本の表紙とカバー
多くの絵本にはカバーがかけられています。本の保護のためでもありますが、お子さんには扱いにくいこともあり、「ことばのべんきょう」や「だるまちゃん」シリーズ(いずれも福音館書店)にはカバーがありません。
文春文庫『未来のだるまちゃんへ』のカバーはシンプルでありながら、「だるまちゃん」が目立ちます。『だるちゃんの思い出 遊びの四季』(2021年)は「未来への行進」という題名の絵画を使っています。これは、合併で誕生した越前市10周年を記念して2006年にかこが描いたもので、だるまちゃんシリーズの仲間たちが越前市民には馴染みの村国山(むらくにやま)を背景に楽しげに歩いています。
この本の内容は生まれ故郷、越前市で過ごした7年間の日々からかこが得た貴重な経験をもとに、子どもが人として成長するのに何が大切かということを語っています。
昔の文庫本はカラー印刷のあるカバーではなく、薄いパラフィン(グラシン)紙で、絵本を卒業しよういう年頃だった筆者には、大人に近づいた気持ちで嬉しく手にとった覚えがあります。
2021年11月20日の朝日新聞「天声人語」では、このカバー(ジャケット)と本の表紙について、その違いを楽しむことが書かれていましたが、かこの本の中にもカバーと本自体の表紙が異なり二度楽しむことができるものがあります。
『万里の長城』(2011年福音館書店)のカバーは緑の連山に龍のごとく作られた長城。本の表紙には、長年にわたり多くの人々が積み重ね作りあげた長城とそれを守る人々。裏表紙(下)にはその歴史の一コマが再現されています。
壮大な自然と悠久の歴史。どちらも「万里の長城」を語るには大切なもので、カバーと表紙で伝えています。
これは『だるちゃんと楽しむ 日本の子どもの遊び読本』(2016年福音館書店)のカバー(右)と表紙です。
『日本伝承の遊び読本』(1967年福音館書店・下左)という脚光を集めた絵本の現代版として平成に出版されたもので、それを引き継ぐようにして表紙の色を同じにしています。新しい版であることがわかるようにご覧のようなカバーの柄になりました。
たかがカバー、されどカバー。そこには著者や本作りに関わった人たちの思いが込められています。