編集室より

七夕

投稿日時 2018/06/20

小さいお子さんたちにとっては楽しい行事の一つである七夕。
その由来については、『なつのほし』(1985年偕成社)や、表紙に伝統的な七夕飾りが描かれている『こどもの行事 しぜんと生活 7がつのまき』(2012年小峰書店)に詳しくあります。

飾りものの作り方は、この本や、『あそびずかん なつのまき』(2014年小峰書店)、5冊シリーズ『かこさとし遊びの本』(2013年復刊ドットコム)にいろいろ紹介されていますが、その中には、かこさとしが小さい頃に幼稚園で教わったものにアレンジを加えたものも含まれています。

七夕を背景にした絵本としては『かこさとし語り絵本 4 せんだんよもぎ』(1979年偕成社)があります。せんだんとは千だん。一だんは「こどもがせおえるだけの草の山」の量だそうです。「一だんのモグサをつくるには、百だんのよもぎがいります。」(本文より引用。ただし本文は、分かち書きで漢字にはかながふってあり縦書きです)

貧しい娘おかよちゃんは、もぐさを千だんをつくるため、気の遠くなるような量のよもぎを長いあいだ苦労して摘み、ようやく薬問屋から得たお金で赤い小袖を手にすることができました。

ところが、そのよもぎはお殿様の山から採ったのだと代官所のさむらいに言いがかりをつけられ命を落とすことになってしまいます。

怒った村人が反旗を挙げるのですが、それが七夕の日。陰惨な黒々とした雨の中、笹に飾られた小袖の赤色だけが画面の中に描かれるこの場面からは、かこさとしの思いがひたひたと伝わって来ます。

あとがきをご紹介しましょう。

『せんだんよもぎ』

(引用はじめ)
日本には、多くの農民や宗教的一揆の歴史が残っています。それは、当時の庶民がどんなに苦しい生活の下で暮らしていたかをもの語るとともに、その悲惨な終末は、今なお私たちの胸を痛くします。私たちの祖先が生命を賭けたこの事柄が弾圧の過酷さとひっ迫した状況の為でしょう、昔話として残っているものが非常に少なく、あっても実情に遠く、詩情に乏しいのが残念でした。

そうした中で得たこの原話をもとに、小さなお話にまとめ、ある機関紙に発表したのは15年ほど前のことでした。

私達の現在の生活が、こうした先人の苦闘によって、少しずつ良くなってきたことを語りつぎ、今の大人やこれからの子どもは、どう生きなければならないかを語り合うよすがに、この絵本が役だってほしいと願っています。
かこ さとし
(引用おわり)
(本文は縦書き、漢字には全てふりがながあります)

このお話をしかけ紙芝居にした『てんもく山のおかよちゃん』(童心社)も刊行されました。その出だしは次のようです。
(引用はじめ)
むかし、かいの くにの ふえふき川を さかのぼった ところに てんもく山という 山がありました。

その 山の ふもとに おとうも おかあも しんでしまった おかよちゃんという むすめが すんでいました。
おかよちゃんは、まだ ちいさいのに ほかの うちの はたけの くさとりを したり、、、、
(引用おわり)

現在の山梨県、笛吹川の上流には天目山、そして江戸幕府の命を受け漢方薬の原料を栽培し納めていた屋敷が今でも残っています。今年の七夕、彦星織姫は見られるでしょうか。