『やすくておとくなあそび 』
あそびの大星雲6ーお金と経済のからくりー(1992年 農文教)
前回、恐ろしいものをテーマにしましたが、世界大恐慌が起きておよそ100年。これなしでは現代生活が困難な、経済についての絵本『あそびの大星雲6 やすくておとくなあそび ーお金と経済のからくりー』(1922年農文教)のまえがきとあとがきをご紹介します。
この絵本では、[ねずみ講][ずるいかせぎかた][あくどいやりかた][つきみだんごのけいざい][もうかるかいしゃ][さかえるきぎょう]や[みっつのくにのけいざいせんそう][パンツのインフレーション][えんぴつのデフレーション](下)など、様々なテーマでわかりやすく説明しています。
かこさとしから、おとなのひとへ
経済という魔物に向かってーー
(引用はじめ)
時に魔物と呼ばれる金銭に、現代人間生活は深く依存し、子どもたちも共に暮らしています。金銭と経済を軸にしたこの巻をご覧いただく理由は、子どもたちを株のうりかいに引きずりこんだり、守銭奴やケチ人間にするためではありません。魔物として恐れ逃げるのではなく、積極的に正しく活用する知恵を持ち、もし経済の波や嵐が起こっても巧に立ち向い、その根源にメスを入れる力をもってほしいと念じての事に他なりません。どうぞお大事に。
(引用おわり)
かこさとしあとがき
お金の世の、荒波に対する知恵
(引用はじめ)
経済は魔物であるといわれます。かつて会社勤めをしていたおり、石油ショックと言う嵐が吹き荒れ、各社一斉に生産縮小・操業短縮を行い、そのアオリでプラスチックの原料チップが一時時品薄となり、関係者は必死で買い集めたことがありました。それまで倉庫にねていた品質不良品の山まで、あっという間に売り切れたことがあり、品質向上とか物性改良に取り組んでいた技術研究のむなしさと、経済の恐ろしさを痛感しましたが、大人はそうした魔性にただ揉まれ、泣き笑いするだけで、同時に生きている子供たちに何の示唆も説明も、まして積極的な教育などしてきませんでした。お年玉とおこづかいの額が増えても「ムダづかいしないよう」だけが最大の指導では困ります。人生にもっと役に立ち、意味のある経済法則を知ってほしいという願いを込めて、この本を未来のアダム・スミスやシュンペーターたちにおくります。
(引用おわり)