編集室より

これまでにもご紹介してきた「かこさとしの食べごと大発見」シリーズですが、今回は第4巻「うれしいフライ 天ぷら天下」をのぞいてみましょう。

「からすのてんぷらやさん」(2014年偕成社)で天ぷらの秘伝(?)を披露した加古ですが、調理には温度と時間、具材の濃度等が大切な点は化学実験と共通ですから、かつて化学会社の研究室で働いていた著者にとってはお手の物かもしれません。

上の絵は、前見返しにある図で、その右にある〈この本のねらい〉には次のように書かれています。

あげもののヒミツをこめた本

(引用はじめ)
てんぷらやフライなど、あげものの料理はとてもおいしのですが、これほど調理法がうるさくヒケツや秘伝が渦まいているものはありません。 油の種類、成分、まぜ方、濃度にはじまり、ころものつくり方、つけ方、落とし方、入れ方はもちろん、下にひく紙にいたるまで、いちいち理由や自慢や相伝が入り交じり、はては一般家庭のあげものを、「油煮のたぐい」とか「パン粉の油こがし」と嘲笑する専門家がいます。
けれどもそんな油煮天ぷらでも、食べ残しパン屑のフライでも、忘れがたくおいしかった事実があります。どうした事か今までこのヒミツは語られてきませんでした。そのヒミツを発見し追求したのがこの本です。どうぞよろしくご活用ください。
(引用おわり)

さていよいよ本のページをめくると扉には 次のような見出しで説明が続きます。(この部分を含め本文の漢字にはかながふってあります。)

あげものは様変わりの世界

○まず色が変わります
油であげると、こんがり、きれいなきつね色や黄金色(こがねいろ)に変わります。本当の「金」(きん)になったらどうしましょう!
(引用はじめ)
○様変わり
小麦粉のころもやパン粉のドレスにつつまれて、すてきなよそおいに変わります。
○歯ざわり
ひと口かじったときのハリハリ、パリパリのころもの下からふっくらやわらかい、いもや白い魚があらわれます。
○味変わり
油と、こうばしいころもと中の材料のおいしさがまざりあって、すてきな味となります。
(引用おわり)

よだれの出てきそうな前置きがあって、いよいよ天ぷらにする魚の下ごしらえ、ころものつくり方、いか、エビ、かき、豚肉、鶏肉、野菜を材料に天ぷら、フライ、素揚げ、唐揚げ。
コロッケ、ピロシキ、ポテトチップス、大学芋まで一気に面白、楽しいキャラクターによって紹介されます。

最後には大人向けの(振仮名なしの)次のような文で、本文はおわりとなります。

危険な水と油、火と油の戦い

(引用はじめ)
熱い油の中に揚げる材料をいれるとジュウジュウ、パチパチするのは、材料の水を油が追い出し、出された水がとびはね、油も一緒にとびはねているので、小さい子が顔を近づけるのは、とても危険です。

また、油を火で熱してるのは、ちょっとまちがえると「火に油をそそぐ」ことになりかねません。事実、揚げものをしているときに電話がなって、話しこんでいる間に火事になる率がとても高いことがはっきりしています。
化学実験では、安全メガネと火災対応が実験者の常識であるように、台所という高度の実験室で油を使うおいしい反応をおこなうのは、この水と油、火と油の危険防止を、ごくあたりまえの事としてしっかり守っていただくようお願いして、この巻の終わりといたします。
(引用おわり)

そしてさらに次のような大人に向けたメッセージがあります。

水を流しても油を長さぬこと

「牛や豚なら簡単で完全にできるが一番だめなのが人間なんだ」と友人の下水道学者が嘆いたことがあります。動物はけっして異物をながしたり、混入したりしないが、どんなに警告しても、防止策をとっても、とんでもないものを密かに流したり、無理に投入するのが人間で、技術以前のところでホトホト困ってしまうとのことです。揚げ物の場合、油は食用なのでやがて分解されますが、できるだけ流さないようにしたいものです。特に皿や食器をあらう洗剤は、河川や湖や海を汚染してしまいます。
一番よいのは、紙で油を拭きとって、水は流しても油は川や海へ流さないことです。おいしいものをつくったり、食べたりする楽しさは、後始末まできちんと気持ちよくすることで、まっとうされることを、どうぞご指導ください。それは、あげもの食事における大切な発見のひとつなのですから。

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