お知らせ

多様性という言葉が盛んに使われる昨今ですが、アイヌの兄妹を主人公にした絵本『青いヌプキナの沼』が復刊されました。
表紙に描かれた二人の厳しいまなざしは一体何を訴えているのでしょうか。ヌプキナとはスズランのことです。大人の方にも是非お読みいただきたい作品です。

このあとがきは、当サイト「編集室より」で2月6日にご紹介しましたが、改めて掲載致します。

あとがき

(引用はじめ)
同じ人間でありながら、肌の色や風習が違うと言うだけで、地球上では、いまだに争いや憎しみが絶えません。しかもそれは、中近東やアフリカの例に見るように、人間の心を救うはずの宗教がさらに対立を激しくさせていたり、インディアンや黒人問題に見るように、文明や開発の名のもとに非道なことが行われてきました。そしてそれらの事は、何も遠い国の古い事件ではなく、この日本でも起こっていたし、今なお形を変えて行われていることに気づきます。

強大な武器や圧倒的な経済力、あくどい策略によって、勝者は輝かしい歴史を書き上げます。しかし、反対にそれによって奪い取られ、追いはらわれ、閉じ込められた側には、わずかな口伝えしか残りません。そうした小さな伝説や名残の中から、ふと耳にした白いヌプキナ(すずらん)の花の物語は、涙の連なりのように私には思えました。汚れた栄光で見失ってはならないものを、埋もれてはならないものを、この国の中で、この国の子どもたちに知ってほしいと思ってまとめたのが、このお話です。 かこさとし
(引用おわり)

  • ホーム>
  • お知らせ>
  • 2020年2月25日『青いヌプキナの沼』(2020年復刊ドットコム)出版