編集室より

縦書き ・横書き

投稿日時 2019/01/08

ヘブライ語は右から左に書くのだと聞いて驚いことがありました。昭和も前半の頃は、日本でも横書きを右から左に書いていましたので、古い看板でクルミだと思ったらミルクだったり、などということがあったものです。これは縦書きの影響かと推測しますが、それにしても縦、横どちらでも書けるのですから日本語は本当に便利です。

加古が小学校卒業にあたり学校で書いた『過去六年間を顧みて』(2018年偕成社)の元になった絵日記の表題も右から左の横書き、本文は縦書きです。

加古作品の本文は、科学絵本は横書き、お話の絵本は縦書きが基本です。ただし、福音館の「こどものとも」は横書きですので「だるまちゃん」のシリーズは横書きとなっています。

一般の新聞が見出しを縦書きにしたり横書きにしたりと自由に使い分けているように『だるまちゃんしんぶん』(2016年福音館書店)も同様です。「ふゆのごう」にある「もじいれなぞなぞ」は縦書き横書きをを利用してできる言葉遊びです。

タイトルと縦書き、横書きの関係はどうでしょうか。
加古のデビュー作『だむのおじさんたち』(1959年福音館書店・現在は復刊ドットコム)は本文は縦書きですが、タイトルだけは横書き。偕成社かこさとしおはなしの本シリーズもほぼ同様で『からすのパンやさん』『おたまじゃくしの101ちゃん』(いずれも1973年)がその例です。

しかし、書名が横書きでも前扉が本文同様、縦書きというものもあります。同じく1973年に出版された『あかいありとくろいあり』や『サザンちゃんのおともだち』がそうです。当時は、こういった文字を現在のようにデザイナーさんが作るのではなく、著者自らが書いていたからなのかもしれません。

縦書きのあるありがたさは背表紙の読みやすさです。
縦書きの方が集中して読める、ということから縦書きが多いと聞いたことがありますが、読者の皆様はどのように感じていらっしゃるでしょうか。

かこさとしが原稿を書く時はどうしていたかというと、縦書きのものは原稿も縦書き、横書きのものは原稿も横書きで書いていました。

『海』では、本文横書き、図は縦横両方ですが、本文がこんな斜めの部分もあります。

かこさとしのライフワークをまとめた『伝承遊び考 1絵かき遊び考』(2006年小峰書店)には次のような図があります。いわゆる「へのへのもへじ」ですが、右側、図29は安藤広重「新法狂字図句画」の模写で「へへののもへいじ」とあり、つまりこの絵描き遊びの最初は横書き、図30は私たちが見慣れている「へのへのもへじ」で江戸の文字絵にあり縦書きです。縦書き、横書きの自由さを昔の人々もこのように利用して遊んでいたというわけです。

「へへのの」と「へのへの」の出現する地域差など詳細膨大なデータとその考察については是非、『伝承遊び考』をご覧下さい。縦書きの厚い本ですが、絵図が豊富で小学生でも充分楽しめる内容です。