編集室より

おやおや? 雪の中、ここにいるからすたちは、くちばしが水色と象牙色で「パンやさん」の子どもたちではありませんね。名前は「たろう」と「じろう」。まだ子どもでお父さんのように働くには、くちばしが硬くなっていないし遠くまで飛べません。

雨の日、退屈してお父さんのように強くなろうと指相撲をして遊び始めますが、家の中がめちゃめちゃになりお母さんに怒られる始末。片付けてお留守番をしているようにいわれます。お母さんが買い物に出かけてしばらくすると雨がアラレに、そして雪にかわりました。

するとお母さんの言いつけはどこへやら、たろうとじろうは、嬉しくなって大はしゃぎ。お母さんが帰ってきた時には、すっかり雪で真っ白になってお腹は痛いし風邪をひいて。。。

思い当たるような出来事を通して成長する子どもへの著者の暖かな眼差しが感じられるお話です。あとがきをご紹介します。

あとがき かこさとし

(引用はじめ)
子どもは、知らないこと・未経験なものについて、興味を抱き、好奇心をつのらせます。近づいてのぞきこみ、さわってみたり、なめたり、つかんだりします。そうすることで、色々なことを知り、経験し、学び、認識し、考え、成長してゆくのです。

しかし、当然のことながら、時によると知らないために起きる失敗や危険や損傷が、起こることがあります。こうした不安からわが子を守ろうとしたり、手間ひまのかかることから抜けだそうとして、ついには子どもたちから未知のものに立ち向かう機会を奪い、意欲を失わせる「キョーアクムザンな人々」にならないよう念じながら、この作品をかきました。
(引用おわり)

『からすのパンやさん』(1973年偕成社)とは違い、登場するのは、このからすの一家だけという、しっとりしたお話。黒い色をテーマにした作品です。図書館で見つけられたら是非お読み下さい。