編集室より

作品によせて

絵本のカバーと帯

投稿日時 2024/11/20

絵本のカバー

絵本の多くにはカバーがかけられていますが、福音館書店の特に小さいお子さん向けの絵本にはカバーがありません。たとえば「だるまちゃん」シリーズや「ことばのべんきょう」シリーズなどがそうです。

これはカバーがあると小さいお子さんが本を持ちにくいということからなのではないかと想像しています。一方絵本でも、もう少し上の年齢の方がお読みになるであろう『海』『地球』『宇宙』『人間』にはカバーがかけられています。

カバーは表紙の汚れを防ぐ意味もあり、1968年に童心社より出版された「かこさとし かがくのほん」10巻シリーズ(旧版)には透明のビニールのカバーがかけられていました。

ほとんどのカバーは表紙と同じ絵が印刷されていますが、『万里の長城』(2011年)は龍のカバー(上)を外すと長城(下)が現れます。

表紙がソフトカバーの場合はカバーと表紙が違うことが多く、『だるまちゃんと楽しむ日本の子どものあそび読本』(下左・2016年福音館書店)はカバーを外すと旧版ともいえる『日本伝承のあそび読本』(下右・1967年福音館書店)を彷彿とさせるオレンジ一色の表紙が目に飛び込んできます。

この本の仕掛けを参考にしたのが『かこさとし 子どもたちに伝えたかったこと』(2022年平凡社)です。この年開催の Bunkamuraでの展示会の公式図録でもあり、表にはだるまちゃんとだるまこちゃんにからすのお父さん、お母さん。裏表紙にはからすの一家が飛んでいますが、このカバーの下から現れるのは、モノクロのペン画です。
ちょっと怖そうな恐竜の背中には子どもが乗っていて恐竜たちの言葉には加古のユーモアたっぷりのセリフがそえられています。

絵本の帯

カバー上にまく、帯はずいぶん前からあるようですが、最近は『からすのパンやさん』ホリデー版のように、カバーとほぼ同じ大きさの巨大帯まで登場しています。

2024年11月21日に出版の『かこさとし 新・絵でみる化学のせかい』5冊シリーズにも帯が巻いてあり、【かこさとしの人気化学絵本シリーズが最新データと学説で生まれ変わった! 監修 藤嶋昭】とあります。
『太陽と光しょくばいものがたり』(2009年偕成社)の共著者でもある藤嶋先生がいらしたからこそ新版にすることができました。

そして嬉しいことには、各巻に著名な方からのコメントが掲載されています!

『1 原子と分子の楽しい実験』

東京大学名誉教授の養老孟司先生からのメッセージです。
【化学の説明を通して、かこさんの自然やこどもに対する深い愛情が伝わってきます。子どもに愛される本だと思います。】

養老先生とは加古は対談でお話をさせていただき、このような心に響く言葉をいただきました。

『2 なかよし いじわる 元素の学校と周期表』

コメントは絵本作家 ヨシタケシンスケさん。味わい深い絵も添えていただき感激しております。

【思いやりと賢さとユーモアを携えて 人を、世界を、未来を信じていく。かこ先生の本は、私たちにとっててひとつの大きな「答え」であり、「問」でもあり続けるのです。】

『3 化学の大サーカス 技術の歴史』

『水とはなんじゃ?』(2018年小峰書店)の絵を描いていただいた絵本作家 鳥の巣研究家の鈴木まもるさんが、心を込めて嬉しいメッセージをくださいました。

【「そうだったのか、なるほど!」身近な絵の具やテレビ、半導体など、知っているようで知らないことばかり。かこ先生が描く昔の名画との組み合わせが心暖かく秀逸です。】

『4 地球と生命 自然の化学』

『ちっちゃな科学』(2016年中央公論社)の対談でお世話になった福岡伸一先生が、自ら「生物と無生物のあいだ」著者・大推薦!と太鼓判を押してくださいました。

【ビッグバンからRNAワクチンまで。網羅的想像力が全開。しかも科学技術万能主義への警鐘も。かこさとしの真骨頂ここにあり。】

『5 化学の未来 資源とエネルギー』

そしてもう一方、加古が直接お目にかかる機会がなかったのですが、宇宙飛行士 東大特任教授の野口聡一さんからも力強い応援メッセージをいただきました。

【科学技術の光と影を描き続けた、かこ先生のメッセージが時代を超えて蘇る! 資源とエネルギーが循環するサステナブルな未来像を、なつかしいイラストで教えてくれます。】

いずれも加古が読んだら大いに照れることしきりでしょう。
メッセージを寄せてくださった方々にこの場をかりて心より感謝申し上げます。

加古は読者の皆様が出版社にお寄せくださる読者カードを拝読するのを何よりの楽しみとしていました。今は亡き加古ですが、皆様の率直なご感想を出版社を通してお聞かせいただけたら幸いです。

ロダンの「考える人」

投稿日時 2024/11/09

普段あまり彫刻に馴染みがなくてもロダンの「考える人」は思いうかびます。

筆者は幼い頃、展示会に出品した作品を見に加古に連れられて上野で見た覚えがあります。「カレーの市民」の市民の意味がよくわからず、「考える人」の姿に大人はこんなふうに考えるものなのかと感じたことを覚えています。

加古が唯一出版社に依頼して刊行された『うつくしい絵(1974年偕成社)に続く『すばらしい彫刻』(1989年偕成社)では11月12日に生まれたロダンのこういった作品も紹介しています。

この有名な姿勢は実際に同じポーズをしてみるとわかるように、大変不自然で難しいのです。

(引用はじめ)
ひとのすがた そのままではなく、にんげんの ふかい なやみが わかるように ロダンがあたらしく あみだした かたちなのです。
(引用おわり)

そして「考える人」は「地獄の門」の一部として「つかうためにつくった」ことが写真入りで解説され、その「考える人」がなぜそれほどまでに深刻なのかが納得できます。

この本の最後は次のようなメッセージで終わります。
(引用はじめ)
わたしたちも きているものや ことばや うわべのきれいさではなく、すばらしい彫刻のように
かたちや すがたの なかにある たいせつなものを いつまでも おいもとめてゆきたいと おもいます。
(引用おわり)

こちらは「考える人」を加古が描いたもので、こどもや犬が同じ姿勢をしようとしていますが、それとともに筋肉の様子を描いています。

見出しには「人間を守る化学のはたらき」とあり、どんな関係があるのかと思われるかもしれません。

2024年11月下旬に出版される『新・絵でみる化学のせかい④地球と生命 自然の化学』の一場面で、「人間は、数十兆もの細胞のあつまりでできていて」「この細胞は、おもにたんぱく質と核酸という、生命の活動をささえる化学物質でつくられている」と説明が続き、細胞の図も掲載されています。

この『新・絵でみる化学のせかい』シリーズは特に3巻を中心に名画などを使って、内容をわかりやすく印象に残るよう工夫されていますが、4巻のこの絵もその一例です。

「考える人」が美術の本にも化学の本にも登場するのが加古らしいところです。
この姿勢をまねて筋肉を痛めたりすることがないようにお願いいたします。

同音異義語にまつわること

投稿日時 2024/10/05

同音異義語は子どもにとって、ちょっとややこしいものです。目と芽、歯と葉、鼻と花などだるまちゃんの「だるまどん」でなくても混乱を招くことになりかねません。

お話をご存知ない方のためにお伝えすると、「てんぐちゃん」のトンボが止まる長い鼻を見た「だるまちゃん」はおとうさんの「だるまどん」に「てんぐちゃんのような長いハナがほしい」と言ったところ、だるまどんが用意してくれたのは花!だったのでだるまちゃんは怒ってしまいます。

童話集⑦の最初にある「めと はと はなの はなし」はまさにこの同音異義語について全部ひらがなでわかりやすく、特に体の働きを中心に説明しています。

このようによく使われる同音異義語とは別に、それほど頻繁に使われてない言葉の場合、それはそれでまたややこしいようです。

「ひいらぎ」で思い出すのはクリスマスにも登場する柊でしょうか。ところが魚の名前でもあります。

「かます」は魚しか思い浮かびませんが、土嚢(どのう)袋の元になったものを「叺」(かます)というそうです。ムシロを折って袋のようにして縄をかけて使います。実はこの言葉は童話集⑥の『ぼくの母ちゃん』に「かますの縄かけ」という言葉ででてきます。

馬連(ばれん)をご存知でしょうか。版画を刷るときにこする物で、竹の皮でできたものを使ったことがあります。一方、纏(まとい)の下の垂れて別れている部分もバレンというそうです。
近頃庭に植えられているのをよく見るエキナセア(下)は花が咲き終わるとこのバレンのように花びらが下に垂れてしまうので別名バレンというのだとか。

ものには名前があるのは当然ですが、まだまだ知らない名前があることに気づかされるこの頃です。

運動会の種目

投稿日時 2024/09/26

秋は運動会の季節。猛暑の影響で時期を遅くすることがあるようですが、学校行事のなかで1番の注目かもしれません。

昭和30年代の運動会では、足元は「はだしたび」がお決まりで、帰る頃には、指先あたりが擦れて穴があくので、高学年になると、はだしたびをはいた上に運動靴をはいて登校しました。
赤白ハチマキや赤白帽は今でもかわりませんね。

昭和時代に小学生だった筆者にとっては玉入れ、大玉ころがし、綱引き、徒競走といった種目が思い浮かびます。

加古作品の中にも登場しています。
『ことばのべんきょう②くまちゃんのいちねん』では玉入れ(上)、綱引きに加え二人三脚とかけっこ(徒競走)が描かれています。