編集室より

てんぐとかみなりのお話

投稿日時 2025/01/10

てんぐとかみなりといえば、『だるまちゃんとてんぐちゃん』(1967年)、『だるまちゃんとかみなりちゃん』(1978年、いずれも福音館書店)を思いうかべてくださる方も多いことと思います。

実は、このてんぐとかみなりを加古は絵本を作るようになる以前、手描き紙芝居に登場させています。

1952年、セツルメント(ボランティア)こども会のため作った『てんぐのはなはな』はてんぐのうちわをあおぎながら「てんぐのはなはな」と唱えると鼻が伸びてゆくというユーモラスなお話ですが、調子にのっているうちに大事件が起こり、主人公が安楽な生活を反省することとなります。

2年がかりで構想を練った、仕掛けのあるこの紙芝居は大好評となり、貸しては戻ってこず、新たに作り直しを繰り返し現存するのは1995年に作ったものが『かこさとしと紙芝居 創作の原点』(2021年童心社)に掲載されています。

そして『童話集④日本のむかしばなし〈その1〉』(2023年偕成社)にも場面ごとの挿絵入りで収録されていますので、お楽しみください。また、この巻には2002年作の「天狗とばあさん」(下)という実に愉快なお話もあります。

1953年作の「カミナリ・ゴロちゃん」は、かみなりの坊やが空から落ちてきて、人間の子どもたちと遊びます。しかし夕方になると子どもたちは家に帰ってしまい、カミナリ・ゴロちゃんは空から降りてきたカゴに乗って帰ってゆくという17場面からなります。

手描き紙芝居「カミナリ・ゴロちゃん」第1場面(表紙)

「カミナリ・ゴロちゃん」第2場面

加古はかみなりの子どもの姿を描く前に宗達の風神雷神図を模写したり、様々なかみなりの絵を見て模写しながら自分なりのかみなりの姿を作り出そうとしていました。

『だるまちゃんとかみなりちゃん』が誕生するのはこの紙芝居から15年後のことになります。

手描き紙芝居「かっぱとてんぐとかみなりどん」

「かっぱとてんぐとかみなりどん」第3場面

1959年作の紙芝居「かっぱとてんぐとかみなりどん」(上)は炭焼きの「とうべえ」にかっぱとてんぐとかみなりの三者が無理難題を言いつけるのすが、いつもは泣いてばかりの「とうべえ」のこども「とうへい」がこの3者を一気に退治してしまう愉快な物語です。

子どもの機知で問題を解決する、このお話は1978年にかこさとし・むかしばなしのほんシリーズ5巻 お第1巻として同名で絵本として出版されました。

この物語の中では、てんぐもかみなりも人間に悪さをするものなので、その雰囲気が漂う顔つきが表紙に並んでいます。

悪者たちをやっつけた「とうへい」は最後にこんな表情です。さて、どうやって退治したのでしょうか。

独特の味わいのある絵と言葉で語られる物語を是非、お楽しみください。

2014年に復刊ドットコムで出版され、2025年にも重版されることになりました。詳しくは以下でどうぞ。

かっぱとてんぐとかみなりどん