編集室より

「かこさとし からだこころのえほん」(農文協)シリーズ第2巻『びょうきじまん やまいきらべ』(1988年)をご紹介します。

インフルエンザ、はしか、おたふく、食あたりなど6人のこどもが次々に自分がかった病気の体験談を話します。

最後に口を開いた「かっちゃんは」、みんなと違い治らない病気で、「こないだまで うごいていた ひだりあしは もうだめで、のこった ゆびや あしも だんだん かたくなって いつか うごかなくなる」と話します。

それを聞いてみんなびっくり。しかも足を引きずりながら、かっちゃんはこれから老人ホームに、育てた花を届けに行くので「みんなも きてくれると うれしいわ」とにっこりしているのです。

こうして6人のこどもがホームを訪問するとおじいちゃんやおばあさんは大喜びとなりました。

帰り道、こどもたちは自分が病気になった時のことを思い出しながら、いろいろなことを考えます。
かっちゃんのように「じぶんのことより まわりのひとや もっと かわいそうな ひとのことを かんがえたり、ながくいきることより いきている あいだを だいじに たいせつに すごそうと おもった こが いたのです。」

【この本のねらい】として上の前書きより前の冒頭に、以下のようなかこさとしの言葉があります。

(引用はじめ)
生き物の常として、人は思いかけぬ怪我や病気に襲われることがあります。重い病気に苦しんだり、つらい目に会うと、人はさびしくなり、気弱になり、めそめそ泣きごとを言ったり、何かに頼ろうとするようになります。しかし、病気になっている時も、苦しんでいる間も、誰のものでもない、自分の貴重な生きている期間なのですから、そういう時こそ、日ごろの導きや教えが良い方向にみのっているかどうか確かめる良い機会となるでしょう。

そして、甘えや依頼心に流されていないか、自らためし、自覚をうながすよう、はげまし勇気づけてほしいのがこの本の願いです。

金品を与えることより、本人の自立を助け励ますのが、真の福祉のように、病気とたたかっている子どもに、真の力を与えてやっていただきたいのです。
(引用おわり)

なお、「あとがき」については当サイトで以前掲載しましたが、今回は本の画像でどうぞご覧ください。