ロダンの「考える人」
普段あまり彫刻に馴染みがなくてもロダンの「考える人」は思いうかびます。
筆者は幼い頃、展示会に出品した作品を見に加古に連れられて上野で見た覚えがあります。「カレーの市民」の市民の意味がよくわからず、「考える人」の姿に大人はこんなふうに考えるものなのかと感じたことを覚えています。
加古が唯一出版社に依頼して刊行された『うつくしい絵(1974年偕成社)に続く『すばらしい彫刻』(1989年偕成社)では11月12日に生まれたロダンのこういった作品も紹介しています。
この有名な姿勢は実際に同じポーズをしてみるとわかるように、大変不自然で難しいのです。
(引用はじめ)
ひとのすがた そのままではなく、にんげんの ふかい なやみが わかるように ロダンがあたらしく あみだした かたちなのです。
(引用おわり)
そして「考える人」は「地獄の門」の一部として「つかうためにつくった」ことが写真入りで解説され、その「考える人」がなぜそれほどまでに深刻なのかが納得できます。
この本の最後は次のようなメッセージで終わります。
(引用はじめ)
わたしたちも きているものや ことばや うわべのきれいさではなく、すばらしい彫刻のように
かたちや すがたの なかにある たいせつなものを いつまでも おいもとめてゆきたいと おもいます。
(引用おわり)
こちらは「考える人」を加古が描いたもので、こどもや犬が同じ姿勢をしようとしていますが、それとともに筋肉の様子を描いています。
見出しには「人間を守る化学のはたらき」とあり、どんな関係があるのかと思われるかもしれません。
2024年11月下旬に出版される『新・絵でみる化学のせかい④地球と生命 自然の化学』の一場面で、「人間は、数十兆もの細胞のあつまりでできていて」「この細胞は、おもにたんぱく質と核酸という、生命の活動をささえる化学物質でつくられている」と説明が続き、細胞の図も掲載されています。
この『新・絵でみる化学のせかい』シリーズは特に3巻を中心に名画などを使って、内容をわかりやすく印象に残るよう工夫されていますが、4巻のこの絵もその一例です。
「考える人」が美術の本にも化学の本にも登場するのが加古らしいところです。
この姿勢をまねて筋肉を痛めたりすることがないようにお願いいたします。