編集室より

科学絵本『人間』は巻末の著者解説にあるように「3部23場面による構成」です。
「宇宙の始まり」から展開して

(1) 生物の発生とその子孫としての人間の出現(第1〜9場面)
(2)人間の成長と身体各部の機能(第10〜17場面)
(3)人間の個人と集団の活動とその集積(第18〜23場面)

という組み立てで、次のように記しています。
(引用はじめ)
多くの学問の成果や資料から得た「人間のすべて」をことこまかく網羅列記する分厚い図鑑集の形ではなく、複雑で多岐にわたるならば、それを簡潔明快に示しながら、最も重要な点をゆっくり、画像と文章でくり返し読者に伝える絵本形式とするため、いってみればそのための選択と圧縮に10年以上を費やしたことになります。
(引用おわり)

著者の言葉を借りるならば、圧縮に圧縮を重ねた結果「人間の知恵と知恵のつみかさね」としての学問、芸術の項目の後に「人間のあつまりと社会の混乱」として戦争の歴史を取り上げた第21場面(下)があります。その後半の文をご紹介します。

(引用はじめ)
とくに、お金のやりとりや売買のねだんがからむ経済の問題では、
生活にただちにひびき、損得がはっきりするため、
あらそいがはげしくなります。
そして、国やみんぞくの利害にひろがると、対立はさらにふかまり、
はては武器を使う戦いとなってゆきます。

便利な道具や機械、すぐれた学問や科学、
美しい芸術や文化をつくり、ゆたかな生活をきずいてきたのに、
集団や社会のしくみやその進め方では、
みずからをちょうせつすることがまだ不十分でととのわず、
いまなお対立し、きずつけあい、血をながしているのが人間です。
(引用おわり)

そして最後の23場面「あなたが、そして君も人間です」では、人間には「40億年の生物の歴史」が刻まれ、その脳は、「そのはたらきのなかに、現在の宇宙と未来の世界をおさめている」として、次のような言葉で終わります。

(引用はじめ)
このように、その細胞や脳はからだや心に、
宇宙・世界・地球の歴史と現在と未来とを
やどしているのが人間です。

その人間のひとりがあなたです。
そのすばらしい人間が、君なのです。
(引用おわり)
(本文の漢字には全てふりがながあります)

そのような「人間」でありたいと心の底から思います。

上は最終場面、左側には「150億年の宇宙、46億年の地球の歴史を秘めている人間」、右側には「母なる地球の海水をたたえている人体」という説明がついています。