとしがどうしても伝えておきたい思いを込めて描いた3作品が一挙に刊行されます。身体に不自由がありながら描いた絵ですが、著者のメッセージをうけとっていただけたら幸いです。

『だるまちゃんとかまどんちゃん』(2018年福音館書店)は、女の子たちのおままごと遊びに入れてもらっただるまちゃんが、不思議な「かまどんちゃん」と友だちになります。以下のような「作者のことば」があります。

『だるまちゃんとかまどんちゃん』(2018年福音館書店)

作者のことば

(引用はじめ)
東北地方の岩手、宮城の旧家のカマドの近くに、大きな目玉でにらむ、土または木で作られた異様な顔面がかけてあって、料理のゆげや、すすにけぶっているのが見られます。これは、この家をたてた折、左官屋さんや大工さんが、家の火難よけ、魔よけとしての守り神、すなわちカマド神*として作ったものだそうです。暗い台所のすみで、目立つことなく、黙々じっと家の危険から守っているこの陰徳異形の幼児形を今回は「かまどんちゃん」として、だるまちゃんの友だちになってもらいました。

また、私が幼少時、ままごとの座で受けた過分(!)な接待のあれこれを思い出しながら、2011年3月11日の東日本大震災と津波に被災された方々への鎮魂と慰霊、そして原発事故への警鐘の念をこめて作品とした次第です。
*カマドの神の別称・・・かまがみさま、かまどんさま、おかまさま
(引用おわり)

『だるまちゃんとはやたちゃん』(2018年福音館書店)

「かまどんちゃん」と同じく東北地方に題材を得て作られたのが『だるまちゃんとはやたちゃん』(2018年福音館書店)で、その経緯が作者のことばにあります。

作者のことば

(引用はじめ)
平安時代、西暦の1150年ごろ、近衛天皇の命を受けた源頼政が、従者猪早太(いのはやた)と共に、京都東三条で、頭が猿、胴が狸、尾は蛇、四肢が虎、鳴き声がトラツグミという怪鳥鵺(ぬえ)を射落したと伝えられています。福島のお母さんの集まりで、この怪鳥鵺退治の武勇伝の主人公・源頼政ではなくその従者を郷土玩具としていたので、その九百年後の子孫はやたちゃんに、こんどのだるまちゃんの相手役となってもらいました。

また桃源郷*やエレホン国*、ユートピア*など、何れも再訪できない「架空の境」だったのにならって、夢か幻の間に、東西南北延三百の化物たちをみてもらうことにしたわけです。

東日本大震災と福島原発事故の被災された方々への鎮魂と慰霊のこころをこめてーーー

*何れも名作で描かれた「この世」にあらぬよき所。エレホン国は、バトラーの作品に描かれた「nowhere(どこにもない)の逆読みの架空国名。
(引用おわり)

『だるまちゃんとキジムナちゃん』(2018年福音館書店)

印象的な青い海を背にだるまちゃんと一緒にいるのが「キジムナちゃん」。沖縄を舞台にした物語です。
作者のことばをご紹介します。

作者のことば

(引用はじめ)
沖縄の島々は、日本の他の地域とは違った歴史と習慣に包まれた所です。そうした伝承の一つにニライカナイという、海のむこうの守護神への憧憬と行事がそれぞれの島に残っています。また、アマノジャクみたいなキジムナーと呼ばれるイタズラっ子は、ブナガヤ、ブナガイ、マジムン、カナマザ、フルファガ、フイジムン、ミヤマグ、カナマガなどの名で、それぞれの島の民話に登場します。今回だるまちゃんの相手に、「キジムナちゃん」の名で登場してもらったのは、こうした古い伝承への敬意と、戦中戦後、今なお続いている沖縄の方々のご苦労に対してのささやかな謝意と、同志的応援のつもりです。受けて頂ければ幸いです。
(引用おわり)

  • ホーム>
  • お知らせ>
  • 2018年1月15日だるまちゃんシリーズ新作3作品同時出版『だるまちゃんとかまどんちゃん』『だるまちゃんとはやたちゃん』『だるまちゃんとキジムナちゃん』