編集室より

宮沢賢治とかこさとし

投稿日時 2024/08/15

かこさとしが中学校に入って何より嬉しかったのは図書室に並んだ多数の本でした。本棚の端から端まで読むんだという意気込みで通ったそうです。そこで読んだのが芥川龍之介や宮沢賢治の全集でした。「烏百態」や「林の底」を読んだのもその時です。

ところが中学2年生になると学校に配属将校がやってきて、航空士官にならないかとしきりに勧めたそうです。士官になれば給料がもらえて両親に負担をかけずにすみ、国のためにもなると決心し、その日から図書室に行くことを自らに禁じ、士官になるために必要な理科や数学の勉強に励みます。しかしながら近視がすすみ体格検査すら受けられませんでした。


図書室で読んだ「林の底」ではトンビが始めた染め物屋さんで鳥たちが様々な柄に羽を染めてもらいます。息を詰めて壺の中の染めもの液に頭から浸かって染めるのですが、加古は刷毛で塗って染めてもらうやり方に代えて、1951年手描きの紙紙芝居「おしゃれのカラス」を作成、こどもたちに見せていました。童話集②にも収録されています。

童話集⑤〈日本のむかしばなしその2〉にある「みどり沼のおとろし話」は、創作昔話です。

みどり沼では次々に謎の死をとげる出来事がおき、すっかりおとずれるひともなく草におおわれるありさま。

「このありさまに、与一爺が考えた。ひとつ、村のために、そのえたいのわからん化け物か悪者をはっきりさせ、できればとりのぞいてやろまいか。」

そうして、ついにこの沼に棲む悪ものを退治することができた。そのお話を不審に思うのだったら「ほらなんたらという作家が書いた⋯」という書き方で芥川龍之介の作品を引合に出して説明しています。ネタバレになってしまいますので、お伝えできるのは残念ながらここまで。悪モノの正体は是非童話集⑤でお読みください。